目次
太陽光パネルの反射光トラブル(光害)とは
※出典1:環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(令和2年3月)
※出典2:環境省「光害対策ガイドライン(令和3年3月改訂版)」
反射光トラブルが起きやすい条件
反射光トラブルは、パネルの向きや傾斜角、隣家との位置関係が重なったときに起きやすくなります。この章では、環境省が示すパターンを土台に、北面設置・傾斜角・住宅密集地の3つの視点から整理します。環境省が示す、反射光が問題になる3つのパターン
環境省の「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」は、反射光による影響が生じる可能性がある条件として、次の3つを挙げています(※)。 1つ目は、設置場所の北側に高い建物がある場合です。冬は南から低く入る太陽光が北側の高い方向へ反射するため、建物内に反射光が差し込む可能性があります。2つ目は、斜面地にパネルを設置し、南側に住宅などが近接している場合です。夏の正午前後に高い角度で入った太陽光の反射光が、南側の住宅に差し込む可能性があります。3つ目は、東側または西側が大きく開けた土地に設置する場合です。反対側に住宅があると、朝や夕方に反射光が差し込む可能性があります。 3つに共通するのは、パネルの向き、季節と時間帯による太陽の高さ、反射光を受ける建物の位置です。同ガイドラインは事業用が対象ですが、住宅の屋根に設置する場合でも、反射光を検討する際の参考にできるとされています。※出典:環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(令和2年3月)
北面設置と隣地との高低差
北面のパネルは、南から入った太陽光を北側へ反射します。北側に隣家があれば、反射光が届く先は隣家です。住宅の反射光をめぐって判決に至った事案も、北面に設置したパネルが問題になりました(詳細は第3章で解説します)。 この事案では、敷地が南側に傾斜して低く、屋根は北側のほうが広く設計されていて、北側の屋根により多くのパネルが載っていました。パネルは、隣家の2階ベランダに出ると目の前に見える位置関係でした。建物の敷地は南側に傾斜して低くなっており、北側のパネルは隣家の2階ベランダから目の前に見える位置関係でした(※参考1)。このように、建物同士の高低差や位置関係によっては、反射光が隣家の窓などに届きやすくなると考えられます。 また、この事案の判決では、北面への設置は発電量が少なく、北側の近隣への反射光被害が懸念されるとして、設置を控えるよう案内しているパネルメーカーがあることにも触れられました(※参考2)。 北面に載せるかどうか、発電量とトラブルのリスクの両面から検討するのが基本です。北面に設置する場合の防眩パネルの活用は、以下の記事で詳しく解説しています。防眩太陽光パネルで解決!北面設置と住宅密集地での反射光対策とは?
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※参考1:日本経済新聞「「光害」理由に住宅用太陽光パネルの撤去命じる判決」
※参考2:RETIO「最近の判例から⒄ 太陽光パネルの反射光は受忍限度を超えるものではないとして、建設会社に対する損害賠償請求が棄却された事例」
傾斜角と反射光の向きの関係
反射光の向きは、太陽の高さと、パネルの向き・傾斜角で決まります。光は入射角と反射角が等しくなるように反射し、直進します。環境省のガイドラインでも、立地場所の緯度経度、パネルの方位角と傾斜角がわかれば、反射光は計算できるとされています(※)。 南向きのパネルは、太陽光がパネルに当たると、反射光は基本的に上向きになります。 一方、北向きのパネルは事情が異なります。北向きのパネルは、傾斜角が急で、かつ冬など太陽が低くなると、反射光は下向きになることが多くなります。 そのため、隣家の窓の高さに届きやすくなるのです。 下の表は、東京での簡易計算です(注)。| 季節 | 太陽の高さ(正午ごろ) | 傾斜20度の反射光 | 傾斜30度の反射光 |
|---|---|---|---|
| 冬至 | 約31度 | 約9度の下向き | 約29度の下向き |
