2025年09月04日

【完全解説】オフサイトPPAとは?企業が導入すべき理由と仕組み
オフサイトPPAとは何か、2025年最新の仕組みやオンサイトPPAとの違いや企業が導入すべき理由、電気料金の削減効果、CO2削減、RE100対応、自治体補助金の活用方法まで網羅します。電力コスト対策と脱炭素戦略を両立したい企業は必見です。
目次
オフサイトPPAとは
オフサイトPPAの仕組み
オフサイトPPAとは、自社の敷地外にある発電所から系統(送配電網)を介して電力供給を受ける長期の電力購入協定です。
設備を自社で所有せずに導入でき、初期投資を抑えながら電気料金の安定とCO2の削減を同時にねらえるのが最大の特徴です。
発電設備は第三者であるPPA事業者が保有し、需要家である企業は長期の契約で電気を使うことができます。
オフサイトPPAが注目される理由
なぜ今注目されているのか
- 電力市場の変動の影響をできるだけ縮小し、長期の価格安定を得たい
- 設備所有を前提にしないため、敷地制約の大きい都市型オフィスでも導入が可能
- 補助金・支援と組み合わせやすく、必要資料を整えやすい
導入するのに不安が残る業種でも、対象となる拠点を限定した「スモールスタート」で実績を作る方法が有効です。
オフサイトPPA とオンサイトPPAを完全比較
下記にオンサイトPPAとオフサイトPPAを比較してその違いを表にしました。

オンサイトPPAとオフサイトPPAの最大の違いは、発電設備の設置場所と託送料金の有無です。
オンサイトPPAは、電力消費者の敷地内に発電設備を設置するため、送電網を経由せずに電力を直接利用できます。これにより、託送料金が不要となり、コスト削減とBCP対策に繋がります。
一方、オフサイトPPAは、消費者の敷地外に設置された大規模な発電所から、送電網を通じて電力を供給するモデルです。このため、設置スペースの制約がないメリットがありますが、託送料金や系統利用料が発生します。どちらのモデルも、再エネ導入の手段として広く活用されています。
オフサイトPPAのメリット
メリット1:初期投資を抑えて導入できる
設備を所有しないためバランスシートへの影響が小さく、稟議が通りやすい。立ち上げ期は事業者の支援を受け、次年度から内製比率を高める設計が現実的です。
メリット2:総額での電気代削減が狙える
既存調達とPPA総額(単価+系統+賦課金+証書+運用追加費)を比べ、一定期間での純効果を算出できます。
例として年4GWh・単価差2.5円/kWhなら約1,000万円規模。ボリューム偏差や不足分清算を入れた“悲観シナリオ”でも黒字を維持できる条件を見極めます。
メリット3:CO2削減と開示の容易さ
証書の種類・由来を明確化し、監査対応の資料パックを整えることで、統合報告や企業案内への反映が容易。取引先への説明責任にも応えられます。
メリット4:価格変動への耐性が高い傾向にある
長期でベースコストを固定・準固定化することで、市場の急激な値上り局面でも影響を緩和。逆に値下局面では再交渉条項やスライダー条件が効きます。
メリット5:多拠点の運用効率化
契約・請求・レポートの標準化により、部門横断の“バラバラ運用”を一本化。流通・物流・全国型小売など拠点分散の大きい業態で効果が際立ちます。
オフサイトPPA のデメリットと賢い対処法
オフサイトPPAは電気代の最適化やCO2の可視化に強みがある一方、契約によっては、期待通りの成果が得られない場合もあります。
ここでは実務で頻出する5つの課題と対策を、総額視点・契約設計・運用体制の3つに整理します。
1. 長期契約ゆえの拘束
15〜20年の長期契約は価格変動に対して“守り”にも“足かせ”にもなるといえます。値下り局面で既存市場より不利になる場合があるのが最大の懸念材料です。
対策:価格スライダー(部分連動)やインデックス連動、再交渉トリガー(制度変更・異常市場)、不足分・超過の清算幅を明文化しておきましょう。
早期離脱・縮小時の算定式は具体例付きで契約書に明記。社内の稟議では「悲観シナリオでも赤字化しない範囲」を“協定”として合意するなど。
2. 総額で見たら割高になる?
