2023年12月15日
電力自由化の仕組みと選び方|太陽光パネルがある家庭必見2025
電力自由化の目的と仕組みをやさしく図解で解説。料金の見方と乗り換え手順、リスク回避、2025年の制度動向まで一気に理解できます。太陽光や蓄電池の活用ポイントも併せて紹介します。安心して選べる判断基準も用意しました。初めてでも迷いません。
目次
電力自由化で「電気代が安くなる」と聞いたことはありませんか?
2016年から始まった電力自由化によって、家庭でも電力会社を自由に選べるようになりました。でも「いまだに仕組みがよくわからない」「乗り換えて大丈夫?」と不安な方も多いはず。
この記事では、電力自由化の仕組みを初心者にもわかりやすく解説します。
要点:電力自由化の全体像
電力自由化とは、電気を売る会社を消費者が自由に選べる制度のこと。2016年4月から家庭向けにスタートし、現在では多数の事業者が電気を販売しています。
ポイントは次の3つです。
- 送配電は今まで通り:電線や電柱は地域の電力会社が管理。品質や安定性は変わりません。
- 料金プランが選べる:昼間安い・夜間安い・ポイント還元など、生活スタイルに合わせて選択可能。
- 手続きは簡単:申し込むだけで、今の電力会社の解約は新しい会社が代行。
何が自由化?
自由化されたのは「小売」の部分です。
電気は「発電→送配電→小売」の3段階で家庭に届きますが、このうち「誰から電気を買うか」を選べるようになりました。送配電(電線・電柱)は地域の電力会社が引き続き管理するため、どの会社を選んでも品質は同じです。
家庭は何が変わる?
家庭で変わったのは、主に次の3点です。
- 料金プランの選択肢が増えた:ガス会社、通信会社、再エネ専門など多様な事業者が参入
- セット割引やポイント還元:携帯とのセット、ポイント付与など付加サービスが充実
- 環境配慮の選択:再エネ100%プランなど、CO₂排出を抑えたい方向けのメニューも登場
2025年電力自由化の状況
2025年時点で、電力自由化は定着期に入っています。
- 2020年に送配電部門の法的分離が完了し、中立性が確保されました。
- 市場価格の高騰や一部事業者の倒産など、トラブル事例も増加。慎重な選択が求められる時期です。
最新の事業者情報は公式一覧でご確認ください。
年表でわかる変遷
電力自由化は一気に進んだわけではなく、約20年かけて段階的に拡大してきました。
| 時期 | 対象 | ポイント |
|---|---|---|
| 2000年 | 特別高圧(大規模工場) | 自由化スタート |
| 2004~05年 | 高圧(中小ビル・工場) | 段階的に拡大 |
| 2016年4月 | 低圧(家庭・商店) | 小売全面自由化 |
| 2020年4月 | 全体 | 送配電部門の法的分離 |
2000–05年(段階拡大)
2000年、まず特別高圧(大規模工場など、契約電力2,000kW以上)から自由化がスタート。その後、2004年に500kW以上、2005年に50kW以上へと段階的に拡大しました。
2016年(低圧まで)
2016年4月、家庭向け(低圧)まで自由化が完了。これが「小売全面自由化」です。
一般家庭でも電力会社を選べるようになり、ガス会社や通信会社など異業種が続々参入。料金プランの選択肢が一気に増えました。
2020–25年(運用更新)
2020年4月、送配電部門の法的分離が実施。発電・小売と送配電の会社が完全に別組織となり、公平な競争環境が整いました。
2022年以降は燃料価格高騰や市場価格の急上昇で電気料金の値上げが相次ぎ、一部の新電力事業者は撤退。「安さだけで選ぶリスク」も認識されるようになっています。
仕組み:発電・送配電・小売について
「電力会社を変えたら停電しやすくなる?」そんな心配は不要です。
電気は次の3つの段階で家庭に届きます。
- 発電:火力・水力・太陽光などで電気を作る
- 送配電:電線・変電所を通じて電気を届ける(地域の電力会社が担当)
- 小売:契約・請求を行う(自由に選べる)
このうち自由化されたのは③の「小売」だけ。②送配電は今も地域独占のまま公平に運用されています。
送配電は共通
電線や電柱は、地域の電力会社が管理しています。
たとえば東京なら東京電力パワーグリッド、関西なら関西電力送配電が、すべての電力会社の電気を公平に運んでいます。これを「託送」と呼びます。
どの小売電気事業者と契約しても、電気の通り道(送配電網)は同じです。
品質は同じ
電気の品質は契約先で変わりません。送配電網は共通で、すべての電力会社の電気が混ざって流れているからです。
そのため、停電の頻度や電圧・周波数も一定。契約先が倒産しても、送配電は止まりません。
電気料金の基本
「電気代が高くなった」と感じていませんか?
