2025年07月07日

卒FIT後の蓄電池導入のデメリットを検証!後悔しない選び方とは?
【この記事はどんな人の役に立つか】
この記事は、新築住宅で太陽光発電システムの導入を検討している方、または既に太陽光発電を設置済みで、固定価格買取制度(FIT)の期間満了が近づいている方(卒FITの方)に向けた実践型ガイドです。
「売電価格が下がるなら蓄電池を付けた方がよいのでは」と考えているものの、高額な設備投資で失敗したくない方に向けた内容となっています。
この記事を読むことで、蓄電池導入のメリットだけでなくデメリットもしっかり理解し、ご家庭の状況に応じた蓄電池選びができるようになります。また蓄電池以外の選択肢も含めて、卒FIT後の最適な電力活用方法を見つけるヒントを紹介します。
目次
蓄電池導入する卒FITの方が増加中
卒FIT家庭で特に関心が高い理由
FIT制度が始まって10年以上が経過し、2019年から本格的に「卒FIT」を迎える家庭が急増しています。売電価格が従来の48円/kWhから8~11円/kWhまで大幅に下落することで、「今まで通り売電を続けるより、蓄電池を導入して自家消費した方が得になるのでは?」と考える方が増えているのです。 実際に、卒FIT対象者の約54%が「蓄電池などで自家消費」を選択していることが各種調査で明らかになっており、蓄電池市場も急拡大を続けています。
卒FIT後の蓄電池導入のデメリットとは

デメリット1. 高い初期費用と回収期間の長さ
状況によってデメリットとなりえるのはやはり初期費用の高さです。一般的な家庭用蓄電池(容量4〜7kWh)でも、本体価格だけで80万円〜150万円、工事費込みだと130万円〜180万円程度かかります。大容量タイプ(10kWh以上)なら200万円を超えることも珍しくありません。 「月々の電気代が安くなるから大丈夫」と考えがちですが、卒FIT後に蓄電池を導入すれば自家消費を増やせるとはいえ、回収までには思った以上の時間がかかるのが現実です。信頼性の高いシミュレーション専門機関の分析によると、現実的な蓄電池の回収期間は15年から20年程度が目安とされています。 一例として月8,000円の電気代削減効果があったとしても、180万円の初期費用を回収するには約19年かかる計算になります。太陽光発電システムを設置している家庭では確実に電気代削減効果は期待できますが、短期間での大幅な削減を期待する場合は、高い初期費用はデメリットになるでしょう。
デメリット2. 蓄電池の寿命と更新時の費用
蓄電池は長期間使用できる設備ですが、他の家電製品と同様に寿命があります。リチウムイオン電池の一般的な寿命は10〜15年程度で、充放電を繰り返すうちに徐々に容量が減少していく特性があります。仕方ないこととはいえ、デメリットと感じられるでしょう。 知っておきたいのは、設置から5年程度で初期容量の90%程度、また10年で80%程度まで性能が変化することです。これは蓄電池の特性上避けられないもので、当初の計算通りの経済効果は時間とともに緩やかに変化していきます。変換効率(電気をためたり出したりする際の効率)も同様に変化するため、年数が経つにつれて節約効果は少しずつ調整されていきます。 卒FIT対象のご家庭の場合、太陽光パネル自体も10年程度経過しているケースが多く、パネルとのバランスを考慮した運用計画を立てることが重要になります。15年後には蓄電池の更新を検討する時期になりますが、その頃には技術進歩により、より高性能で価格も改善された製品が選択できる可能性が高いでしょう。ただし、更新時にはある程度の費用が必要になることも、長期的な計画として考慮しておきましょう。
デメリットである蓄電池の劣化を抑える方法はある蓄電池の劣化を最小限に抑えるためには、使用環境と充放電パターンが重要です。
温度による劣化対策高温環境は蓄電池の大敵です。設置場所の年間平均温度が25℃を超える環境では、寿命が短くなる傾向があります。直射日光が当たる場所や、エアコンの室外機付近への設置は避けることが大切です。
適切な充放電管理毎日100%→0%→100%といった深い充放電を繰り返すと、浅い充放電に比べて寿命が短くなるといわれています。理想的には20〜80%の範囲での運用が推奨されており、多くの最新機種では自動的にこの範囲で動作するよう設計されています。
設置場所の確保が意外に困難