PPA単価が低くても、託送・証書費・賦課金・運用の追加費を足すと逆転することがあります。
対策:総額比較を“5〜10年の一定期間×3シナリオ(楽観/中立/悲観)”で徹底化する。需給や燃料指標の仮定を明記し、同一フォーマットで意思決定メモを作ること。
会社内の監査・経理には公式様式の資料を最初に共有する。
3. 証書・CO2算定・監査の運用負荷
証書の種類・由来・トラッキングの設計が曖昧だと、非財務開示でつまずくこともあり得ます。
対策:初年度に台帳の“型”を作っておく。第三者の検証を前提に、年次で見直す。監査で求められる“遡及可能性”を基準に、データの届け・保管の流れを整備するなど。
4. BCP(非常用電源)にならない
停電などの障害が出たとき、オフサイトPPAは自動でバックアップにはなりません。
対策:重要拠点はオンサイトPPA+蓄電池で対応。全国に散らばる流通・物流拠点向けは、平時のコスト最適化としてオフサイトPPAで、非常時は拠点選抜で別ラインを確保する役割分担が現実的です。
5. 補助金・自治体制度との適合性
補助金は年度ごとで条件が変わり、対象や書式の違いなど“見えない障壁”になることがあります。
対策:公募開始前から相談窓口に当たり、対象経費や採択観点を把握。無補助でも成立するモデルを先に作り、補助は“上乗せ”として扱う。スケジュールは募集期間起点で逆算し、書類の含め漏れを防ぐ。
要旨:デメリットの多くは「総額の見誤り」「契約の抽象度」「運用設計の欠落」に起因する。準備段階で潰せば、市場の変動や温暖化関連の要件更新があっても致命傷になりません。
PPAについてもっと知りたい方は、【PPA】初期費用ゼロで太陽光を導入!仕組みやデメリットまで解説 をご覧ください。
オフサイトPPA 成功事例3選と失敗から学ぶ教訓
オフサイトPPAの導入には多くの成功例があり、共通して見られるのは「総額で勝つ設計」「契約の具体性」「運用の標準化」という三つの柱です。ここでは代表的な3つの事例を紹介し、そこから学べる教訓を整理します。
事例1:製造業A社(地方工場・高圧/年4GWh)
地方工場を持つA社では、原材料費の高騰と電気料金の値上がりが収益を直撃していました。
そこで、PPA単価差2.5円/kWhを活用し、託送費・証書費・賦課金を含めた総額モデルを策定。さらに需要予測の誤差や不足分清算のルールを契約に盛り込みました。
その結果、年間約1,000万円のコスト削減とCO2大幅削減を実現。BCPについてはオンサイト発電と蓄電池を組み合わせることで補いました。教訓は、「悲観シナリオでも黒字を維持できる余地を契約段階で確保すること」です。
事例2:IT企業B社(本社+複数拠点)
B社は投資家や顧客からの開示要求が強まる中、ESGレポートと企業案内の整合性が課題となっていました。
そこで、第三者保有の電源を使ったオフサイトPPAを導入し、証書を組み合わせる形で環境価値を確保しました。監査対応資料を公式様式で統一し、KPIを毎年レビューする体制を整えました。
この取り組みにより、説明責任と企業の信用力が向上し、採用広報にも好影響をもたらしました。教訓は「初年度に教育と運用手順を固定化し、属人的な運用を排除すること」といえます。
事例3:小売C社(全国数百店舗)
全国に数百の店舗を持つC社では、店舗ごとの契約や請求業務がバラバラで、管理コストが膨らんでいました。
そこで、拠点横断で一括PPA化を進め、計量や請求の仕組みを標準化。不足分処理のロジックや離脱費用算式も契約で明確にしました。
結果として、管理業務の効率化とコスト削減を同時に実現。運用人員を横断チームに再編し、支援ベンダーの関与を段階的に縮小することに成功しました。ここでの教訓は、「分散拠点ほど標準化の効果が大きく、数値例示が内部合意を早める」という点でしょう。
失敗から学ぶ教訓とは
成功事例の裏側には、いくつかの失敗パターンも存在します。典型的なのは以下の3つです。
- 需要予測の外れ → 協定や上下限の設定、清算式を契約に盛り込むべきだった。
- 証書の定義や由来の誤解 → 監査前レビューや資料テンプレートで統一しておく必要がある。
- 補助金依存 → 「無補助でも成立する設計」を前提にし、補助は加点要素と割り切ることが重要。
オフサイトPPA 導入の完全ロードマップ
導入は「要件定義 → 契約 → 運用」の流れで段取りすると迷いません。各ステップで“誰が・何を・いつまでに”を固定化します。
ステップ1:現状把握(データの整備)
使用量・ピーク、既存単価、CO2係数、自社のBCP要件を棚卸し。拠点特性(屋根条件・需要パターン)と市場リスクの仮説も明文化。成果物はベースライン表。