電気料金は、小売会社の設定だけで決まるわけではありません。料金の内訳を理解すると、どこで差がつくのか、何が値上げの原因なのかがクリアに見えてきます。
電気料金は大きく分けて次の3つで構成されています。
- 電力量料金:使った電気の量に応じて変わる部分(小売会社で差がつく)
- 託送料金:送配電網の利用料(どの会社でも同じ)
- 再エネ賦課金:再生可能エネルギーの普及を支える負担金(全国一律)
このうち、小売会社によって違いが出るのは「電力量料金」と「基本料金」の部分だけ。託送料金と再エネ賦課金は、どの会社を選んでも変わりません。
規制料金 vs 自由料金
電気料金には、規制料金と自由料金という2つの設定方式があります。
規制料金は、大手電力会社が提供する従来プラン。国の認可を受けた「総括原価方式」で計算され、値上げには国の審査が必要です。
一方、自由料金は新電力や大手の新プランで採用されています。事業者が自由に価格を設定でき、認可は不要です。市場の競争原理で価格が決まるため、安いプランも多い反面、値上げのタイミングや幅も事業者次第です。
託送料金・再エネ賦課金
電気料金には、どの会社と契約しても変わらない費用があります。
託送料金は、電線や変電所といった送配電設備を使うための利用料。地域の送配電会社に支払うもので、小売会社が異なっても金額は同じです。一般家庭の場合、電気代全体の約3割前後を占めます。
再エネ賦課金は、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及を支えるための負担金。全国一律で1kWhあたり数円程度が上乗せされます(2024年度は3.49円/kWh、2025年度は3.98円/kWh)。
この2つは国や広域機関が決める共通費用のため、小売会社を変えても金額は変わりません。
市場連動の注意
最近増えているのが市場連動型プラン。電気代が市場価格に連動して変動する仕組みです。
市場価格が安いときは電気代も安くなりますが、高騰すると一気に跳ね上がるリスクがあります。
実際、2021年1月の寒波時には市場価格が通常の10倍以上に急騰。市場連動プランの契約者の中には、月額電気代が数万円に達したケースも報告されました。
市場連動型を選ぶなら、次の点を必ず確認してください。
- 上限設定の有無:価格高騰時の上限があるか
- 通知タイミング:価格変動をいつ、どう知らせてくれるか
- 見直し頻度:料金単価の更新サイクル(毎月・毎日など)
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電力会社の乗り換え手続き
「手続きが面倒そう」「停電したらどうしよう」
そんな不安から、乗り換えを躊躇していませんか?実は電力会社の切り替えは、思っているより簡単で安全です。
手続きの流れは、わずか3ステップ
| ステップ | 内容 | 所要時間 | 費用 |
|---|---|---|---|
| ① 準備 | 検針票で契約情報を確認 | 5分 | 無料 |
| ② 申込 | 新しい会社に申し込む | 10~15分 | 無料 |
| ③ 開通 | 自動的に切り替わる | 2~4週間後 | 無料 |
準備(検針票)
まずは検針票(電気ご使用量のお知らせ)を手元に用意しましょう。
検針票には、乗り換えに必要な情報がすべて記載されています。
- 契約容量(30A、40Aなど)
- 月間使用量(kWh)
- お客様番号・供給地点特定番号
これらの情報をもとに、新しい電力会社のサイトで料金シミュレーションができます。
申込(代行解約)
新しい電力会社への申込は、Webサイトや電話で簡単にできます。
重要なポイント:現在の電力会社への解約連絡は不要です。
新しい電力会社が代行して解約手続きを進めてくれるため、あなたがやることは新しい会社への申込だけ。二重契約や空白期間の心配もありません。
開通(原則停電なし)
開通日になると、自動的に新しい電力会社に切り替わります。
工事や立ち会いは原則不要。スマートメーター未設置の場合のみ交換工事がありますが、15分程度で完了し、原則として停電は起こりません(※交換作業時に一時的な停電の可能性があります)。
