
- 蓄電池
- 2023.07.20
2025年07月18日
【この記事はどんな人の役に立つか】
この記事は、太陽光発電のFIT制度(固定価格買取制度)の10年間が終了間近か、または既に終了した住宅用太陽光発電システム所有者に向けた実用的なガイドです。売電価格が大幅に下がって困っている今、どうすれば最も経済的に有効活用できるのか?を切り口に難しい専門用語を使わず、家計への具体的な影響と対策を分かりやすく解説します。
これから家を建てる際に太陽光発電の搭載を検討している方にとっても、将来直面する「卒FIT問題」を事前に理解し、長期的な資金計画を立てる上で役立つ情報をお届けします。
目次
2025年現在、住宅用太陽光発電を設置した家庭で、FIT制度が終了する世帯が急激に増加しています。2009年から開始された太陽光発電の余剰電力買取制度により、10年間にわたって家計にとって魅力的な価格で電気を売ることができていた家庭が、次々と「卒FIT(そつフィット)」を迎えているためです。
2019年で約53万件、2025年にも約18万件が卒FITを迎える予定であり、累計で100万件を超える家庭が卒FIT後の電気料金の見直しを迫られています。
この記事では卒FITが家計に与える影響と、家族にとって最もお得な選択肢を紹介しています。新築時に太陽光発電を検討している方も、10年後の家計設計の参考にしてください。
FIT制度(フィット制度)とは、国によって2012年から開始された優遇制度で、簡単に言うと「太陽光で作った電気を高く買い取ります」という制度です。正式には「固定価格買取制度」と呼ばれ、住宅用太陽光発電(10kW未満)の場合、発電した余った電力を、10年間にわたって固定価格で電力会社が買い取ることを国が約束しています。
この制度のおかげで、2012年度に太陽光発電を設置した家庭は、1kWhあたり42円という非常に高い価格で電気を売ることができました。当時の一般的な電気料金が20円台だったことを考えると、「電気を買うより売った方がお得」という状況だったのです。
しかしこの優遇期間は永続的ではありませんでした。制度開始以降、年々売電価格は一気に下落します。下記は近年の買取価格の推移を表した表です。
これは決して制度のせいではなく、太陽光発電が普及した結果、設置費用が下がったため、国の手厚い支援が不要になってきたということです。ただし、家計への影響は深刻です。
太陽光発電5kWを設置した一般的な家庭を例に、卒FIT前後の家計への影響を具体的な金額で比較してみましょう。何も対策をしない場合と対策を講じた場合では、年間で大きな差が生まれることが分かります。
卒FIT後の対応策は、大きく分けて3つあります。どれを選ぶかによって、今後10年間の家計の収支が大きく変わってきます。
最もシンプルな方法は、これまでと同じように余った電気を電力会社に売り続けることです。ただし、売り先と価格条件は大きく変わります。
大手電力会社での売電
従来の東京電力や関西電力などの大手電力会社でも売電を続けられます。大手の魅力は経営の安定性です。ただし新電力会社に比べると売電価格は低いといえます。
新電力会社での売電
最近では、より高い買取価格の新しい電力会社も登場しています。ただし買取プランの種類や会社の信頼性、キャンペーン期間や契約条件を事前に確認することが大切です。
現在最も注目されているのが、発電した電力を自宅で使う「自家消費」という選択肢です。太陽光は昼間に発電されるため、その間にたくさん電気を使用して売電を控える、という考え方になります。
なぜ自家消費がお得なのか?
現状では電力会社から買う電気料金と売電価格に大きく差があるためです。
つまり安い買取価格で売るより、電気の購入を減らす方がお得になるという計算です。
自家消費率を高める手段って?