ステップ2:方式比較(オンサイト/オフサイト/自己託送)
三方式の違いを同一フォーマットで総額比較。投資・保守・会計処理、不足分処理、系統制約、場合分け(需要増減、値上り/値下)まで書く。意思決定メモに“採る・採らない”の判断基準を併記。
ステップ3:事業者選定(RFPと条件の可視化)
RFP配布→質疑→見積を受領。見積書の“外”にある費目(証書費、託送精算、連携システム、追加オプション)を表に出し、3社程度を徹底比較。相談記録を残し、会社の基準に合わせて採点。
ステップ4:契約設計(価格・ボリューム・証書)
価格スライダー、インデックス連動、ボリューム上下限、不足分清算、途中離脱、再交渉トリガー、証書の種類・由来・トラッキング、監査対応。条項は“数式と例示”で具体化し、公式様式の資料に落とす。
ステップ5:準備・試運転(手順の標準化)
計量点・請求・レポートを通しで試験する。台帳・帳票の運用、“届け・保管”の動線、権限分掌を固める。初年度は支援ベンダーと併走し、運用の効率化と内製化を計画する。
ステップ6:運用・年次見直し(KPI運用)
KPI(総額差、CO2削減、電気代の分散、偏差清算)を年次評価する。市場や制度の更新、温暖化関連の要件変更に応じて再交渉・増量・縮小を検討。次年度の補助金・募集期間を先に押さえ、工程を前倒しする。
オフサイトPPA 事業者と選定ポイント【2025年最新版】
オフサイトPPA 事業者について下記のようにまとめてみました。2025年は電源の多様化と市場の変動が続くため、見積の“外”にある費目(証書費・託送精算・運用の追加費)まで含めて徹底比較しましょう。
ここでは、カテゴリ別の特徴と評価の条件、スコアリングの作り方を紹介します。
1) 事業者カテゴリと特徴(例)
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具体社名はあくまで“カテゴリ例”。実際の契約は情報(供給容量、停止履歴、監査対応)に基づいて判断してください。
2) 評価軸(2025年の対策視点)
- 価格:PPA単価+証書+託送+賦課金+運用追加費の“総額”で比較
- 柔軟性:ボリューム上下限、不足分の清算幅、再交渉トリガー(制度改定・異常市場)
- 品質:証書の種類・由来・トラッキング透明性(監査対応資料の充実)
- サービス:レポートの使い勝手、年次レビュー、支援体制(相談窓口の明確さ)
- 拡張性:拠点追加や蓄電池併設、オンサイトとのハイブリッドに合わせられるか
3) スコアリングの作り方(例)
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※見積のPDFは要素分解して“同一フォーマット”に転記。会社内の合意形成が一気に早まります。
2025年版オフサイトPPA補助金制度と申請のコツ
オフサイトPPA 補助金は“当たれば追い風”。ただし「無補助でも成立」するモデルを先に作り、補助は“加点”として扱うのが鉄則です。自治体メニューや地域の支援策は地域差が大きく、募集期間も短期な場合があるため、工程を前倒しにします。
1) 基本フロー(導入前から逆算)
- 年度初頭:国・自治体・関連団体の公募を横串で確認(対象、上限、採択観点、スケジュール)
- 仕様の固め:PPAの仕組み、証書の定義、CO2算定法、託送・賦課金の取り扱いを資料化
- 見積・根拠:PPA総額、既存調達、電気代の見通し(変動シナリオ)を“同一フォーマット”で提示
- 申請書作成:公式様式+補足説明(算式・台帳・証憑)+届け出計画
- 採択後:契約・実績報告・年次レビューの流れを明文化
2) よくあるNGと対応策
- 由来や種類の要件を満たさず差し戻し → 早期に要件を赤入れし、証書と監査資料を先につくる
- 事業スケジュールと募集期間が不一致 → 工程表を“補助金起点”に再設計
- 不足分や拠点追加の扱いが曖昧 → 条項・場合分けを申請書に明記
- 予算過少で投資が停滞 → LCC(ライフサイクル)で削減効果を示し、資金手当てを並走
3) 申請パッケージの「型」

東京都など大都市圏は“独自メニュー”がある場合も。最新の情報は公募要領で必ず確認し、公式の質疑応答を活用してください。
オフサイトPPA成功への最終チェックリスト
2025年は、市場の変動や制度更新、そして地球温暖化対策の強化といった不確実性が高まる年です。その中で、オフサイトPPAを単なるコスト削減策にとどめず、「収益と開示の両面で効く実装」へ落とし込むことが求められます。そのための最終確認として整理しておきましょう。
