2025年10月10日

フィジカルPPAとは?仕組み・違い・導入手順を“最新制度”でやさしく解説
フィジカルPPAの仕組みとバーチャルPPAとの違い、分割供給の最新動向、同時同量と託送の基礎、価格設計、導入手順と非化石証書の実務まで解説します。企業の電気料金安定とCO2削減に役立つ実務ポイントを、一次情報を参照しながらも説明します。
目次
60秒で要点
「電気代を安定させながら、CO2削減も実現したい」——そんな企業の悩みに応えるのがフィジカルPPAです。
実は、多くの企業が再エネ導入で苦戦する理由は「初期費用の負担」と「複雑な契約」にあります。しかしフィジカルPPAなら、初期費用ゼロで太陽光発電を導入でき、長期契約で電気料金の変動リスクも抑えられます。
- この記事を読めば
-
- バーチャルPPAとの決定的な違いが分かる
- 自社に合った方式(オンサイト・オフサイト・自己託送)が選べる
- 2024年10月に始まった分割供給制度の活用法が分かる
- 非化石証書の実務がクリアになる
- 導入に失敗しないためのチェックリストが手に入る
読み終わる頃には、「うちの会社でもできそうだ」と思えるはずです。
フィジカルPPAとは(最新定義と位置づけ)
「電気代の高騰」と「脱炭素の圧力」、両方に効く解決策
電力市場の価格変動に振り回されていませんか?そして同時に、取引先やESG投資家から「再エネ比率を上げてください」と言われていませんか?
実は、この2つの課題を同時に解決できるのがフィジカルPPAです。
PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)とは、発電事業者と需要家が長期にわたって電力を取引する契約のこと。その中でフィジカルPPAは、電力そのものを物理的に受け取り、環境価値も一緒に手に入れる方式です。
「バーチャルPPAと何が違うの?」——よく聞かれる質問です。答えは簡単。フィジカルは実際の電気を使う、バーチャルは使わない。これだけです。
フィジカルは発電所から系統を通じて実際の電力が届き、あなたの会社で消費されます。だから「本当に再エネを使っている」実感があります。一方、バーチャルは電力の物理供給はなく、市場価格との差額を精算するだけ。証書だけ買って「再エネ使ってます」と言う形です。
どちらが良い悪いではなく、目的と状況で選ぶのが正解です。
4つのタイプ、どれがあなたの会社に合う?
フィジカルPPAには4つのタイプがあります。それぞれ「こんな会社に向いている」が明確です。
タイプ | こんな会社におすすめ | 決め手 |
---|---|---|
オンサイトPPA | 工場・倉庫など広い屋根がある | 初期費用ゼロ。太陽光を自社敷地に設置 |
オフサイトPPA | 敷地がないが再エネは使いたい | 遠方の大型電源と契約。複数拠点でも対応可 |
自己託送 | グループ会社に電源がある | 小売を介さず直接送電。長期で最もコスト安定 |
バーチャルPPA | 電力調達の柔軟性を最優先 | 物理供給なし。証書だけ取得し価格ヘッジも |
「うちには工場があるからオンサイトかな」「複数拠点だからオフサイトが便利そう」——そんな風に考え始めたら、もう半分は導入への道を歩き始めています。
出典:環境省×みずほ「オフサイトコーポレートPPAについて(2025年2月更新版)」、自然エネルギー財団「コーポレートPPA:日本の最新動向(2025年版)」
もっと詳しく知りたい方は:PPAとは?(基礎)、オンサイトPPAとは
仕組みと基本要素
「同時同量」って何?知らないと損するポイント
ここで重要な概念が同時同量です。聞きなれない言葉ですが、電気料金の安定に直結します。
日本の電力市場では、30分単位で「作る電気」と「使う電気」を一致させるルールがあります(1日48コマ)。ズレると「インバランス料金」という追加コストが発生します。
- BG(バランシンググループ):この調整を担当する責任者。通常は小売事業者
- インバランス:需給がズレた分。市場から買い足すか、余った分を売る
