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2023年12月01日

注文住宅に太陽光発電は必要?屋根・暮らし・お金の3視点から判断

注文住宅に太陽光発電は必要?屋根・暮らし・お金の3視点から判断

注文住宅で太陽光発電を付けるべきか迷う方へ。屋根・暮らし・お金の三つの視点から、太陽光発電に関する制度や費用、回収の考え方をわかりやすく整理します。メリットだけでなく、向かないケースも確認し、自分の家に必要か判断できるようになることを目指します。

電気代さげるなら

注文住宅を建てるとき、「太陽光発電を付けるべきか」で迷う方は多いのではないでしょうか。

「電気代が下がるなら付けたい…でも初期費用が高いし、本当に元が取れるの?」「うちの屋根には向いているの?」

こうした疑問や不安を抱えたまま、ハウスメーカーとの打ち合わせが進んでいく。そんな状況に心当たりがある方も少なくないはずです。

この記事では、注文住宅で太陽光発電の導入を検討している方に向けて、「屋根×暮らし×お金」の3つの軸から判断する方法を解説します。

2025年の最新情報をもとに、費用の相場や回収期間の考え方、蓄電池との組み合わせ、さらには「やめたほうがいい」ケースまで、住宅購入前に知っておきたいポイントをまとめました。

2025年の前提

太陽光発電を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わりました。2025年時点での制度を理解しておくと、より納得のいく判断ができます。

FIT・初期投資支援の仕組み

太陽光発電で余った電気は、電力会社に売ることができます。これを「余剰売電」と呼び、国が定めた固定価格で買い取ってもらえる制度が「FIT(固定価格買取制度)」です。

【2025年度 FIT買取価格と補助金制度】※2025/12 時点

項目内容対象・条件
FIT買取価格(4〜9月)15円/kWh(10年固定)10kW未満の住宅用
初期投資支援(10月〜)1〜4年目:24円/kWh
5〜10年目:8.3円/kWh
10kW未満の住宅用
ZEH補助金基本:55万円
ZEH+:90万円
省エネ基準を満たす新築住宅
蓄電池補助金2万円/kWh(上限20万円)ZEHと同時申請
東京都義務化2025年4月施行
大手事業者約50社が対象
※施主への直接義務なし

10月以降の新スキームは、初期の負担を軽減する設計になっており、実質的な平均単価は従来FITと同程度になります。

また、太陽光パネルの価格も以前に比べて下落しており、初期費用の相場も落ち着いてきました。

売電収入だけで元を取る時代ではなくなりましたが、電気代削減+補助金+売電収入のトータルで考えると、投資回収の見込みは立てやすい状況です。

ほかにも、東京都では2025年4月以降、年間供給延床面積2万㎡以上の大手ハウスメーカー等(約50社)に対して、延床2,000㎡未満の新築住宅への太陽光設備設置を義務付ける制度が始まりました。

義務が課されているのは販売事業者側であり、施主に直接の罰則があるわけではありません。

出典元:
住宅用太陽光のFIT価格・初期投資支援スキーム(2025年度)」(経済産業省)
2025 FIT/FIPガイドブック」(資源エネルギー庁)

ZEH補助金と新築義務化の対象住宅

注文住宅を建てる際、「ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」という言葉を耳にした方も多いと思います。ZEHとは、省エネ性能の高い住宅に太陽光発電などを組み合わせて、年間のエネルギー収支をゼロにする住宅のことです。

2025年度のZEH補助金

  • ZEH:55万円+蓄電池2万円/kWh(上限20万円)
  • ZEH+:90万円+蓄電池2万円/kWh(上限20万円)

蓄電池を含めると最大約110万円前後の補助が受けられます。

出典元:
ZEH補助金(注文住宅の省エネ住宅)」(SII)
東京都の新築住宅等への太陽光設置義務化」(東京都 太陽光ポータル)

注文住宅に太陽光発電をつけてもいい?

「注文住宅に太陽光発電を付けるべきか」という判断は、単純に「得か損か」だけでは決められません。住宅の条件、住まい方、お金の優先順位によって、答えは大きく変わるからです。

ここでは、「屋根×暮らし×お金」の3軸で概要をまとめました。

【3軸チェックの概要】

チェックポイント向いている条件
①屋根・気候・日射量屋根形状、方位、周囲環境シンプルな屋根、南向き、日当たり良好
②暮らし方と電気在宅時間、電化状況、家族構成日中在宅、オール電化、電気自動車利用
③お金・投資・将来初期費用、回収期間、住む期間補助金活用可、10年以上居住予定

