目次
日本の再生可能エネルギーのコストは、物価や人件費、自然条件の影響で世界平均より高い水準にあります。ただし、太陽光発電の入札価格は7円台まで下がってきており、コスト低減は着実に進んでいます。今後はFIT・FIP制度や技術開発を通じて、世界水準への収れんが期待される段階にあります。
再生可能エネルギーの種類と世界の動向
再生可能エネルギーは、無尽蔵に利用できる自然の資源に基づくエネルギーです。再生可能エネルギーには、水力発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電、太陽光発電などがあり、環境にやさしく、尽きることのないエネルギー供給源として期待されています。世界的に見ると、特に太陽光発電と風力発電の発展が進んでいます。再生可能エネルギーの種類をわかりやすく解説|太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの特徴と課題
再生可能エネルギーについてご存じでしょうか?石油や石炭といった、有限の資源である化石エネルギーではなく、枯渇することのない無限の資源から生み出すエネルギーが再生可能エネルギーです。...
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再生可能エネルギーの導入状況とは
化石燃料にはどのような種類がある?
しかし、これらの燃料は、燃焼時に二酸化炭素を大気中に放出することから、地球温暖化や気候変動の原因とみなされており、再生可能エネルギーや代替燃料への切り替えが求められています。
日本の再生可能エネルギー導入状況とFIT制度
日本では、再生可能エネルギーの導入が進んでいます。2009年にスタートした「余剰電力買取制度」を皮切りに導入が増えはじめ、特に2012年に制定された「固定価格買取制度(FIT法)」によって一気に促進されました。FIT法は、再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間、定額で買い取ることが国によって保証される制度です。ただし、買取費用が急増したことで、国民の電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」が増大してしまうデメリットがあります。そこで、法改正をおこなうことで、より持続可能な発電事業の展開が促進されました。
改正FIT法をわかりやすく解説!|再エネ特措法改正の理由や変更点を紹介
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日本のエネルギーミックスとは|電源構成の現状
2011年の東日本大震災と福島原子力発電所の事故により、日本の電力システムは深刻な影響を受けました。当時、原子力発電は電力供給の四分の一を担っていましたが、震災以後はその割合を大きく減らしています。現在では、天然ガスが大きな割合を占めており、次いで石炭となります。下のグラフのように、再生可能エネルギーへの置き換えはまだあまり進んでいない事が分かります。
※国際エネルギー機関(IEA)公表のデータを基に作成
太陽光発電の発電コストとkWh単価
太陽光発電は、他の再生可能エネルギーと比較して導入のハードルが低いことから、FIT制度の施行以降、導入量が急速に増えてきました。近年は導入量の拡大だけでなく、発電コストそのものの低下も進んでいます。2025年度の買取価格を見ると、住宅用(10kW未満)は1kWhあたり15円、事業用(50kW以上250kW未満)は8.9円で、屋根設置の場合は11.5円に設定されています(※)。買取価格はFIT制度が始まった2012年度と比べると大きく下がっており、太陽光発電のコストが着実に低減してきたことがうかがえます。
さらに、入札によって価格が決まる大規模な事業用太陽光では、2025年度第3四半期(第26回入札)の平均落札価格が7.13円/kWhまで下がってきており(※)、太陽光発電のkWh単価は年々競争力を増している状況です。
世界の太陽光発電の導入事情では、中国、米国、ドイツ、日本、インドがリーダー的なポジションになり、政府のサポートや定められた導入目標によって、成長を牽引しています。
※出典:資源エネルギー庁「太陽光発電について(2026年1月)」
風力発電の世界的な導入状況とコスト
風力発電は世界中で急速に普及が進んでおり、2023年の発電量の伸びは太陽光発電に次ぐ2番目の大きさでした。ネットゼロ・シナリオ(※1)の達成には風力発電の増加が必要不可欠であり、2030年までに約7,100TWhの風力発電量が必要だと言われています(※2)。世界中で多くの国が風力発電プロジェクトを導入し、特に欧州諸国、中国、アメリカが風力発電の大手市場として注目されています。発電コストの面でも、大規模化と技術の進歩によって陸上風力を中心に低下が続いており、太陽光発電と並んでコスト競争力の高い電源になりつつあります。
※1 世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指す将来予測のシナリオ。
※2 出典:国際エネルギー機関(IEA)「Wind」
世界と日本の発電コスト比較|太陽光・風力のkWh単価
日本の再生可能エネルギーコストは他国に比べて高い傾向がありますが、太陽光発電については、入札価格の低下によって世界水準との差が少しずつ縮まってきています。ここでは、太陽光発電と風力発電について、日本と世界のkWh単価を比較します。太陽光発電の発電コスト比較|日本と世界のkWh単価
日本では、1kWhあたりの発電コストが世界平均よりも高い水準が続いてきました。これは、太陽光パネルなどの設備投資が、日本国内の物価や人件費の影響を受けやすいためです。もっとも、直近のデータでは、世界の太陽光発電のコストが5円台半ば程度の水準であるのに対し、日本の事業用太陽光の入札価格は7.13円/kWhまで下がってきており(※)、価格差は縮小傾向にあります。
太陽光発電の導入量で世界一の中国は、kWあたりの設置費用が日本より低い水準にあり、こうした海外の動向も日本のコスト低減を後押しする要因になっています。
太陽光発電に加えて、蓄電システムもあわせて導入することで自家消費が進み、初期費用の回収期間もそれだけ短くなります。