卒FITの方の中には、もともと蓄電池の導入を想定してなかった方も多いと思います。蓄電池は想像以上に大きく重たい設備です。一般的な家庭用でもエアコンの室外機2〜3台分程度のサイズがあり、設置を安定させるため重量が100kg前後になるものもあります。屋内設置の場合は静音性に配慮した製品を選ぶことも肝心です。 新築時なら設置場所を計画できますが、後付けの場合は適切な場所の確保が困難なケースがあります。特に都市部の住宅では、庭が狭く設置場所が限られる方にはデメリットとなりえます。都市部の住宅でも、限られたスペースを有効活用できる設置方法があるので、詳しくは事業者へ問い合わせてみてください。 なお最新の蓄電池は運転音を大幅に低減した設計となっており、日中の生活音とほぼ同レベルの静音性を実現しています。しかし運転時に冷却ファンなどから多少の音が出るため、寝室や隣家に近い場所への設置は避けるなどの配慮も重要です。
設置場所選びの具体的なチェックポイント蓄電池の設置場所選びで失敗しないために、以下の点を事前に確認しましょう。
屋外設置の場合- 基礎工事が可能な平坦な場所があるか
- 隣家からの距離が十分確保できるか(騒音対策)
- 直射日光や雨水が直接当たらない場所か
- 分電盤やパワーコンディショナーからの距離が適切か
- 重量に耐えられる床構造になっているか
- 換気が十分に行える場所か
- 周囲に燃えやすい物を置かない空間が確保できるか
これらの条件を満たす場所がない場合は、壁掛け型や小型モデルの検討、または設置場所自体の改修工事を検討しましょう。
停電対策で導入する場合の注意点
「災害時の備えになる」という理由で蓄電池を検討される方もいますが、事前に以下のことに留意しましょう。
- 特定負荷型(一部のコンセントのみ対応)の場合、停電時に使えるのは事前に指定した機器だけとなり、家全体の電力をまかなうことはできません。
- 全負荷型(家全体に対応)でも通常と同様に電気を使うと、数時間から1日程度で電池が切れてしまいます。
災害時の備えで蓄電池を導入する場合は、事前にどのくらいの効果があるのかも十分にチェックしておきましょう。
停電時の実際の使用可能時間を検証災害対策として蓄電池を検討する場合、現実的な使用可能時間を把握しておくことが重要です。
6kWh蓄電池の場合の使用例(※理論値)- 冷蔵庫(300W)+ LED照明(50W)+ スマートフォン充電(10W)= 360W 連続使用可能時間:約16時間
- 上記 + テレビ(150W)+ エアコン(800W)= 1,310W 連続使用可能時間:約4.5時間
このように、使用する機器によって大幅に使用可能時間が変わります。災害時の電力使用を最小限に抑える計画を立てておくことで、より長時間の停電に対応できます。
その他、経済面でのデメリット
自家消化率には限界がある?
卒FIT後は売電価格が大幅に下がる(1kWhあたり7〜11円程度)ため、余った電気を蓄電池に貯めて夜に使う方が経済的といわれています。しかし太陽光発電で作った電気を自家消費するにも限界があるようです。 実は、日中に太陽光発電で作った電気を蓄電池に貯めても、変換効率の関係で100%活用することはできません。これは太陽光パネルで発電された直流電力を、家庭で使える交流電力に変換するパワコンでの変換ロスや、蓄電池への充放電の過程で発生するロスが発生しますが、これは約10%程度になります。仕組み上のこととはいえデメリットにあたることでしょう。 これはどんな太陽光発電システムでも起こりうることですが、変換効率に優れた太陽光発電システムと蓄電池を適切に組み合わせることで、無駄な充放電を減らすことも可能ですので過度な心配にはおよびません。
補助金制度を逃すことが最大のデメリット
蓄電池導入には国や自治体の補助金制度がありますが、多くの自治体では年度初めに予算が設定され、先着順で受付されるため、申請のタイミングを逃すと乗り遅れる場合があります。補助金の額は数十万円からなので、使える時に使わないのは最も大きなデメリットであり、裏を返せば最高のメリットです。卒FITの方が急増中の今日、急いで申請しましょう。 注意点としては、補助金の対象となる蓄電池の仕様や設置条件が細かく規定されており、希望する製品が対象外の場合もあります。既存の太陽光発電システムとの組み合わせ条件もあるため、設置済みのシステムによっては補助金を受けられないケースもあるのでそちらにも注意しましょう。
既存の太陽光発電システムとの連携
卒FIT対象のご家庭では、10年以上前に設置された太陽光発電システムが一般的なため、古いパワーコンディショナ(太陽光発電の電気を家庭用に変換する機器)では、新しい蓄電池との連携ができない場合があります。旧システムとの互換性を確認する方法には以下があります。
事前確認事項- パワーコンディショナーのメーカー・型番:取扱説明書または機器本体のラベルで確認
- 設置年度:2012年以前の機器は互換性が低い場合が多い
- 通信機能の有無:ECHONET Lite対応かどうか
- 残存保証期間:メーカー保証が残っている場合の対応