屋根と気候の相性

太陽光発電の効果を左右する最初の条件が、「屋根と気候の相性」です。どんなに暮らし方が合っていても、屋根の条件が整っていなければ、期待した発電量は得られません。

相性のいい屋根形状・屋根材・方位

太陽光発電に向いている屋根には、いくつかの共通点があります。

屋根の形状

シンプルな形状ほど、パネルを効率よく載せられます。切妻屋根(三角屋根)や片流れ屋根は、パネルの設置面積を大きく取れるため、発電量も確保しやすくなります。
寄棟(よせむね)屋根や複数の方角に分かれた屋根は、設置できるパネルの枚数が限られる場合があります。

屋根の方位

最も発電効率が高いのは南向きです。次いで南東・南西も良好な条件と言えます。東向きや西向きでも発電はできますが、南向きに比べると発電量は少なくなります。
北向きは日射量が少ないため、基本的には避けた方が無難です。

屋根材

スレート(コロニアル)、ガルバリウム鋼板、瓦など、多くの屋根材に対応できます。
ただし、屋根材によって施工方法や費用が変わることがあるため、ハウスメーカーや業者との打ち合わせ時に確認しておくと安心です。

天候・日射量・気候による発電量の性質

太陽光発電は、天候に依存する性質があります。晴れの日が多い地域ほど、発電量は安定します。逆に、雨や曇りが多い地域、雪が積もる地域では、年間を通じた発電量が少なくなる傾向があります。

「やめた方がいい」屋根の条件

以下のような条件に当てはまる場合、太陽光発電の導入は慎重に検討した方がいいでしょう。

  • 極端に影が多い環境:隣家や大きな木などで、一日のうち長時間にわたって影ができる場合
  • 複雑な屋根形状:屋根の向きが複数に分かれており、パネルを効率的に配置できない場合
  • 将来の撤去・交換が難しい屋根:屋根材の状態が悪く、近いうちに交換が必要な場合

こうした条件に当てはまる場合でも、「絶対に無理」というわけではありません。ただし、期待する効果が得られにくいため、初期費用との見合いで慎重に判断することが大切です。

※太陽光発電をやめたほうがいいケース:https://solar-mate.jp/solar-panel/086/

出典元:
再エネ特措法 情報公表サイト」(日射量・導入状況の基礎データ)
JPEA 保守点検(O&M)」(太陽光システムの保守点検・影・方位などの考え方)

暮らし方と電気代

屋根の条件が整っていても、「その電気をどう使うか」によって、得られる効果は大きく変わります。ここでは、ライフスタイルの観点から、電気代削減効果をどう考えればいいかを整理します。

在宅時間とオール電化が「効果」を左右する

太陽光発電は日中に電気をつくります。そのため、日中に在宅している時間が長いほど、自家消費が増えて電気代削減効果が高くなります

【在宅パターン別:太陽光発電の効果イメージ】

在宅パターン自家消費率電気代削減効果売電収入向き・不向き
日中在宅(在宅ワーク等)高い(60〜80%)★★★ 大きい★ 少なめ◎ 最も向いている
オール電化+日中在宅非常に高い(70〜90%)★★★ 非常に大きい★ 少なめ◎ 最も効果的
共働き・日中不在低い(30〜40%)★ 小さめ★★★ 多め△ 売電メイン
電気自動車あり+日中在宅高い(70〜85%)★★★ 非常に大きい★ 少なめ◎ 燃料費も削減
1〜2人世帯・電気少なめ中程度(40〜50%)★★ 普通★★ 普通○ 効果は限定的

※自家消費率:発電した電気のうち、自宅で使う割合
※効果は標準的な5kWシステムを想定した目安です

在宅ワークをしている方や、小さなお子さんがいて日中も家にいることが多い家庭では、発電した電気をそのまま使えるため、買う電気が大幅に減ります。

一方で、共働きで朝から夕方まで不在の場合、発電した電気の多くを売電に回すことになります。

また、オール電化住宅かどうかも大きなポイントです。ガスを使わず、すべて電気で生活している住宅では、電気使用量そのものが多いため、自家消費による削減効果がより大きくなります。

電気自動車を自宅で充電している場合も同様です。太陽光でつくった電気を充電に使えば、ガソリン代に相当する燃料費を抑えることができます。

電気代削減の詳しい話を知りたい方はhttps://solar-mate.jp/solar-panel/137/

出典元:「2025 FIT/FIPガイドブック」(自家消費・余剰売電の基本仕組み)

お金と回収の考え方

「本当に元が取れるの?」これは、太陽光発電を検討する際に、誰もが気にするポイントです。
ここでは、初期費用、電気代削減、売電収入、補助金、そして将来の交換・撤去費用まで含めた「お金の全体像」を整理します。