| 春分・秋分 | 約54度 | 約14度の上向き | 約6度の下向き |
| 夏至 | 約78度 | 約38度の上向き | 約18度の上向き |
※出典:環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(令和2年3月)
住宅密集地で避けにくくなる理由
反射光は直進するため、隣家の窓が反射光の進む先にあるかどうかが問題になります(※1)。住宅密集地では、隣家の窓との距離が近く、間に遮るものも少ないので、窓が反射光の進む範囲に入りやすくなります。敷地に余裕がないため、パネルの向きや配置を変えて避ける余地も小さくなります。 環境省のガイドラインは、周囲にまぶしさを懸念する住宅などがある場合は、シミュレーションで影響の程度を確かめ、必要に応じて対策を講じるとしています(※)。密集地ほど、この事前確認が欠かせません。※出典:環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(令和2年3月)
反射光で裁判になった実例【家庭用】(横浜の事案)
何が起きたのか:事案の概要
2008年、隣家の南側に2階建ての住宅が新築され、屋根の南側に7枚、北側に12枚のパネルが設置されました。敷地は南側に傾斜して低く、北側のパネルは、隣家の南側2階ベランダに出ると目の前に見える位置関係でした。 建物の完成前から、北側パネルの反射光が隣家に差し込みました。隣家はすぐに対処を求め、住宅会社の担当者も現地で状況を確認しましたが、解決しませんでした。隣家は、建て主にパネルの撤去を、建て主と住宅会社に各110万円の損害賠償を求めて提訴しました(※参考1)。地裁と高裁で判断が分かれた理由
2012年4月18日、横浜地裁は、北側パネル12枚の撤去と、計22万円の支払いを命じました。報道によると、反射光が曇天でない限りほぼ毎日、一定時間隣家に差し込み、 室内でもまぶしくて洋裁などができず、洗濯物を干すのにサングラスが必要な状態だとして、受忍限度を超えると認められました。住宅会社は「被害は予見できなかった」と主張しましたが、住宅建築の専門業者なら、北側屋根に設置すれば北側の隣家に反射光が差し込むことは予見できたとして退けられています(※参考2)。 建て主は控訴せず、パネルは2012年8月下旬に撤去されました。控訴したのは住宅会社だけで、2013年3月13日、東京高裁は住宅会社への請求を棄却しました。理由は主に3つです。 1つ目は、まぶしさの強さです。隣家は「通常の晴天時の4000倍以上」と主張しましたが認められず、輝度計での比較ではパネルのほうが屋根材より低い結果でした。相当まぶしいことは否定できないものの、その強さを明らかにする証拠はないとされました。2つ目は、差し込む時間です。春分の日で約2時間、秋分の日で約1時間、冬至の日で約30分、夏至の日は0分と認定され、窓の位置や角度を考えると、実際はさらに短いとされました。3つ目は、回避のしやすさです。レースのカーテンでも相当程度防げ、厚手のカーテンならほぼ遮れることから、回避は容易と判断されました。 一方で、東京高裁は、北側の隣家への配慮が求められること自体は認めています。そのうえで、受忍限度を超えるとは直ちに認められず、パネルが撤去されていることも考慮して、賠償を命じるべき損害はないと結論づけました(※参考1)。この事案から読み取れる「受忍限度」の見方
受忍限度(注)を超えるかどうかで、撤去や賠償が認められるかが決まります。この事案から読み取れるポイントは、3つあります。 1つ目は、判断はまぶしさの強さ・差し込む時間・回避のしやすさなどを総合して行われることです。同じ事案でも、地裁と高裁で結論が分かれました。2つ目は、強さや時間を示す客観的な資料が判断に影響することです。高裁は、強度を示す証拠がない点を指摘しています。3つ目は、賠償が認められなくても、設置する側に近隣への配慮が求められることです。RETIOの解説も、周囲の建物への配慮が必要なことを示す事例だとまとめています(※参考1)。 これは1つの事案の結果で、他の場合にそのまま当てはまるわけではありません。ただ、設置前の確認(第5章)と、もめたときの記録(第6章)がなぜ大切かは、この事案から見えてきます。 (注)受忍限度とは、社会生活を送るうえで、お互いに我慢すべきとされる限度のことです。※参考1:RETIO「最近の判例から⒄ 太陽光パネルの反射光は受忍限度を超えるものではないとして、建設会社に対する損害賠償請求が棄却された事例」