※出典:資源エネルギー庁「太陽光発電について(2026年1月)」
風力発電の発電コスト比較|陸上・洋上の違い
風力発電のなかでも、特に陸上風力発電の場合、それぞれの国の物価の高さや自然条件により、1kWhあたりの発電コストに大きな差があります。世界的に見た場合、技術の進化によって風力発電の設備コストは低下傾向にあり、特に欧州では大規模な風力発電所の建設が進んでいます。2022年時点で風力発電がもっとも普及している国は、太陽光発電の場合と同じく中国です。二番目はアメリカですが、中国の風力発電量の半分にも満たない状況です。
再生可能エネルギーのコストに影響する国際情勢
エネルギー供給源と地政学的リスク
国際政治情勢は、再生可能エネルギーのコストに大きな影響を与えます。局所的な戦争や石油産出国との対立があった際、石油価格が高騰するケースが見られますが、このような場合、一般的には再生可能エネルギーに有利な状況となります。国際的な再エネ推進の協力体制
国際的な再生可能エネルギーの推進協力や取り決めが存在することで、再生可能エネルギーの導入を促進し、コスト低減にも寄与しています。国際協力により技術の共有や経済的な支援が行われ、再生可能エネルギーが今後エネルギーの主流となる方向に進んでいます。日本の再生可能エネルギーコストが高いと言われる理由
日本の再生可能エネルギーコストが世界と比べて高いと言われてきた背景には、大きく3つの理由があります。ただし、近年はコスト低減の動きも着実に進んでいるため、あわせて確認しておきましょう。物価と人件費の高さ
日本の物価水準や人件費の高さは、再生可能エネルギーの導入における大きな課題です。太陽光パネルや風力発電機などの設備投資が他国と比較して高額であるうえ、施工にかかる人件費も発電コストを押し上げる要因になっています。物価と人件費の両方が重なることで、世界と比較した場合の再生可能エネルギーのコスト競争において不利な状況が生まれやすくなっています。自然条件・地理条件による制約
日本の自然条件や地理条件も、再生可能エネルギーのコストに影響を与えています。日本の年間日照時間は、気象台・アメダスの平均値で約1,850時間程度であり、これは世界平均の約2,500時間と比較して相対的に短くなります。太陽光発電では日照時間が発電効率に影響するため、この日照時間の短さは大きな課題とされています。また、風力発電においても風況(風の状態や性質)の不安定さが課題となっており、特に6〜9月に風況低下が発生することから、効率的な発電が難しい状況です。
加えて、地震や台風、津波が多いため、発電設備の設置場所が限られ、これが再生可能エネルギーコストの上昇に寄与しています。
実はコスト低減も進んでいる|入札価格・買取価格の推移
物価や人件費、自然条件といった不利な要因がある一方で、太陽光発電のコストは着実に下がってきています。事業用太陽光の入札価格は、2024年度時点の8.17円/kWhから、2025年度第3四半期には7.13円/kWhまで低下しており、政府が掲げる2028年に発電コスト7円/kWhという目標にも近づきつつある状況です(※1,2)。買取価格の面でも、2012年度の住宅用42円/kWhから2025年度は15円/kWhまで下がっており、制度開始当初と比べて設備コストそのものが大きく低下してきたことを示しています。「日本は再エネコストが高い」というイメージだけで捉えるのではなく、こうした低減の動きもあわせて見ておくことが大切です。
※1 出典:資源エネルギー庁「太陽光発電について(2026年1月)」
※2 出典:資源エネルギー庁「太陽光発電について(2024年12月)」
再生可能エネルギーと石油価格・電気代の関係
石油価格との相関性
再生可能エネルギーと石油価格は複雑な相互関係にあります。石油価格が上昇すると、再生可能エネルギーは経済的に魅力的になり、導入が促進される一方で、価格の低下により再エネの競争力が低下することもあります。この相関性はエネルギー市場において常に変動しています。再生可能エネルギーの競争力向上
独自の持続的な競争力を持つ再生可能エネルギーは、導入が進むほどその重要性が増しています。技術の進歩や経済規模の拡大によってコストが低下し、エネルギー市場における競争優位性が強化されています。長期的な視点から見れば、再生可能エネルギーはエネルギー転換の中心的な役割を果たし、持続可能なエネルギー政策の一環として重要性を増しています。
再生可能エネルギーのコスト削減に向けた取り組み|FIT・FIP制度
日本は再生可能エネルギーコストの低減を目指し、エネルギーミックスやFIT・FIP制度の導入など積極的な取り組みを行っています。エネルギーミックスの最適化
再生可能エネルギーコスト低減の一環として、エネルギーミックスの導入が進んでいます。これは、従来の発電方法に加え、再生可能エネルギーを含めて複数の発電方法を組み合わせる取り組みです。自然環境の変化に応じて、最適な発電方法を調整することで、効率的なエネルギー供給が可能となり、コストの削減が期待されています。FIT・FIP制度の仕組みと役割
FIT(固定価格買取制度)は、再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定期間・一定価格で買い取ることを国が保証する制度です。発電事業者にとっては長期の収支計画が立てやすくなるため、再生可能エネルギーの導入を後押ししてきました。2022年度からはFIP制度も導入され、市場価格に連動した形での売電を促すことで、再生可能エネルギーの自立化とコスト低減の両立を図る仕組みが整いつつあります。一方で、FIT制度の買取費用は、電気料金に上乗せされる再エネ賦課金によってまかなわれています。2025年度の賦課金単価は1kWhあたり3.98円で、2024年度の3.49円から引き上げられました(※)。再生可能エネルギーの導入が進むほど、電気代への影響も無視できない規模になってきているため、コスト低減と国民負担のバランスが今後の重要な論点になっています。
※出典:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価を設定します」(2025年3月21日)