初期費用の相場と補助金の「幅」を知る

太陽光発電の初期費用は、主にパネルの容量によって決まります。

新築で4〜6kWを載せる場合、施工費込みでおおよそ90〜160万円前後が一つの目安です。 ただし、既築への後付けや、複雑な屋根・高性能パネルを選ぶと、200万円近くまで上がるケースもあります。

一般的な住宅用の容量は、4kW、5kW、6kWあたりが多く、相場としては以下のようなイメージです。

  • 4kW:105万〜140万円
  • 5kW:130万〜170万円
  • 6kW:156万〜190万円

さらに、補助金を活用すれば、初期費用を数十万円程度引き下げることができます

ZEH補助金(55〜90万円+蓄電池最大20万円)や自治体の独自補助金など、対象となる制度があるかどうかを必ず確認してください。

電気代削減+売電収入+補助金のトータル収支

太陽光発電の「リターン」は、3つの要素から成り立ちます。

  1. 電気代削減:自家消費によって、電力会社から買う電気が減る
  2. 売電収入:余った電気を電力会社に売ることで得られる収入
  3. 補助金:初期費用を軽減する一時金

たとえば、年間の電気代削減が10万円程度、売電収入が5万円程度、補助金で30万円が得られた場合、初期費用が150万円だとすると、単純計算で約8〜10年程度で投資回収できる可能性があります。

ただし、これはあくまで「理想的なケース」です。実際には、天候や在宅時間、電気の使い方によって効果は左右されます。
また、FIT価格の下落により、売電収入は年々減少傾向にあります。

パワコン交換・故障・撤去費用も「投資期間」に含める

太陽光発電は、設置して終わりではありません。長期間使う中で、以下のようなコストが発生します。

  • パワーコンディショナ(パワコン)の交換:10〜15年程度で交換が必要になることが多く、交換費用は20万〜30万円台が目安
  • 点検・メンテナンス費用:定期的な点検で、数万円程度掛かる場合がある
  • 撤去費用:将来、住み替えや屋根の交換時に太陽光パネルを外す場合、処分費用が発生する

こうした「将来のコスト」も投資回収の計算に含めておくことで、より現実的な収支が見えてきます。 出典元:
住宅用太陽光のFIT価格・初期投資支援スキーム(2025年度)」(経済産業省)
JPEA 保守点検(O&M)」(保守・点検・撤去の考え方)

蓄電池と停電対策

太陽光発電を検討するとき、「蓄電池も一緒に付けるべきか」という疑問を持つ方は多いでしょう。

蓄電池があれば、昼間につくった電気を夜に使えたり、停電時にも電源を確保できたりと、自給自足に近い暮らしが実現できます。

【蓄電池導入パターン比較】

導入パターン向いている家庭初期費用の目安
蓄電池セット導入停電リスクを重視、予算に余裕あり太陽光+蓄電池で250万〜400万円
段階導入(後から追加)まず太陽光で様子を見たい太陽光100万〜200万円→後日蓄電池追加
太陽光のみ日中の自家消費で十分、予算を抑えたい太陽光のみ100万〜200万円

停電時の電源としてどこまで使えるか

停電時に太陽光発電や蓄電池がどう使えるかは、組み合わせによって違います。

  1. 太陽光発電のみ(蓄電池なし)
    停電時でも、昼間に晴れていれば「自立運転モード」で最大1,500W程度の電気が使えます。ただし、夜間や曇りの日は使えません。

  2. 太陽光発電+蓄電池
    昼間につくった電気を蓄電池に貯めておけるため、夜間や天候が悪い日でも電源を確保できます。容量によっては、数日間の停電にも対応可能です。自給自足に最も近い形です。

  3. 太陽光発電+電気自動車(V2H)
    電気自動車を蓄電池として活用する「V2H(Vehicle to Home)」という仕組みもあります。電気自動車の大容量バッテリーを家庭用電源として使えるため、蓄電池の代わりになります。

蓄電池の寿命・交換・相場のざっくりイメージ

蓄電池にも寿命があります。一般的な家庭用蓄電池の寿命は、10年〜15年程度とされています。パワコンと同様、期間が経過すると容量が劣化し、交換が必要になります。

交換費用は、容量や機種によって異なりますが、数十万円〜100万円台が目安です。

太陽光発電と同時に導入する場合、将来のこうした交換費用も投資計画に含めておくと、より現実的な収支が見えてきます。

出典元:
省エネ・蓄電池系補助事業」(SII)
停電時の自立運転に関する技術資料」(JPEA・JEMA)

