
- 蓄電池
- 2023.07.04
2025年07月17日
【この記事はどんな人の役に立つか】
この記事は、新築一戸建てで太陽光発電の導入を検討している方、既に設置済みで「余った電気をどう活用すればいいの?」と悩んでいる方、さらには「卒FIT後の売電価格下落が心配」という方にとって有益な情報をお届けします。
「太陽光発電で余った電気って本当にお金になるの?」「電気代はどのくらい安くなる?」「設置費用は回収できる?」といった疑問から、将来的な売電価格の変化や、より賢い電気の使い方まで、分かりやすく解説していきます。
この記事を読むことで、余剰電力の基本的な仕組みを理解し、ご家庭にとって最適な活用方法を見つけることができるでしょう。特に新築時に太陽光発電の導入を検討している方には、長期的な収支計画を立てる上で参考になる具体的な情報をお伝えします。
記事の後半では蓄電池や電気自動車(EV)との組み合わせなど、より効果的な活用方法についても詳しく解説。あなたの家族構成やライフスタイルに最適な選択肢を見つけるお手伝いをします。
目次
住宅用太陽光発電システムで発電された電気は、まず家庭内で使われます。しかし、発電量が家庭での電気使用量を上回った場合、使い切れずに余った電気のことを「余剰電力」と呼びます。
具体例で理解
例えば、晴天時の午後2時頃、4kWの太陽光発電システムを設置したご家庭で3.5kW発電しているとします。仮にその時間帯の家庭での電気使用量が1.5kWだとすると、2.0kWが余剰電力となります。 この余った電気は、パワーコンディショナ(パワコン)という機器を通じて電力会社の電線に送られます。
一般的な発電・消費のバランス
住宅用太陽光発電では一般的に発電した電力のうち約30%が自家消費され、約70%が余剰電力とされます。つまり、太陽光発電システムを設置した多くの家庭では、発電した電気の大部分が余剰電力として電力会社に売られているのが現状です。 この余剰電力の量は、家族構成やライフスタイルによって大きく変わります。共働きで昼間不在が多いご家庭では余剰電力が多くなり、日中の在宅時間が長いご家庭では自家消費が多くなる傾向があります。
売電の流れは非常にシンプルです。太陽光発電システムで発電された電気は、まず家庭内で使われ、その後余った分が自動的に電力会社の送電網に送られます。この際、売電メーターが余剰電力の量を正確に計測し、その数値に基づいて売電収入が毎月の電気代から差し引かれるか、直接振り込まれます。 多くの場合、特別な手続きは必要なく、太陽光発電システムを設置すれば自動的に余った電気が売られる仕組みになっています。
FIT制度は、正式には「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」と呼ばれ、2012年7月に開始されました。この制度の目的は、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及促進、CO2削減です。 簡単に言うと、「環境によい電気を作ってくれたら、国が一定の価格で買い取ることを保証しますよ」という制度です。太陽光発電で発電された環境負荷のない電気を、電力会社が一定の固定価格で長期間にわたって買い取ることを国が約束しているのです。
住宅用太陽光発電の場合
住宅用太陽光発電の場合、FIT制度の適用期間は10年間が一般的です。この10年間は、設備認定を受けた年度の売電価格が維持され、電力市場の変動に関係なく安定した売電収入を得ることができます。 例えば今から10年前の2015年度(平成27年度)の住宅用太陽光発電の売電価格は、10kW未満のシステムで33円〜35円/kWhでした(出力制御対応機器の設置状況によって価格が異なる)。2015年から10年のFIT期間中は、この価格で売電ができたことを意味しています。
FIT制度には以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
デメリット
制度を支える「再エネ賦課金(ふかきん)」
FIT制度の買取費用は、すべての電力利用者が負担する「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」によって賄われています。2025年度の賦課金単価は、1kWh当たり3.98円となっており、標準的な家庭では月額約1,600円、年額約19,000円の負担となっています。 つまり、太陽光発電を設置していないご家庭も、この制度を通じて再生可能エネルギーの普及を支えているということになります。
太陽光発電の売電価格は、確かに年々下落している傾向にあります。これには明確な理由があり、将来の計画を立てるうえで重要なポイントです。
2025年度の住宅用太陽光発電(10kW未満)の売電価格は、9月までの認定申請分については15円/kWhとなっています。ただし、10月以降の認定申請分については新しい26年度FIT制度が導入され、最初の4年間は24円/kWh、5年目以降は8.3円/kWhという二段階の価格設定となります。
2026年度 新FIT制度について解説!|太陽光発電の固定買取価格が上がるってホント? | ソーラーメイトブログ
過去の売電価格の推移を見ると、制度開始当初からの大幅な価格下落が確認できます。
この推移を見ると、住宅用太陽光発電の売電価格は年間1円程度のペースで継続的に引き下げられており、制度開始時と比較すると約1/3の水準まで下落しています。
売電価格が下落している主な理由は以下の通りです。
国は、太陽光発電の発電コスト(LCOE)を市場価格と同程度まで下げ、補助金に依存しない自立的な普及を目標としており、将来的にはさらなる売電価格の低下が予想されています。この傾向は、太陽光発電が「売電して儲ける」時代から「自家消費で経済的メリットを得る」時代への転換を示しています。
多くの方が「太陽光発電=売電して収入を得る」というイメージを持っているかもしれませんが、2025年現在、必ずしもそうではなくなってきています。ここでは、なぜ売電よりも自家消費の方が圧倒的にお得になったのか、具体的な数字で解説します。
自家消費って何?