「なんだか難しそう…」と思いましたか?大丈夫です。オンサイトPPAなら、発電と消費が同じ場所だから管理が簡単です。オフサイトや自己託送でも、小売事業者や蓄電池の活用でリスクは抑えられます。
出典:JEPX「取引ガイド」
環境価値も手に入る:非化石証書の基本
「電気を買うだけじゃダメなの?」——その通りです。電力と環境価値は別物なんです。
- 非化石証書:「この電気はCO2を出していません」を証明する証明書
- トラッキング付証書:どの発電所の電気か、履歴が分かる証書。ESG報告書に使える
- 再エネ指定:FIT電源か非FIT電源かで種類が違う
フィジカルPPAなら、電気と証書をセットで契約できます。だから「実質再エネ100%」の達成と、CO2削減(Scope2)が同時に実現します。
これが取引先や投資家に「ちゃんとやってる会社」と評価される理由です。
制度アップデート
分割供給と小売営業指針(2024–2025)
2024年10月、契約の常識が変わった。
「既存の電力契約があるから、PPAは導入できない」——そう思っていませんか?
2024年10月1日、状況が一変しました。 分割供給制度が正式スタートしたんです。
これは何かというと、複数の小売事業者から同時に電気を買える制度。例えば、
- 再エネ電力をオフサイトPPAで50%調達
- 残り50%は既存の電力会社から購入
こんな柔軟な組み合わせができるようになりました。「いきなり100%再エネは無理」という会社でも、段階的に再エネ比率を上げていけるんです。
押さえておきたいポイント
- 供給者は2社まで(自己託送を含めて3社以上は不可)
- 各社の供給比率を事前に決める
- インバランスの責任分担を契約書に明記
- 説明義務が強化されたので、契約内容は必ず確認
表:分割供給で何が変わった?
項目 | 従来 | 分割供給(2024年10月~) |
---|---|---|
受付 | 原則停止 | 正式に開始 |
供給者数 | 2社まで | 2社まで |
対象 | 大口中心 | 中小企業もOK |
PPA活用 | ハードル高い | オフサイトPPA+既存契約の併用が簡単に |
方式の比較と選び方
(オンサイト/オフサイト/自己託送/VPPA)
「どれが一番いいの?」に答える比較表
フィジカルPPAの4つの方式、それぞれにメリット・デメリットがあります。「どれが最高」ではなく、「あなたの会社の状況に合うのはどれか」が重要です。
この表を見れば、自社に合った方式が見えてきます。
項目 | オンサイトPPA | オフサイトPPA | 自己託送 | バーチャルPPA |
---|---|---|---|---|
電力の受取り | 屋根から直接 | 系統経由で届く | 系統経由で届く | 物理供給なし |
環境価値 | 証書取得 | 証書取得 | 証書取得 | 証書のみ購入 |
初期費用 | ゼロ | ゼロ~小額 | 電源投資が必要 | ゼロ |
託送料金 | 不要 | 発生 | 発生 | 不要 |
価格式 | 固定が主流 | 固定/変動選択可 | 固定/市場連動 | 差金決済 |
契約年数 | 10~20年 | 10~15年 | 10~20年 | 5~15年 |
同時同量責任 | PPA事業者 | 小売事業者 | 自社 | 不要 |
こんな会社には、この方式が最適
オンサイトPPAが向いている会社
- 広い屋根や空き地がある工場・倉庫
- 初期費用を一切かけたくない
- 日中に電力使用が集中している(太陽光との相性抜群)
「設置場所はあるけど、何千万円も出せない…」という会社に最適です。第三者所有モデルなら、PPA事業者が設備を持ち、あなたは使った分だけ払う仕組みです。
オフサイトPPAが向いている会社
- 敷地内に電源を置けないオフィスビル
- 複数拠点に電力を供給したい
- 「需給管理は専門家に任せたい」と思っている
分割供給制度のスタートで、既存契約と併用しやすくなりました。「まずは30%だけ再エネに」といった段階導入も可能です。
関連記事リンク:オフサイトPPAとは
自己託送が向いている会社
- グループ会社に発電所がある(または開発予定)