開通までの時間は、申込から2~4週間程度が目安。即日切替はできませんが、手続きそのものは驚くほどシンプルです。
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市場のしくみ(電気代に影響する)
電力市場には、主に3つの仕組みがあります。
- JEPX(スポット市場):電気の卸売価格が決まる場所。市場連動型プランの料金に直接影響
- 容量市場:将来の電力供給力を確保する仕組み。料金に上乗せされる
- 非化石価値市場:環境価値(CO₂ゼロ)を取引する場
このうち家庭の電気代に直接影響するのは「JEPX」です。市場連動型プランを選ぶなら、この仕組みを知っておくと安心できます。
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トラブル回避ガイド
電力自由化には、メリットだけでなく注意すべきポイントもあります。
実際に起きたトラブル事例を知っておけば、失敗のリスクを最小限に抑えられます。
| トラブル | 対処法 | 料金への影響 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 事業者が倒産 | 最終保障供給に自動移行 | 約1.2倍に | 早めの再契約を |
| 市場価格の高騰 | 上限設定の確認 | 10倍以上の可能性 | 市場連動型は慎重に |
| 契約期間の縛り | 契約前に確認 | 違約金数千円~ | 短期解約は損 |
倒産→最終保障供給
「契約していた電力会社が倒産したらどうなるの?」
安心してください。電気は止まりません。
電力会社が事業を停止しても、「最終保障供給」という制度があります。これは地域の送配電会社が、一時的に電気を供給してくれるセーフティーネットです。
ただし料金は標準メニューの約1.2倍相当で割高。できるだけ早く新しい電力会社を探すことをおすすめします。
値上げ・高騰の備え
自由料金プランでは、事業者が自由に価格を変更できるため、燃料高騰や市場価格の上昇を理由に値上げするケースがあります。
値上げリスクへの備え
- 定期的な見直し:年に1~2回、他社プランと比較する
- 上限設定の確認:市場連動型なら、価格高騰時の上限があるか確認
- 通知方法の把握:値上げ時にどう知らせてくれるか(メール・郵送など)
契約の落とし穴
契約時に見落としがちなのが、期間縛りと違約金です。
一部のプランには、契約期間(1年・2年など)や期間内解約時の違約金(数千円~1万円程度)が設定されています。「安い」と思って契約しても、短期間で乗り換えると違約金で損をするケースがあります。
契約前に必ず確認してください。
- 最低利用期間の有無
- 解約時の違約金
- 特典の受け取り条件(継続利用が条件など)
2025年現在の電力制度
電力自由化は「終わった制度」ではありません。2025年現在も、制度は進化し続けています。
資源エネルギー庁では、定期的に「制度検討作業部会」を開催し、電力市場の課題や改善策を議論しています。
2025年の主な検討テーマ
- 供給力の確保:再エネ増加に伴う調整力の必要性
- 市場設計の見直し:容量市場や需給調整市場の運用改善
- 消費者保護:不適切な営業行為の防止
- 最新の事業者情報
- 2025年1月時点で、登録小売電気事業者は750社以上。大手・中小さまざまな事業者が競争中です。最新の事業者情報は登録小売電気事業者一覧でご確認ください。
※事業者数はよく変動するので、参考程度
太陽光・蓄電池ユーザーの最適解
太陽光発電や蓄電池を設置している家庭なら、電力会社選びでさらにメリットを引き出せます。
卒FITを迎えた方の売電先
FIT(固定価格買取制度)の期間が終了した「卒FIT」の太陽光発電。買取価格が大幅に下がるため、売電先の見直しが重要です。
大手電力の卒FIT買取価格は、1kWhあたり7~10円程度。一方、新電力の中には12~15円程度で買い取ってくれる事業者もあります。
卒FITを迎えた方の選択肢
- 高単価の買取業者に乗り換え:売電収入を増やす
- 蓄電池を導入して自家消費:電気代を減らす
- 環境価値を高く売る:非化石証書として付加価値をつける