自家消費とは、太陽光発電で発電した電気を電力会社に売らずに、自宅で消費することです。具体的には、昼間に発電した電気を蓄電池に貯めておき、太陽光発電ができない夜間や雨天時に使用する方法が代表的です。
現在の状況を整理すると
つまり、同じ1kWhの電気でも「売って得られるお金」と「買わずに済むお金」に2倍以上の差があります。これは、余剰電力を売るよりも、自分で使った方が2倍以上お得ということを意味しています。
この逆転現象は2020年頃から始まりました。2019年までは、売電価格>電気料金(売電の方がお得)で2020年以降は売電価格<電気料金(自家消費の方がお得)となっています。 この差は年々拡大しており、今後も自家消費の経済的メリットが大きくなることが確実視されています。
現在の電気料金は、東京電力の一般的なプランで30〜33円/kWh程度となっており、2025年度の売電価格15円/kWhと比較すると2倍以上の単価差があります。
これを分かりやすく説明すると
前提条件
結論:自家消費率を50%に向上させることで年間約9,400円の電気代削減が可能
現実的な自家消費率50%でも、年間約1万円近い節約効果が期待できます。
さらに重要なのは、この傾向が今後も続くことです。
できるだけ早い段階で自家消費体制を整えることが、長期的な家計メリットに直結するといえるでしょう。
太陽光で発電した電力の自家消費を最大化するためには、主に以下の方法があります。
これらの設備を組み合わせることで、自家消費率を大幅に向上させることができ、電気代の削減効果を最大化できます。
自家消費は、単純な電気代削減だけでなく、災害時の非常用電源として活用できるという付加価値もあります。また、電力会社からの電気購入量を減らすことで、電力システム全体の安定性向上にも貢献します。 ただし、自家消費を実現するためには蓄電池などの初期費用が必要となるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
5kWの太陽光発電システムを設置した標準的な住宅(4人家族)の場合で比較してみましょう。
年間発電量:約5,500kWh
【売電中心の場合】
【自家消費中心の場合(蓄電池導入)】
この差額は年間約4万円。これが10年続けば40万円、20年続けば80万円の差になります。蓄電池の初期費用を考慮しても、長期的には自家消費の方が圧倒的にお得になることが分かります。
今後の見通し
さらに重要なのは、この傾向が今後も拡大していくことです。
太陽光発電を導入したすべての住宅が必ず直面するのが「卒FIT」の問題です。新築で太陽光発電を検討している方は、最初からこの10年後を見据えた計画を立てることが重要です。
卒FITとは、FIT制度による固定価格での買取期間(10年間)が満了することを指します。「FIT制度から卒業する」という意味で、この名前がついています
具体的にはどんな影響があるの?
例えば、2025年に太陽光発電を設置した場合、2035年に卒FITを迎えます。FIT期間中の売電価格が15円/kWhだったとすると、卒FIT後は大幅に下落し、8〜12円/kWh程度になってしまいます。
具体的な数値で見る影響
5kWシステムで年間約3,850kWhの余剰電力がある場合
この収入減が卒FIT後も20年以上続くことを考えると、ちょっともったいないですよね。
卒FITを迎えた後の電気代削減効果について、具体的な数値でシミュレーションしてみましょう。これは、新築で太陽光発電を検討している方にとって、10年後の将来設計を立てる上で重要な指標となります。
卒FIT後の選択肢別:年間削減効果比較
5kWの太陽光発電システム、年間発電量5,500kWhの場合で比較してみます。
【選択肢①:大手電力会社で売電継続】
【選択肢②:高単価の新電力に切り替え】
【選択肢③:蓄電池導入で自家消費70%に向上】
20年間の累積効果の差
この年間差額が20年間続くと
蓄電池の初期費用200万円を考慮しても、自家消費への転換が最も経済的であることが分かります。
電気料金上昇を加味した将来予測
さらに、電気料金の上昇(年1〜2%想定)を考慮すると、自家消費の経済的メリットはさらに拡大します。10年後には電気料金が40円/kWh程度になる可能性もあり、その場合の自家消費効果は年間約220,000円に達する計算です。
新築時から考えるべき戦略
新築で太陽光発電を検討している方は、最初から卒FIT後を見据えた設計にすることをおすすめします。
自家消費のメリットは理解できても、「具体的にどうすればいいの?」という疑問をお持ちの方が多いでしょう。ここでは、主要な自家消費の方法を、それぞれの特徴と適用場面と共に分かりやすく解説します。
蓄電池とは
昼間に太陽光発電で作った電気を貯めておき、夜間や雨の日に使えるようにする「家庭用の大きな充電池」のことをいいます。
価格相場(2025年現在)
容量の選び方
4人家族の一般的な夜間電気使用量は10〜15kWh程度なので、12kWh前後の蓄電池があれば夜間の電気をほぼ自給自足できます。 蓄電池費用:約200万円
新築時導入のメリット
エコキュートとは
空気の熱を利用してお湯を沸かす高効率な給湯器です。従来は安い深夜電力を使っていましたが、太陽光発電がある家庭では昼間の余剰電力を活用できます。
経済効果
一般的な4人家族の給湯費は月額8,000〜12,000円程度。これを太陽光でまかなうことで、年間約10万円の節約が可能になります。
新築時の検討ポイント
V2Hとは?
