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太陽光付き住宅の売却・引っ越しで困りやすいポイントとは?
太陽光を家に残して買主に譲る場合、①電力会社との売電契約の変更、FIT/FIP認定に関する必要な変更手続き、③住宅ローン・ソーラーローンの残債整理、④買主への設備情報の引き継ぎなどを確認します。名義変更を忘れたまま放置すると、売電収入が受け取れなくなるだけでなく、法令違反として行政処分の対象になることもあります。
一方、太陽光を手放さず新居に持っていく場合は、④撤去・移設にかかる費用が新たな負担として発生します。どちらを選ぶかで、必要な手続きも、費用を誰が負担するかもまったく変わってきます。
次章から、①〜④を順番に見ていきましょう。
①売電契約・FIT/FIP認定の名義変更で必要な手続き
電力会社への売電契約の名義変更
太陽光発電を家に残したまま売却する場合、太陽光の所有者は売主から買主に変わります。しかし、電力会社との売電契約(電力受給契約)は自動的には引き継がれません。電力会社との売電契約の変更手続きが必要です。手続きの方法や申請者は電力会社によって異なるため、売主・買主の双方で確認しましょう。この手続きを忘れると、売電収入の振込先が旧所有者(売主)のままになってしまうなど、実務上のトラブルにつながります。
経済産業省(資源エネルギー庁)へのFIT/FIP事業計画変更認定申請
電力会社との売電契約の変更とは別に、FIT/FIP認定を受けている場合は、資源エネルギー庁への事業計画の変更手続きが必要になることがあります。売買に伴う事業者変更では、変更認定申請など、譲渡内容に応じた手続きを確認します。手続きの種類や申請者は、設備の出力や認定状況などによって異なります。資源エネルギー庁は、認定事業者の変更などの手続きを怠ると、再エネ特措法違反として行政処分の対象となる場合があるとしています(※)。売却に伴う名義変更は、電力会社への連絡と経産省への手続きの「2本立て」であることを、まず押さえておく必要があります。
※出典:資源エネルギー庁「変更届出や変更認定申請を失念しないようご注意ください」
②住宅ローン・ソーラーローンの残債整理と所有権の扱い
残債がある場合の売却・引き渡しの進め方
住宅ローンが残っている場合は、売却代金などで残債を返済し、抵当権を抹消してから引き渡すのが一般的です。一方、ソーラーローンについては、契約内容によって売却時の取り扱いが異なるため、所有権留保の有無や残債の精算方法をローン会社に確認しましょう。所有権留保と、完済前の設備所有権の扱い
ソーラーローンの契約によっては、「所有権留保」が設定されている場合があります。これは、ローンを完済するまで太陽光発電設備の所有権をローン会社や販売会社などが留保する仕組みです。ローンが残った状態で住宅を売却する場合、太陽光設備を買主に譲渡できない可能性があるため、残債の精算方法と設備の所有権を事前に確認しましょう。実際、裁判所が公開する不動産競売物件情報でも、建物とは別の会社が太陽光発電設備を所有しているケースが確認されています(※)。住宅を売却する際は、「家の所有者」と「太陽光設備の所有者」が同じとは限らない点に注意が必要です。
③太陽光を残して売る場合、買主への引き継ぎで必要なこと
FIT残存期間・売電単価の開示
太陽光発電を残したまま住宅を売却する場合は、買主に対してFITの残存期間や現在の売電単価、売電契約の内容などを事前に共有しておくことが大切です。宅地建物取引業法第35条では、宅地建物取引業者に対して、電気・ガスなどの供給施設の整備状況について重要事項説明を行うことが定められています(※)。ただし、同条がFITの残存期間や売電単価そのものの説明を一律に義務付けているわけではありません。
そのため、売買後に「思っていたより売電期間が短かった」「売電単価を知らなかった」といった認識のずれが生じないよう、FIT認定の内容や売電契約を確認し、売買契約書や重要事項説明書への記載について不動産会社と相談しておくと安心です。
※出典:国土交通省「宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)」
認定通知書・設備情報(メーカー・型番・出力)の整理
名義変更の手続きをスムーズに進めるためにも、FIT/FIP認定通知書、太陽光パネル・パワーコンディショナのメーカー名や型番、出力(kW数)といった設備情報を事前に整理し、買主および電力会社・資源エネルギー庁への申請時にすぐ提出できる状態にしておくと安心です。書類が揃っていないと、第2章で触れた名義変更の手続きが滞る原因にもなります。④太陽光を持って引っ越す・撤去する場合の移設・撤去費用
移設・撤去費用の相場と、引っ越し時に必要な手続き
太陽光発電を今の家から撤去して新居へ移設する場合は、現在の家での撤去費用と、新居での設置工事費用がかかります。住宅用太陽光発電の撤去・移設費用について、国が公表している統一的な相場はありません。屋根の形状や設置状況、パネルの枚数、新居での設置条件などによって費用が変わるため、実際の費用は複数の業者から見積もりを取って確認しましょう。なお、資源エネルギー庁の調査では、事業用太陽光発電設備の撤去・処分費用について、コンクリート基礎で約1.4万円/kW、スクリュー基礎で約1.0万円/kWという中央値が示されています(※1)。ただし、これは地上設置型の事業用設備を対象とした調査であり、住宅の屋根に設置された太陽光発電の撤去費用にそのまま当てはめることはできません。
FIT認定を受けている住宅用太陽光発電設備の設置場所変更は原則として認められていません。ただし、運転開始後に引っ越しに伴って住宅用太陽光発電設備を移転する場合など、一定の条件を満たすときは、例外的に移設が認められる可能性があります。移設を検討する場合は、撤去工事を始める前に、資源エネルギー庁と電力会社へ必要な手続きを確認してください(※2)。
※1出典:経済産業省「太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度に関する詳細検討①」
※2出典:資源エネルギー庁「変更内容ごとの変更手続の整理表」
廃棄等費用積立制度との関係(住宅用10kW未満は対象外)
事業用の太陽光発電(10kW以上)については、廃棄・撤去費用を将来のために積み立てておく「廃棄等費用積立制度」が国の制度として設けられています。一方、10kW未満の住宅用太陽光発電は、家屋の解体時に適切に廃棄されると想定されることを理由に、この積立制度の対象外とされています(※)。つまり住宅用の場合、撤去・移設費用は積立金でまかなわれるものではなく、その都度、設置者自身が負担する費用になるという点は押さえておきたいポイントです。※出典:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度に関する詳細検討①」(2019年8月26日資料)
トラブルを避けるための事前チェックリスト
□ 太陽光発電設備の所有者(本人・ローン会社・リース会社・PPA事業者など)
□ FIT/FIP認定通知書の保管場所と記載内容(認定年月日・出力・残存期間)
□ 電力会社との売電契約書(契約者名・振込口座)
□ 住宅ローン・ソーラーローンの残債額と、完済にかかる期間
□ ソーラーローンに所有権留保が付いているかどうか
□ 太陽光パネル・パワーコンディショナのメーカー名・型番・設置年
□ 売却の場合は不動産会社への太陽光の有無・状態の申告
□ 移設の場合は撤去業者・新居への設置業者への早めの相談