※参考2:日本経済新聞「太陽光パネルの撤去命令 横浜地裁、反射光の被害認定」
反射光で裁判になった実例【産業用】(姫路のメガソーラー)
産業用のメガソーラーでも、反射光をめぐって訴訟になった例があります。兵庫県姫路市の約1MWのメガソーラーについて、近隣の男性が「反射光と反射熱で平穏な日常生活を脅かされた」として、開発支援事業者にパネルの一部撤去と330万円の損害賠償を求め、2015年9月に神戸地裁姫路支部へ提訴しました。「室温が50度を超えた」など、原告側の被害を伝える報道もあり、注目された事案です。 第1回口頭弁論は同年11月に開かれ、その後およそ2年、書面で双方の主張が繰り返されました(※参考1)。別の報道では、原告が訴えを取り下げたとされ、判決は出ていません(※参考2)。そのため、この事案から受忍限度の判断基準を読み取ることはできません。 ただ、事業用では、環境省のガイドラインが事前の対応を求めています。周辺に住宅などがあり反射光が懸念される場合は、シミュレーションで影響の程度を確かめ、住民などに説明できるようにしておく必要があるとされています(※)。また、周知の範囲を事業区域の隣接部分に限ったことでトラブルになる例が多いとして、説明する範囲を十分に検討するよう求めています。この考え方は、家庭用の屋根に設置する場合にも、事前確認や近隣への説明を検討する際の参考になります。 次の章で、設置前に確認すべきことを整理します。※出典:環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(令和2年3月)
※参考1:日経BP「「メガソーラーの反射光で熱中症!?」、姫路訴訟のてん末」
設置前に確認すべきこと
環境省は、太陽光発電をめぐる地域とのトラブルの多くで、事前の調査が十分でなく、必要な対策が講じられていないことが要因の一つになっていると指摘しています(※)。反射光トラブルも、設置前の確認で防げる部分が大きくなります。なお、以下は事業用を対象とした同ガイドラインの考え方を、住宅にあてはめて整理したものです。隣家との位置関係・高低差・窓の位置を確認する
まず、隣家の窓の位置と向きを確認します。特に、2階の窓やリビング、寝室など、長く過ごす部屋の窓が重要です。あわせて、自宅の屋根と隣家との高低差、パネルの向き(北面・東面・西面かどうか)、屋根の勾配を確かめます。環境省のガイドラインでは、周囲に「まぶしさ」を懸念する建物などがないか、前述の3パターンに該当しないかを確認する方法が示されています(※)。 確認した内容と根拠は、後で近隣に説明できるよう、資料としてまとめて保管しておきましょう。反射光シミュレーションを依頼し、結果を書面で残す
反射光は、シミュレーションで事前に予測できます。環境省は、立地場所の緯度経度、パネルの方位角と傾斜角から、夏至・冬至・春分・秋分について反射光の方位と角度を計算し、隣接する建物に届くおおよその時間を推定する方法を示しています。販売店や施工店に依頼して行うとされています(※)。 依頼するときは、隣家の窓の位置を伝え、季節ごとにどの時間帯に届くのかを確認しましょう。第3章の事案でも、季節ごとの差し込み時間が判断材料になりました。結果は、口頭で聞くだけでなく、書面で受け取って残しておくと、近隣への説明にも使えます。向き・配置・防眩仕様を検討する
シミュレーションで影響が懸念される場合は、対策を検討します。環境省が挙げる対策は、アレイ(パネルを架台に設置したもの)の向きや配置の調整、防眩仕様のパネルの採用、境界部へのフェンスや植栽です(※)。住宅の屋根では、向きを変えられない場合が多いため、北面に載せない、枚数を減らすといった配置の見直しと、防眩仕様の検討が中心になります。近隣への事前説明と記録