- 議決権の過半数(50%超)を持つ関係会社がある
- 20年単位の長期で最もコストを抑えたい
「親会社が地方に太陽光発電所を持っている」「子会社の工場に風力がある」——こんな会社なら、自己託送が最も経済的です。小売マージンがない分、電気代を大きく下げられます。
バーチャルPPAが向いている会社
- 電力調達の柔軟性を最優先したい
- 海外展開などで物理供給が難しい
- 価格ヘッジ(市場価格変動リスクの回避)を重視
「証書だけ欲しい」「価格変動リスクだけ抑えたい」という明確な目的があるなら、バーチャルが合理的です。
出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA:日本の最新動向 2025年版』(VPPAの章)
価格とコスト設計
(TCOの内訳/固定・変動・キャップ&フロア/FIP併用)
「電気代」だけ見ていると、失敗する
「kWhあたり〇円です」——PPA事業者からこう言われて、即決していませんか?
実は、本当のコストはもっと複雑です。TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)で見ないと、後で「こんなに高くなるとは…」と後悔します。
フィジカルPPAのコスト構成
コスト項目 | 内容 | 変動要因 |
---|---|---|
PPA単価 | 発電事業者への支払い | 固定 or 市場連動 |
託送料金 | 系統使用料(オフサイト/自己託送) | 距離・電圧で変動 |
バランシング費用 | インバランス調整 | 需給ズレで変動 |
非化石証書 | 環境価値の購入 | 市場価格で変動 |
賦課金 | 再エネ賦課金(全需要家共通) | 年度ごとに変動 |
「PPA単価が安い!」と飛びついても、託送料金やバランシング費用が高ければ意味がありません。総額で比較してください。
出典:環境省「オフサイトコーポレートPPAについて」PDF「発電コスト/託送料金/バランシングコストへの分解を示した節」
電気料金を本気で安定させる3つの価格式
「市場価格が乱高下して、予算が立てられない」——そんな悩みを解決するのが、価格式の選び方です。
1. 固定価格型:予算管理を最優先したいあなたへ
- 契約期間中、kWhあたりの単価が一定
- メリット:変動リスクゼロ。財務部門が喜ぶ
- デメリット:市場価格が下がっても恩恵なし
- こんな会社に:「とにかく安定」を最優先する製造業
2. 変動価格型(インデックス連動):柔軟に対応したいあなたへ
- 市場価格(JEPXスポット平均など)に連動
- メリット:市場価格低下時にコスト削減
- デメリット:高騰時にコスト増
- こんな会社に:市場を見ながら調達したいエネルギー担当者がいる会社
3. キャップ&フロア型:いいとこ取りしたいあなたへ
- 市場連動だが、上限と下限を設定
- メリット:リスクを一定範囲に抑えつつ、市場メリットも享受
- デメリット:価格式がやや複雑
- こんな会社に:リスクヘッジと柔軟性のバランスを取りたい会社
さらに、JPX(日本取引所グループ)の電力先物市場を使えば、将来の価格変動リスクをヘッジできます。大手企業では既に活用が進んでいます。
出典:自然エネルギー財団「FIP×PPAの考え方」、JPX「電力先物」
非化石価値・証書の実務
(FIT/非FIT/再エネ指定/トラッキング)
「証書って何?」から始めよう
「電気を買えば、それで再エネ100%でしょう?」——残念ながら、違います。
電力と環境価値は別物です。フィジカルPPAで電気を買っても、証書を取得しないと「再エネ使用」と認められません。
証書の種類
証書 | 由来 | 特徴 |
---|---|---|
FIT非化石証書 | FIT電源 | 再エネ賦課金の一部が原資 |
非FIT非化石証書(再エネ指定) | 非FIT電源 | トラッキング情報付き |
J-クレジット | 再エネ・省エネプロジェクト | 別制度 |
フィジカルPPAでは、非FIT・再エネ指定の非化石証書を取得するケースが多く、「どの発電所から」が明確になります。これがESG報告書の信頼性を高めます。