□ 設計面ではすべて「数式で語る」 |
---|
PPA単価に証書費用や託送費、賦課金、運用追加費を加え、悲観・中立・楽観の三つのシナリオで総額比較を行うことが基本です。ボリュームの上下限や不足分清算、早期離脱の算式は契約段階で明確にしておく必要があります。さらに、証書の種類や由来、トラッキング方法、温室効果ガス算定のルールを確実に押さえ、資料運用を固定することが監査対応の安定性につながります。 |
□ 体制面では計量・請求・監査台帳のフォーマットを標準 |
体制面では、自社と事業者の相談窓口を一本化することで、運用の効率化が実現します。加えて、KPIとしては電気代差やCO2削減量、偏差清算、さらにはBCPの観点ではオンサイトと蓄電池の連携状況などを重視し、年次レビューにおいては需給や制度の見通しを前提に、再交渉・増量・縮小を柔軟に検討する体制を整えることが重要です。 |
□ 補助金や自治体の制度は「加点」として扱う |
募集期間を起点に工程を逆算しながらも、無補助でも成立するモデルを用意することが肝心です。また、事業者の比較は同一フォーマットに基づき、会社の基準に沿って採点することで、社内合意を迅速化できます。 |
□ 将来的な拡張を見据えておく |
将来的に拠点の追加や蓄電池連携、オンサイトPPAとのハイブリッド運用を事前に設計しておくことで、変化に強い戦略を築けるでしょう。 |
まとめ
ここまでオフサイトPPAについて、その仕組みや注目されている理由、オンサイトPPAとオフサイトPPAの違い、メリット・デメリット、導入するための手順について紹介しました。
オフサイトPPAは、企業の再生可能エネルギー調達を加速させる重要な手段であり、今後ますます普及していくことが予想されます。
特に、大規模な事業所や複数の拠点を所有する企業にとっては、効率的に再エネを導入できるメリットは計り知れません。RE100やSBTといった国際的なイニシアティブへの参加を考えている企業にとって、オフサイトPPAは脱炭素経営の実現に向けた強力なパートナーとなるでしょう。 経済的なメリットだけでなく、環境への配慮という企業の社会的責任(CSR)を果たすうえでも、この仕組みへの関心は今後もますます高まっていくでしょう。
FAQ
Q1. オフサイトPPAは途中で解約できますか?
A1. 契約によって異なりますが、原則としてコストが発生する場合があります。
オフサイトPPAは15〜20年の長期契約が一般的であり、早期離脱の際には違約精算金がかかります。違約精算金は、未回収投資・解体費・調達差額などを基にした数式で定義されることが多いようです。
実務での対策ポイント
- 制度改定や異常市場、大幅な電気料金の変動を条件に「再交渉トリガー」を契約に入れる
- 需要減に備え、ボリューム下限や不足分清算の幅をあらかじめ規定する
- 早期終了の違約金算式を契約本文に明記する
- 第三者譲渡やオプション買戻し(Buy-out)の条件も合わせて設定する
Q2. オンサイトPPAや自己託送との会計上の違いは?
A2. 一般的に、オンサイトPPAは構内で発電設備を設置するため、契約内容によってはリース会計(資産計上)が必要になる場合があります。
一方で、自己託送は自社が発電設備を所有するため、減価償却や維持費を「固定資産」や「修繕費」として計上するのが基本です。
それに対し、オフサイトPPAは第三者保有の電源から託送で供給を受ける契約形態で、環境価値は証書で管理されます。電気と証書を台帳・証憑で分けて管理し、賦課金や託送費を含む総額は「費用処理」とするのが一般的です。
※最終的な会計処理は監査法人や会計方針に依存します。契約段階で公式様式の説明資料を用意し、監査や税務部門と事前調整しておくのが安全です。
Q3. 災害時の非常用電源として使えますか?
A3. オフサイトPPA単体では、非常用電源としては利用できません。
理由はシンプルで、系統障害が発生すると受電が止まるため、BCP(事業継続計画)で必要な非常用電力を確保できないからです。
現実的な対策
- オンサイト+蓄電池の併用:重要拠点は自立運転可能なシステム構成(太陽光+蓄電池+自家発+ATS)を導入する
- 役割分担:平時はオフサイトでコスト削減やCO2削減を狙い、非常時はローカル設備で電源を確保する
- 運用ルール:非常時の切替手順や負荷の優先順位、保守点検の年次計画を「BCP手順書」に明文化しておく
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