打ち合わせと見積もり

注文住宅で太陽光発電を導入する場合、ハウスメーカーや工務店、そして太陽光発電の業者との打ち合わせが不可欠です。

見積もりで揉めない「確認項目リスト」

見積もりを受け取ったら、以下の項目を必ず確認しましょう。

【見積もり確認チェックリスト】

チェック項目確認すべきポイントNG例・注意点
容量・メーカー何kW、どのメーカーのパネルか明記されているか「標準仕様」とだけ書かれている
工事範囲パネル設置・配線・パワコン・足場すべて含まれるか「工事費別途」など不明瞭な記載
保証内容出力保証(25年)・施工保証(10年)の期間と範囲保証期間の記載がない
屋根材対応自宅の屋根材(瓦・スレート等)に対応しているか施工方法の説明がない
撤去費用将来の撤去時の対応・費用負担が明記されているか「別途見積もり」のみ
補助金サポート申請代行や窓口サポートの有無「ご自身で申請」のみ
アフター体制メンテナンス・点検・相談窓口の有無連絡先が不明確

これらの項目が明確になっていない見積もりは、後々トラブルの原因になります。不明点は遠慮せず質問し、納得できるまで確認することが大切です。

出典元:「ZEH・省エネ基準」(SII、打ち合わせ時に確認すべき条件の背景)

導入ステップ

ここまで、屋根の条件、暮らし方、お金、蓄電池、そして業者選びについて見てきました。では、「結局、今何からやればいいの?」という疑問に答えるため、導入の流れをまとめます。

ステップ1「我が家の条件チェック」(3軸ベース)

まずは、この記事で紹介した「屋根×暮らし×お金」の3軸で、自分の状況を整理してください。

  • 屋根の形状・方位・日射量は問題ないか
  • 日中の在宅時間や電気の使い方はどうか
  • 初期費用と投資回収の期間は現実的か

この段階で、「向いていない」と感じる条件が多い場合は、無理に導入せず、別の省エネ対策を検討する方が賢明です。

ステップ2「相場・補助金・対象地域の確認」

条件が揃っていそうなら、次は相場と補助金を確認します。

  • 自分が在住している地域で、どんな補助金制度があるか
  • 補助金の募集期間や対象条件はどうか
  • 初期費用の相場はどのくらいか

ステップ3「個別相談で不明点を整理する」

ここまで来たら、ハウスメーカーや太陽光発電の業者に個別相談を申し込みます。見積もりを取り、複数の会社を比較し、納得できる提案を受けた会社と契約を進めます。

焦らず、じっくり比較検討することが、後悔しない導入につながります。

太陽光についてもっと知りたい方は

太陽光総論&詳細

またこちらでも、相談受け付けています

まとめ

注文住宅で太陽光発電を導入すべきかどうか、その答えは、住宅ごとに違います。この記事では、「屋根×暮らし×お金」の3軸で判断する方法をお伝えしました。

判断の3軸をもう一度おさらい

  • 軸①:屋根・気候・日射量
    シンプルな屋根形状、南向き、日当たり良好なら◎
  • 軸②:暮らし方と電気代
    日中在宅、オール電化、電気自動車を使うなら◎
  • 軸③:お金・投資・将来
    補助金が使える、10年以上住む予定なら◎

今決めること・後で決めてもいいこと

今決めるべきこと

注文住宅の設計段階で太陽光発電を組み込むかどうかは、事前に決める必要があります。後から載せることもできますが、新築時に一緒に設置する方が、費用や施工の面で効率的です。

後からでもいいこと

蓄電池は、太陽光発電を導入した後からでも追加できます。予算に余裕がない場合は、まず太陽光だけ導入し、様子を見てから蓄電池を検討する、という段階的なアプローチも現実的です。

FAQ

最後に、注文住宅で太陽光発電を検討する際によくある質問をまとめました。

Q.うちの注文住宅は「やめたほうがいい」ケースですか?

以下の条件に複数当てはまる場合は、慎重に検討した方がいいです。

  • 屋根が複雑な形状で、パネルを効率的に載せられない
  • 周囲に高い建物や木があり、常に影ができる
  • 日中ほぼ不在で、電気使用量が少ない
  • 短期間(5年以内)で住み替える予定がある
  • 初期投資を極力抑えたい

ただし、「絶対にやめるべき」というわけではありません。条件によっては、一部の対策で改善できる場合もあります。

Q.「太陽光はいらない」と判断してもいい条件は?

以下のような理由で「不要」と判断するのも、一つの選択肢です。

  • 電気代が既に低く、削減効果が見込めない
  • 賃貸や転売を前提にしており、長期的な投資回収が期待できない
  • 太陽光発電以外の省エネ対策(断熱強化、高効率設備)を優先したい

太陽光発電は万能ではありません。自分の暮らし方や優先順位に合わせて、柔軟に判断することが大切です。


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