環境省は、周知の範囲を隣接部分だけに限ったことで、地域住民と良好な関係を築けずトラブルになる例が多いと指摘しています。一方的に伝えるのではなく、住民の懸念を聞き取る双方向のやり取りが重要だとされています(※)。説明した日時、相手、質疑の内容も記録しておくと、後の振り返りやトラブルの予防に役立ちます。 住宅の場合は、工事の前に、隣家などへシミュレーション結果と採用する対策を伝えておきましょう。反射光が届きそうな家には、特に丁寧に説明しておくことが大切です。※出典:環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(令和2年3月)
もめてしまったときの対処法
苦情を受けた(設置した)側の初動
苦情を受けたら、まず現地で反射光を確認します。第3章の事案でも、建物の完成前に苦情が入り、担当者が現地で差し込みの状況を確認しています(※参考1)。どの部屋に、どの季節と時間帯に、どのくらい差し込むのかを、写真などで記録しておきましょう。 次に、施工会社や販売店に連絡し、シミュレーションで届き方を確認します。そのうえで、対策案を相手に示します。環境省が挙げる対策は、アレイの向きや配置の調整、防眩仕様のパネルの採用、境界部のフェンスや植栽です(※1)。住宅の屋根では、向きの変更が難しい場合が多く、パネルの一部撤去や、窓への防眩フィルム、カーテンの取り付けなどが現実的な選択肢になります。第3章の事案では、住宅会社がパネルの撤去、窓ガラスへの防眩フィルム、カーテンの取り付けといった案を示しましたが、隣家の納得は得られませんでした(※参考2)。案を示すだけでなく、相手の困りごとを聞きながら早めに対応を進める姿勢が大切です。※出典1:環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(令和2年3月)
※参考1:RETIO「最近の判例から⒄ 太陽光パネルの反射光は受忍限度を超えるものではないとして、建設会社に対する損害賠償請求が棄却された事例」
※参考2:8home「太陽光パネルでタマホームと施主に損害賠償責務の判決」
隣家のパネルで困っている側の進め方
まず、記録を残します。日付、時間帯、差し込む部屋、困っている内容を、写真や動画とあわせて残しておきましょう。第3章の事案では、東京高裁が、まぶしさの強さを示す証拠がないことや、差し込む時間が限られることを重視しました(※参考1)。感覚だけでなく、客観的な記録が判断材料になります。カーテンなどで遮れる程度も判断材料になり得るため、遮光した場合の状況も記録しておくとよいでしょう。 そのうえで、設置者や施工会社に、落ち着いて状況を伝えます。直接の話し合いが難しい場合は、施工会社を通す方法もあります。話し合いが進まないときは、法テラスに相談できます。法テラスは、問い合わせ内容に応じて、法制度の情報と、弁護士会や地方公共団体の相談窓口などの情報を無料で案内しています(※2)。※参考1:RETIO「最近の判例から⒄ 太陽光パネルの反射光は受忍限度を超えるものではないとして、建設会社に対する損害賠償請求が棄却された事例」
※出典2:法テラス「情報提供業務」
話し合いで解決しないときの調停・訴訟
話し合いで解決しない場合は、裁判所の民事調停があります。民事調停は、裁判所が当事者の間に入って話し合いを進める手続で、近隣トラブルの解決手段として案内されています。手続が簡単で費用が安く、秘密が守られ、合意すれば判決と同じ効果を持ちます(※3)。裁判官1人と調停委員2人以上からなる調停委員会が双方の言い分を聞き、通常は2〜3回の期日で進みます。手続は調停室で行われ、傍聴人などには公開されません(※4)。 それでも解決しない場合は、訴訟になります。第3章の事案では、パネルの撤去は所有権に基づく妨害排除請求として、損害賠償は不法行為に基づく請求として求められました。2010年11月の第1回口頭弁論から2012年4月の地裁判決まで約1年半、東京高裁の判決は2013年3月でした(※参考1,2)。時間も費用もかかるため、訴訟の前に、弁護士などの専門家へ相談しておくと安心です。※出典3:裁判所「ご存じですか? 簡単に手続できます 裁判所の民事調停」
※出典4:政府広報オンライン「身近な民事トラブルを話合いで解決 「訴訟」に代わる「民事調停」」
※参考1:RETIO「最近の判例から⒄ 太陽光パネルの反射光は受忍限度を超えるものではないとして、建設会社に対する損害賠償請求が棄却された事例」
※参考2:8home「太陽光パネルでタマホームと施主に損害賠償責務の判決」