互換性がない場合でも、パワーコンディショナーの更新や追加設置により対応可能なケースもあります。ただし、追加費用が必要になる場合があります。
デメリットを軽減する具体策
初期費用を抑える具体的な方法
高額な初期費用への対策として、まず補助金制度を最大限に活用しましょう。国の補助金に加えて、お住まいの都道府県や市町村の制度も調査し、複数を組み合わせることで負担を大幅に軽減できます。ただし、申請時期や条件を事前によく確認することが重要です。 蓄電池の容量選定も費用対効果を左右します。過大な容量は価格面で負担となるため、過去1年間の電気使用量を詳しく分析し、本当に必要な容量を見極めることが大切です。「大は小を兼ねる」という考えは蓄電池には当てはまらないといえるかもしれません。 複数の事業者から見積もりを取り、価格だけでなく保証内容やアフターサービスも含めて総合的に比較しましょう。極端に安い見積もりには特に注意し、適正価格の範囲内で信頼できる業者を選ぶことも重要です。
適正な蓄電池容量の計算方法最適な蓄電池容量を選定するための具体的な計算方法をご紹介します。
Step1:夜間電力使用量の把握過去1年間の電気使用量データから、19時〜翌7時の使用量を算出します。 例:年間2,190kWh ÷ 365日 = 6kWh/日 (※参考値)
Step2:太陽光発電の余剰電力量の把握太陽光発電の年間発電量から自家消費分を差し引いた余剰分を計算します。 例:年間1,825kWh ÷ 365日 = 5kWh/日
Step3:必要蓄電容量の算出上記の小さい方の値を基準に、システム効率(90%)を目安として計算します。 必要容量 = min(夜間使用量、余剰電力量)÷ 0.9 例:5kWh ÷ 0.9 = 5.6kWh この計算に基づき、6〜7kWh程度の蓄電池が適正容量となります。(※編集部調べ)
長持ちさせる使い方のコツ
蓄電池を長持ちさせるには、適切な使い方を心がけることが大切です。完全に電池を空にしたり、常に満充電状態にしたりするのは電池に負担がかかるといわれています。容量の20〜80%程度の範囲で使用することで、寿命を延ばすことができます。 設置環境も重要です。直射日光が当たる場所や、極端に暑くなる場所は避け、風通しの良い場所に設置することで電池の劣化を抑制できます。定期的な清掃によりシステム全体の効率を維持することも大切です。
経済効果を最大化するポイント
蓄電池の経済効果を最大化するには、ライフスタイルに合わせた運用設定が重要です。多くの蓄電池には経済優先モード、環境優先モード、災害対策モードなど複数の運転モードがあり、シーンによって選択できます。 エコキュートをお使いのご家庭では、蓄電池との連携機能を活用することで、給湯と電力貯蔵を効率的に行うことができます。また時間帯別の電気料金プランを活用し、深夜の安い電気を蓄電池に貯めて昼間に使うという運用方法もあります。 季節や家族の生活パターンの変化に応じて設定を見直すことで、年間を通じて最適な運用を実現できます。
電気自動車(EV)と連携する選択
電気自動車(EV)とV2H(Vehicle to Home)システムの組み合わせは、蓄電池の代替として注目されている選択肢です。EVのバッテリー容量は40〜60kWh程度と大容量で、一般的な蓄電池の5〜10倍の電気を貯めることができるといいます。 V2Hシステムにより、EVに貯めた電気を家庭で使用でき、停電時の非常用電源としても活用できます。また外出先での充電により、実質的に電気を「運搬」することも可能となります。
EV+V2Hシステムと従来蓄電池の比較 コスト比較- EV+V2Hシステム:400〜800万円(車両300〜600万円+V2H機器100〜200万円
- 従来蓄電池:150〜300万円(容量により変動)
- EV電池容量:40〜100kWh(日産リーフ:40kWh、テスラModel 3:75kWh) 従来蓄電池:4〜16kWh
- 停電時使用可能日数:EV 3〜7日、従来蓄電池 1〜2日
現時点では初期投資の観点から従来型の蓄電池の方が価格面でも現実的ですが、EV普及とともに価格低下が進めば、2030年頃には主流となる可能性があります。
志向別:蓄電池導入の意義と知っておくべきこと

コスト重視派の場合
経済効果を最優先に考える場合は、初期投資を含めた総合的な費用対効果を慎重に検討することが重要です。蓄電池の導入費用と15年間の電気代削減効果を詳細に計算し、投資回収期間などのシミュレーション結果が納得のいくものになるかどうか、確認しましょう。
【投資回収計算の実例】 年間削減効果の計算例- 電気代削減効果 蓄電池活用による購入電力削減:年間1,800kWh 電気料金単価:30円/kWh 年間削減額:54,000円