蓄電池×料金プラン
蓄電池を持っている家庭なら、時間帯別料金プランとの組み合わせが効果的です。
基本的な戦略
- 深夜の安い電気を蓄電池に貯める
- 昼間の高い時間帯に蓄電池から放電して使う
- 太陽光発電は自家消費を優先、余りは売電
これにより、電気代を大幅に削減できます。特に「昼間高い・夜間安い」プランを選べば、月の電気代を30~50%程度抑えられるケースも。
環境価値の活用
太陽光発電で作った電気には、環境価値(CO₂ゼロの価値)があります。
この環境価値を「非化石証書」として切り離し、別途販売できる仕組みが整ってきました。卒FITを迎えた太陽光ユーザーなら、電気本体と環境価値を分けて売ることで、収入を最大化できる可能性があります。
環境価値を使うことで、電気代を抑えながら環境貢献もできます。
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まとめ
電力自由化は、電気を「自分で選べる時代」をつくりました。送配電の仕組みや料金制度はこれまで通り安全に運用されつつ、家庭や事業者はライフスタイルに合った電力会社を自由に選べます。
再エネや蓄電池を活用すれば、電気代の最適化や環境貢献も同時に可能です。まずは自宅の電気使用量を把握し、信頼できる事業者を比較することから始めてみてください。
電力自由化の仕組みを理解したら、次は行動です。
再検索の手間をかけず、今すぐできることを一括でまとめました。
- プランを選ぶ
検針票を見て、今の使用量・契約容量を確認。自分の使い方に合うプランを比較サイトでシミュレーション。時間帯別・市場連動型・セット割など、ライフスタイルに最適なものを選んでください。 - 条件を読む
契約期間・違約金・特典の条件を必ずチェック。「安い」だけで選ぶと、後で後悔することも。特に市場連動型なら、価格高騰時の上限設定があるか確認してください。 - 見直しのサイクルを決める
一度乗り換えたら終わりではありません。年に1~2回、他社プランと比較する習慣をつけることで、常に最適な状態を保てます。値上げや新プランの登場に気づくためにも、定期的な見直しが大切です。
FAQ
最後に、よくある質問にまとめて回答します。
賃貸でも切替できる?
できます。
賃貸住宅でも、契約名義が自分なら電力会社の切り替えは自由です。大家さんや管理会社の許可も不要。ただし、建物全体で一括受電契約をしている場合は切り替えできないので、事前に確認してください。
電力会社の切り替えで停電する?
原則、停電しません。
スマートメーターの交換工事が必要な場合でも、15分程度で完了し、停電はほぼ起こりません(※交換作業時に一時的な停電の可能性があります)。
工事の立ち会いも不要です。切り替え日になると自動的に新しい会社に変わり、電気が止まることはありません。
事業者が倒産したら?
電気は止まりません。
最終保障供給という制度があり、地域の送配電会社が自動的に電気を供給してくれます。ただし料金は標準メニューの約1.2倍相当で割高なので、できるだけ早く新しい会社を探すことをおすすめします。申込は不要で、自動的に切り替わります。
市場連動型プランは危険?
リスクを理解すれば大丈夫です。
市場連動型プランは、市場価格が安いときは電気代も安くなりますが、高騰時には10倍以上に跳ね上がる可能性があります。
2021年1月には実際に月額電気代が数万円に達したケースも。契約前に価格上限の有無と通知タイミングを必ず確認してください。太陽光発電がある家庭なら、昼間の自家消費で高騰リスクを下げられます。
どの会社が安い?
使い方によって変わります。
一人暮らしなら基本料金ゼロのプラン、ファミリーなら使用量に応じた従量制プランが合うことが多いです。比較サイトで、自分の検針票をもとにシミュレーションするのが確実。安さだけでなく、契約期間や違約金、サービス内容も含めて総合的に判断してください。
【業界最短4年の契約期間】工事費のみで始める太陽光発電 ソーラーメイトみらい
ソーラーメイトみらいは、太陽光発電を工事費のみで導入できるサービスです。
契約期間中、昼間の電気代は大手電力会社より安く、システムを購入するより手軽でお得に太陽光をスタートできます!