「Vehicle to Home」の略で、電気自動車(EV)のバッテリーを家庭の電源として活用できるシステムです。EVは通常40〜80kWhという大容量のバッテリーを搭載しており、これは家庭用蓄電池の4〜8倍の容量に相当します。
価格相場
どんな家庭に適している?
注意点
車で出かけている間は蓄電池として使えないため、ライフスタイルとの適合性を慎重に検討する必要があります。
HEMS(ヘムス)とは
「Home Energy Management System」の略で、家庭内のエネルギー消費を見える化し、最適化するシステムです。スマートフォンで電気の使用量や発電量をリアルタイムで確認できます。
主な機能
導入効果
HEMSを活用することで、自家消費率を5〜10%向上させることが可能とされています。年間の節約効果は2〜3万円程度ですが、長期的には大きな差になるでしょう。
4歳のお子さんがいるご家庭を想定しながら、さまざまなライフスタイルパターンでの最適な組み合わせをシミュレーションしてみましょう。
特徴:両親ともフルタイム勤務
推奨する組み合わせ
4人家族での収支シミュレーション(年間)
この組み合わせが向いている理由
昼間不在で自然な自家消費が少ないため、蓄電池による電力貯蔵が効果的。夜間と週末の電力需要をしっかりカバーできます。
特徴:どちらかが在宅勤務中心
推奨する組み合わせ
4人家族での収支シミュレーション(年間)
この組み合わせが向いている理由
昼間在宅で自然な自家消費が多いため、大容量蓄電池は不要。適度な蓄電池で雨天時や夜間をカバーしつつ、コストを抑制できます。
特徴:5年以内にEV購入を検討
推奨する組み合わせ
段階的導入戦略
長期収支シミュレーション(20年間)
特徴:安心・安全を最優先に考える
推奨する組み合わせ
災害時のメリット
収支と安心のバランス
新築で太陽光発電システムを導入する場合は、後からの追加・変更が難しい部分があります。将来的な拡張や変更を見据えた設計にしておくことが重要です。
屋根設計での考慮事
電気配線での準備事項
設置スペースの確保
新築時導入のメリット
資金計画での注意点
値が張る買い物ともいえる蓄電池などの導入には、最大限に国や自治体の補助金制度を利用したいものです。ただしすでに本年度分の予定を終了している場合もあるので、来年度に期待するなど、早めに準備をしておきましょう。
国の補助金
自治体補助金の例 各自治体により異なりますが、東京都や神奈川県では補助が用意されています
補助金活用の注意点
見積もり比較の注意点
技術進歩リスク
制度変更リスク
機器故障リスク
太陽光発電の余剰電力について、基礎知識から具体的な活用方法、さらには将来を見据えた戦略まで詳しく解説してきました。重要なポイントを整理しましょう。
1. 基本を理解する
2. 経済性の大転換を認識する
3. 自家消費の実現方法を理解する
4. ライフスタイルに合った選択をする
5. 新築時の戦略的設計が重要
お子さんの成長とともに電気使用量が増える可能性、将来的なEV購入の検討、そして長期的な家計安定を考慮すると、以下のような段階的アプローチがおすすめです。
新築時(現在)
5年後(お子さん小学校高学年)
10年後(卒FIT時期)
太陽光発電システムは大きな投資ですが、正しい知識と計画があれば、長期的に大きなメリットをもたらします。まずは以下のステップで情報収集を進めることをおすすめします。
ここまで太陽光発電の余剰電力の活用法について紹介しました。蓄電池システムの導入を検討する際は、 Q.READY の蓄電池システムも選択肢の一つに加えてみてください。豊富な実績と充実したアフターサポート体制で、お客様のライフスタイルに最適な余剰電力活用プランをご提案します。新築時の設計段階から将来の拡張まで、長期的な視点でサポートできるのも魅力です。ご家族の将来を見据えた「持続可能で経済的な住まいづくりの一環」として、ぜひ太陽光発電と蓄電池の導入を検討してください。
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