- 売電収入減少分 自家消費増加による売電量減少:年間1,800kWh 売電単価:9円/kWh 機会損失:16,200円
- 実質年間削減効果 54,000円 – 16,200円 = 37,800円(※参考値)
- 回収期間12年以内:推奨
- 回収期間12〜15年:条件次第で検討可能
- 回収期間15年超:経済性重視なら見送り
環境意識が高い場合
太陽光発電と蓄電池の組み合わせによりできるだけ多くの自家消費を目指すことで、電力の地産地消を実現できます。これは環境負荷の軽減だけでなく、エネルギー自立への貢献にもつながります。
環境貢献効果の定量化 CO2削減効果の計算(※目安)- 追加自家消費量:年間2,000kWh
- 系統電力のCO2排出係数:0.445kg-CO2/kWh
- 年間CO2削減量:890kg-CO2
- 15年間の累積削減量:約13.4t-CO2
これは植樹効果換算で約607本のスギの木が1年間に吸収するCO2量に相当します。
災害対策を重視する場合
災害時の備えを最優先に考える場合には、停電時の対応能力と信頼性を重視して蓄電池を選択することが必要です。全負荷型の蓄電池を選び、太陽光発電との連携により数日間の停電にも対応できるシステムを構築することを目標にしましょう。 卒FITの方で、今までの発電量が少ないと感じていた方は、非常用発電機や太陽光パネルの増設なども併せて検討するといいでしょう。実際の災害時に期待した性能を発揮するためには、定期的な動作確認と適切なメンテナンスも不可欠です。
アフターサービスの重要性
メーカーの保証内容を事前にチェック
蓄電池は10年以上使用する設備のため、長期的なサポート体制が重要です。定期点検の内容や頻度、故障時の対応方法、連絡先などを事前に確認しておきましょう。 メーカー保証に加えて販売店独自の保証やサービスがあるかも重要なポイントです。24時間対応の連絡先やリモート監視による予防保全サービスなど、充実したサポートを提供している事業者もあります。
保証内容の詳細比較蓄電池の保証内容はメーカーや機種により大きく異なります。
基本保証の比較項目- 製品保証期間:一般的10年間、長期保証15年間
- 容量保証:初期容量の60〜80%を10〜15年保証
- 出力保証:インバーター部分の定格出力維持
- 自然災害保証:台風、地震、落雷などによる損害
- 施工保証:設置工事に起因する不具合
- 定期点検サービス:年1〜2回の専門点検
優良な販売施工業者であれば、これらの保証内容を詳しく説明し、お客様の使用状況に最適な保証プランを提案してくれます。
後悔しない蓄電池導入のための最終チェックリスト
卒FIT後の蓄電池導入を成功させるポイント
導入前の検討事項□過去1年間の電気使用量データの詳細分析 □現在の太陽光発電システムとの互換性確認 □家族のライフスタイルと電力使用パターンの把握 □設置場所の適合性(スペース、騒音、法規制) □初期投資額と回収期間の現実的なシミュレーション
事業者選定・契約時の確認事項□複数業者からの詳細見積もり取得(最低3社) □施工業者の資格・実績・保証体制の確認 □補助金申請サポートの有無 □工事内容・スケジュール・近隣配慮の詳細確認 □契約書面での保証内容・アフターサービスの明記
導入後の運用管理□最適運転モードの設定と季節調整 □定期的な稼働状況の確認とメンテナンス □経済効果の実測と計画との比較 □災害時の使用手順確認と家族での共有 □将来的な機器更新計画の検討
導入する際は、複数の事業者から詳細な見積もりを取得し、蓄電池を導入するメリット・デメリットを十分理解した上で判断することをお勧めします。
まとめ
卒FIT後に蓄電池を導入する際は、高額な初期費用や蓄電池の寿命と太陽光発電システムの保証期間、ベストな設置場所の選定や停電時の対策など多くの課題があります。人によっては大きなデメリットになる場合があるかもしれません。 経済面では蓄電池を導入することでどれだけ元が取れるかも重要でしょう。実際の生活パターンによる年間の電気使用量を確認し、中長期的なシミュレーションを事前に行うことで、メリットとデメリットの比較が可能になります。 このほか補助金の活用や家の電気使用量にあった適切な容量選定、信頼できる業者選び、長期的な運用計画など、事前の準備と正しい知識を持つことも重要です。 とはいえ、我が家の場合はどうなのか?シミュレーションはどうやったら正確にできるの?と考える方も多いのではないでしょうか。間違った判断をしないためにも、不安になったら専門家に相談することをおすすめします。
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