調達方法
- JEPX市場で購入:年4回(2月・5月・8月・11月)に開催されるオークションで入札
- 相対取引:小売事業者が代理購入
- PPA契約に含める:電力料金と証書費用をセットで契約
重要な修正:記事では「月次開催」と書いていましたが、正しくは年4回です。
各オークション開催月の前月末までにトラッキング情報の割当申請が必要なので、スケジュール管理が重要になります。
出典:JEPX「非化石価値 市場情報」
もっと詳しく知りたい方は:非化石価値とは、トラッキング付非化石証書
トラッキング付証書で「どこの電気か」を証明
ESG報告書や温対法の報告では、証書を自社のどの事業所で使ったかを証明する必要があります。これがトラッキング付非化石証書の役割です。
トラッキングの手順
- JEPX取引システムで情報入力:証書購入時に需要場所の住所・法人情報を登録
- 証跡のダウンロード:「非化石証書利用証明」をシステムから取得
- トラッキング情報の確認:発電所名・電源種別・発電時期が記載される
注意点
- 証書の利用は発電時期と同一年度内(繰り越し不可)
- 分割供給で複数電源を使う場合、それぞれの証書を個別管理
- 小売事業者に代理購入を依頼する場合、契約書で実務の担当者を明記
これをしっかりやっておけば、会計監査や第三者認証(SBT、RE100など)でも自信を持って対応できます。
出典:JEPX「非化石価値 取引システム利用ガイド」、経済産業省非化石価値取引について(トラッキングの見直し等)
運用リスクと契約条項
(BG/インバランス/出力抑制/Change in Law)
インバランスで予算オーバーしないために
同時同量の話、覚えていますか?30分単位で需給を一致させるルールです。
ズレが生じるとインバランス料金が発生します。「ちょっとくらい大丈夫でしょ」と思っていると、年間で数百万円の差が出ることもあります。
インバランスを減らす対策
- 需要予測の精度向上:AI予測ツールで時間帯別の使用量を把握
- 蓄電池の併設:余剰電力を貯めて、不足時に使う
- ハイブリッド運用:PPAと市場調達を組み合わせて柔軟に補完
契約時には運用SLA(サービスレベル合意)を設定しましょう。例えば「月次で±5%以内」など、許容できるインバランス率を明記し、超過時の費用負担を決めておきます。
「誰が・どの範囲で」インバランスリスクを負うか——これを曖昧にしたまま契約すると、トラブルの元です。
出典:環境省・みずほリサーチ&テクノロジーズ 「『オフサイトコーポレートPPAについて(2025年2月更新版)』の「契約上のリスクと対応策」」
出力抑制・系統制約という「見えないリスク」
太陽光や風力には、出力抑制というリスクがあります。
これは何かというと、電力の需給バランスを保つため、送配電事業者が「発電を止めてください」と指令を出すこと。特に九州や北海道など、再エネ導入が進んだ地域で発生しやすくなっています。
出力抑制が起きると
- 発電量が計画より減少
- 需要家が受け取る電力が不足
- 不足分は市場や既存契約で補う必要があり、コスト増の可能性
系統制約も要注意です。送電線の容量不足や地域の系統混雑により、発電所からの送電が制限される現象です。
対策
- 複数の電源を組み合わせる(分散調達)
- 地域を分散させた電源選定
- 契約書で「出力抑制時の費用負担」を明記
さらに、容量市場の影響も考慮が必要です。2024年度から本格運用が始まり、発電設備の維持費用が電気料金に上乗せされるようになりました。長期契約では、この変動要因も織り込んでおきましょう。
出典:資源エネルギー庁「市場制度・容量等の最近の整理」
契約条項:未来の変化に備える3つの盾
長期契約では、「契約時には想定できなかった変化」が必ず起きます。法令が変わる、市場が激変する、天災が起きる——そんな時に役立つのが、この3つの条項です。
1. Change in Law(法令変更条項)
「10年後に新しい環境税が導入された」「容量市場のルールが変わった」——こんな時、誰が追加コストを負担するか、契約書に書いてありますか?