後述する蓄電池以外で自家消費を増やす方法としては以下の利用も有効です。
エコキュートや電気自動車に貯めた電気を家庭で使うためのV2Hは、蓄電池より初期費用が比較的低く、導入することで自家消費率を高められるのが魅力です。
特にエコキュートは少ない電力で効率的にお湯を沸かすため、ガス給湯器や電気温水器よりも光熱費を抑えることができます。ライフスタイルに合わせて段階的に取り入れることで、無理なく卒FIT対策を始められます。
最も効果的な方法ですが、初期費用がかかるのが蓄電池の導入です。昼間に発電した電気を貯めて、夜間や雨の日にも自家消費できるようになることは、太陽光発電システムをさらに有効に使えます。
蓄電池導入を検討する際は、10年間の総合的な経済効果で判断することが重要です。初期費用は高額ですが、毎月の電気代削減効果と災害時の安心感を総合的に考慮しましょう。特に在宅時間が長い家庭や、停電への備えを重視する家庭では、満足度がより高くなる傾向があります。
在宅ワークが多い家庭と日中不在がちの家庭で比較してみましょう。
家庭構成:夫婦共働き(在宅ワーク多め)+小学生、太陽光発電5kW
電気使用パターン:昼間も家にいることが多く、一日中電気を使用。
月々の家計への影響比較
売電収入を考慮した上での「電気に関する家計の実際の出費」を表しています。上記のケースでは、蓄電池導入により売電収入は減るものの電気代がより大幅に下がるため、結果的に実質負担額が月3,000円軽減されるということを意味します。
家庭構成:夫婦共働き(外勤)+中学生、太陽光発電4kW
電気使用パターン:平日昼間は電気をあまり使わず、夕方以降に集中。
月々の家計への影響比較
この場合の「実質負担」も電気代から売電収入を差し引いた、電気に関する家計の実質的な支出額を指しています。 売電収入が3,000円増加(7,000円→10,000円)することで、実質負担が月3,000円軽減されるため、この家庭では自家消費よりも「売電価格の高い新電力への切り替え」が最も効果的な卒FIT対策となります。
新たな売電先を検討する場合の、信頼できる会社の選び方をご紹介します。
1. 会社の継続性 電力業界は変動が激しく、突然サービスを終了する会社もあります。必ずウェブサイトをチェックし、設立年数や資本金、親会社の有無などの信頼性を確認しましょう。
2. 契約条件の透明性
3. サポート体制
これらのポイントを総合的に判断し、単純に売電価格が高いだけでなく、長期的に安心して取引できる信頼性の高い会社を選ぶことが重要です。契約前には必ず複数社を比較検討し、不明な点は事前に確認しておきましょう。
蓄電池に興味があるけれど、「高額だし、本当に元が取れるの?」と不安な方向けに、より実用的な情報をお届けします。
蓄電池選びで最も重要なのは、家庭に適したサイズ(容量)の選択です。大きすぎると費用面で無駄が生じたり、小さすぎても効果が薄くなります。
簡単な計算方法太陽光発電5kWの場合:
ただし、家庭の電気使用パターンや在宅時間の長さによって最適な容量は変わります。日中に在宅することが多い場合は余剰電力が少なくなり、逆に日中不在がちな家庭では余剰電力が増える傾向があります。まずは数ヶ月間の電気使用量を確認し、ライフスタイルに合った容量を選ぶことが重要です。
家族構成や予算に応じたおすすめメーカー
コストパフォーマンス重視:ニチコン
機能性重視:シャープ
長期保証重視:長州産業
設置場所を選ばない:パナソニック
※価格は2025年7月時点:編集部調べ
蓄電池の初期費用は補助金を活用することで大幅に削減できます。ただしすでに締め切りとなった補助金もあるので、まだ期限があるからと静観せず、導入で補助金を受けたい場合は早めに行動を起こしましょう。
国の補助金(2025年)
自治体の補助金(例)
補助金活用のポイント
卒FIT後に蓄電池を導入したAさんとBさんの成功・失敗例を紹介します。
Aさん(会社員・家族3人)の場合
結果
Aさんのコメント
「蓄電池が高額で最初は迷いましたが、台風による停電時も蓄電地の稼働で電力を保つことができ、家族の安心も買えたと思っています。また毎月の電気代明細を見るのが楽しみになるほど、電気代を削減することができました」
Bさん(会社員・家族4人)の場合
問題点
Bさんのコメント
「当初、買取価格の高さだけで決めたのですが、どうやら期間限定だったらしく。契約書をもっとしっかり読むべきだったと反省しています。卒FIT後の買取については、安定性も重要だと痛感しています」
電気使用量は検針票で過去1年分を確認し、日中の在宅時間も把握しましょう。卒FIT後に蓄電池を導入した場合と、新電力に契約を切り替えた場合、今のままの売電契約を維持した場合の10年間の総コストを比較し、さらには国と自治体の補助金制度を早めに調査し申請を実行します。
事業者選びでは卒FIT後の蓄電池導入について、価格面だけでなく、デメリットも含めて説明してくれる事業者を複数社から選びましょう。
卒FIT対策は、家庭の状況によって最適解が大きく異なります。重要なのは、目先の価格だけでなく、家族のライフスタイルと将来設計に合った選択をすることです。
家族タイプ別の最適な選択肢としては、
共働きで昼間不在がちな家庭 → 余剰電力をより有利な価格で売電するために新電力への切り替えを検討
在宅ワークや小さなお子さんがいる家庭 → 蓄電池導入で光熱費の大幅削減を検討
災害への備えを重視する家庭 → 蓄電池で安心と経済性の両立を検討
初期費用を抑えたい家庭 → 最初は太陽光発電だけ、後付けで蓄電池導入を検討
以上を参考に卒FIT後も見据えた太陽光発電の導入や蓄電池導入を検討してみてください。
卒FIT対策は一度決めると長期間にわたって家計に影響を与えます。この記事の情報を参考に、あなたの家族にとって最適な選択を見つけてください。より詳しい相談が必要な場合は、住宅用太陽光発電システムの専門知識を持つ信頼できる事業者への相談をおすすめします。卒FIT後の新しい電力会社をお探しの方にはキューエネスでんきの市場連動型プランもおすすめです。
すでに卒FITを迎え、蓄電池導入を検討される場合は、Q.READYなどの専門的なサービスを活用することで、より精密なシミュレーションと最適な製品選定が可能になります。どちらの場合も未来を見据えた賢い卒FIT対策を実現しましょう。
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