典型例
- 容量市場の新設による追加負担
- 再エネ賦課金の大幅変更
- カーボンプライシング制度の導入
契約書で明記すべきこと
- どの範囲の法令変更を対象とするか
- 費用負担の分担方法
- 価格見直しの手続き
2. 価格見直し条項(リオープナー)
市場環境が急変した時、価格を再交渉できる条項です。
「契約時は1kWh=10円だったのに、市場価格が20円になった」——こんな時、固定価格のままでは発電事業者が損をします。逆に市場価格が5円に下がれば、需要家が損をします。
価格見直し条項があれば、一定条件下で価格を見直せます。
- 市場価格が想定の2倍以上になった場合
- インフレ率が年5%を超えた場合
- 燃料費が大幅に変動した場合
注意:「リオープナー」は英米法の用語で、日本の電力業界では「価格見直し条項」という呼び方が一般的です。契約書では両方を併記すると分かりやすくなります。
3. フォースマジュール(不可抗力条項)
地震、台風、パンデミック——誰のせいでもない事態が起きた時、責任を免れる条項です。
対象となる事象
- 天災地変(地震、台風、洪水)
- 戦争、テロ
- 政府命令
- パンデミック(新型コロナの経験から明示的に含める実務が増加)
契約書で明記すべきこと
- 不可抗力事由の定義
- 通知義務(何日以内に相手に伝えるか)
- 契約上の義務の取り扱い
- 長期化した場合の契約解除権
専門的な内容なので、エネルギー法に詳しい弁護士のレビューを受けることを強くおすすめします。
導入ステップとRFPチェックリスト
6ステップで、確実に導入する
「何から始めればいいか分からない」——そんなあなたに、導入の全体像をお見せします。
通常、計画から運用開始まで6ヶ月~1年かかります。焦らず、確実に進めましょう。
ステップ1:要件定義(1ヶ月)
- 目的を明確に:電気代削減?CO2削減?ESG開示?
- 電力需要プロファイルを分析(時間帯別・月別の使用量)
- 予算とリスク許容度を設定
ステップ2:方式選定とRFP発行(2ヶ月)
- オンサイト・オフサイト・自己託送から選択
- 3~5社のPPA事業者・小売事業者にRFP(提案依頼)を発行
- 提案内容を比較(価格、実績、サービス体制)
ステップ3:価格式の決定(1ヶ月)
- 固定/変動/キャップ&フロアから選択
- 託送料金、バランシング費用を含めたTCO試算
- 先物ヘッジやFIP併用を検討
ステップ4:証書要件の確認(1ヶ月)
- 非化石証書の種類(FIT/非FIT・再エネ指定)
- トラッキング付証書の実務フロー
- 代理購入の場合の費用負担と責任範囲
ステップ5:契約締結(2ヶ月)
- 契約書のレビュー(Change in Law、価格見直し条項など)
- 分割供給対応の確認(既存契約との関係整理)
- 小売営業指針に基づく説明義務の履行確認
ステップ6:運用開始(継続的)
- 発電・供給開始
- KPI(同時同量達成率、インバランス率)の定期確認
- 年次の証書取得と利用証明のダウンロード
社内の関連部門(調達、環境、経理、法務)で役割分担を明確にすることが成功の鍵です。
RFPで「これだけは確認」チェックリスト
RFP(提案依頼書)の質が、導入の成否を左右します。このチェックリストを使って、提案内容を比較してください。
□ 需要プロファイル
- 30分単位の年間需要データを提供しているか
- 季節変動・曜日変動を考慮した発電計画があるか
- インバランス発生率の予測が示されているか
□ 証書要件
- 非化石証書の種類(FIT/非FIT)が明記されているか
- トラッキング付証書の実務を誰が担当するか明確か
- 証書費用は固定か市場連動か
□ 価格式
- 固定/変動/キャップ&フロアのオプションがあるか
- 託送料金・バランシング費用が含まれたTCOが試算されているか
- 賦課金の扱いが明記されているか
□ 分割供給対応
- 既存の電力契約との併用が可能か(2社まで)
- 供給比率の調整方法が明確か
- 2024年10月以降の制度に対応しているか
□ 契約条項
- Change in Law条項が含まれているか
- 価格見直し条項(リオープナー)の条件が明記されているか
- 出力抑制時の費用負担が明確か
□ サポート体制
- 需給管理のモニタリングツール(ダッシュボード)があるか
- 緊急時の連絡体制が整備されているか
- 年次の運用報告と改善提案があるか
このチェックリストをもとに比較表を作れば、自社に最適なPPA事業者が見えてきます。
出典:経済産業省「電力の小売営業に関する指針(2025/3/31改定)
まとめ
フィジカルPPAは、電気料金の安定とCO2削減を同時に実現できる、企業にとって心強い選択肢です。
バーチャルPPAとの違いを理解し、同時同量・託送・証書の仕組みを押さえ、そして2024年10月に始まった分割供給制度を活用すれば、契約トラブルや監査対応でも強い基盤が築けます。
導入の成否を分けるのは、RFPの質です。需要プロファイル、証書要件、価格式、Change in Law条項——本記事のチェックリストをそのまま使えば、手間を抑えながら確実な導入が可能です。
「うちの会社でも、できそうだ」——そう思えたなら、最初の一歩を踏み出してください。持続可能な社会への貢献と企業価値の向上、両方を手に入れましょう。
FAQ
Q1. オフサイトのフィジカルPPAで、本当に電気代は安定しますか?
A. はい、安定します。鍵は価格式の設計です。
固定価格型を選べば、契約期間中のkWh単価が一定となり、市場価格の変動リスクをゼロにできます。キャップ&フロア型(上下限設定)なら、変動リスクを抑えつつ市場メリットも享受できます。
ただし、電気料金にはPPA単価だけでなく、託送料金・バランシング費用・賦課金も含まれます。TCO(総保有コスト)全体で設計することが、安定化の前提です。
RFPで総額を比較し、長期の財務計画に組み込みましょう。
Q2. 2024年10月の分割供給制度で、契約はどう変わりましたか?
A. 「再エネと既存契約の併用」が簡単になりました。
分割供給制度により、複数の小売事業者から同時に電気を買えるようになりました(2社まで)。例えば、
- 再エネ電力をオフサイトPPAで50%調達
- 残り50%は既存の電力会社から購入
こんな組み合わせができます。「いきなり100%再エネは無理」という会社でも、段階的に再エネ比率を上げていけます。
ただし、需要家保護の観点から説明義務が強化されています。供給比率や責任分担、証書の扱いを契約書で明確にすることが求められます。新規導入や契約更新時は、資源エネルギー庁の「分割供給Q&A」を必ず確認してください。
出典:資源エネルギー庁「分割供給Q&A」、経済産業省「小売営業指針(2025/3/31改定)」
【業界最短4年の契約期間】工事費のみで始める太陽光発電 ソーラーメイトみらい
ソーラーメイトみらいは、太陽光発電を工事費のみで導入できるサービスです。
契約期間中、昼間の電気代は大手電力会社より安く、システムを購入するより手軽でお得に太陽光をスタートできます!