2025年08月25日

トラッキング付非化石証書とは?価格・購入方法からメリットまで解説
企業の脱炭素化への取り組みが加速する中、「トラッキング付非化石証書」が注目を集めています。本記事では、その仕組みから活用方法まで、企業担当者が知っておくべき情報を網羅しています。環境への取り組みを検討している企業にとって欠かせない情報です。
目次
トラッキング付非化石証書とは?
トラッキング付非化石証書とは、非化石エネルギーの環境価値を証明する証書に、発電所の情報や電源種別などの詳細な属性情報(トラッキング情報)を付加した仕組みです。この証書を購入することで、企業は実質的に再生可能エネルギーを利用したとみなされ、CO2排出量の削減効果を得ることができます。 この仕組みは日本独自の制度として2021年に本格的に開始され、企業の脱炭素化への取り組みを促す重要な対策として位置づけられています。電力会社や新電力事業者を通じて購入でき、企業活動における温室効果ガス削減の実現に向けた有効な手段となっています。
これまでの非化石証書との違い
従来の非化石証書とトラッキング付非化石証書の主な違いは、発電所の産地や電源種別の情報が明確化されている点です。従来の証書では「再生可能エネルギー由来」という大まかな情報しか得られませんでしたが、トラッキング付きでは具体的にどの太陽光発電所や風力発電所で発電されたかを特定できます。 この違いにより、企業は自社の環境取り組みについてより詳細で説得力のある情報を投資家や顧客に提供できるようになりました。例えば、「北海道の風力発電所由来の電力を使用」といった具体的な説明が可能となり、企業のブランディング効果も向上します。 また、価格面でも違いがあります。トラッキング付非化石証書は、詳細な情報が付加されているため、従来の証書と比較して若干高めの単価設定となっています。しかし、その価値は情報の透明性と企業の信頼性向上において、追加負担に見合うものと考えられています。
非化石証書についてもっと知りたい方は、非化石証書とは?価格とFIT非化石証書、取引市場までわかりやすくをぜひ参考にしてください
これまでの非化石証書とトラッキング付非化石証書|比較表

トラッキング付非化石証書が生まれた経緯
トラッキング付非化石証書が生まれた背景には、国際的な脱炭素化の流れと企業の環境価値に対する需要の高まりがあります。特に、RE100やSBTといった国際イニシアティブへの参加企業が増える中で、より透明性の高い再生可能エネルギーの証明が求められるようになりました。 2018年頃から、従来の非化石証書では発電所の情報が不明確であることが問題視されており、企業からは「どこで作られた電気なのかを明確にしたい」という声が増えていました。このような社会環境の変化を受けて、経済産業省は非化石証書の制度見直しを行い、2021年からトラッキング情報を付加した新しい仕組みを開始しました。 この制度改善により、日本企業の国際的な環境取り組みへの参加が促進され、気候変動対策への貢献度も向上しています。今後も企業の脱炭素化ニーズの増加に対応するため、制度の充実と効率化が継続的に進められる予定です。
トラッキング付非化石証書の種類
トラッキング付非化石証書には、発電源別にいくつかの種類があります。主な種別として、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電由来の証書が存在します。企業は自社の環境方針や取り組み内容に応じて、適した電源種別の証書を選択できます。 FIT(固定価格買取制度)電源由来とFIP(フィードインプレミアム)電源由来の証書も区別されており、それぞれ異なる特長を持っています。FIT電源由来の証書は比較的安価で入手しやすい一方、FIP電源由来は市場価格の変動の影響を受けやすいものの、より市場メカニズムに即した価格形成となっています。 また、発電所の所在地による分類も可能で、地域密着型の環境取り組みを展開したい企業にとって有効な選択肢となっています。2024年以降は、さらに細分化された種類の証書が提供される予定で、企業のニーズに応じたより柔軟な活用が期待されています。
電源種別による分類

トラッキング付非化石証書のメリット
企業がトラッキング付非化石証書を導入することで得られる主なメリットは、環境価値の創造、コスト効率の向上、そしてステークホルダーとの関係強化です。これらのメリットは相互に関連し合い、企業の持続可能な成長を支える基盤となります。 証書の活用により、企業は追加的な設備投資を行うことなく、短期間で環境目標を達成できます。また、複雑な手続きを必要とせず、比較的簡単な方法で脱炭素化に取り組むことができるため、中小企業においても導入しやすい仕組みとなっています。 さらに、トラッキング情報の透明性により、企業の環境取り組みに対する信頼性が向上し、ESG投資の対象として選ばれやすくなるという副次的な効果も期待できます。
CO2排出量を削減できる
トラッキング付非化石証書を購入することで、企業は実質的にCO2排出量を削減できます。この仕組みでは、証書1kWh分につき、使用電力由来のCO2排出量をゼロとして計算できるため、スコープ2(間接的な温室効果ガス排出)の大幅な削減が実現できます。 具体的には、年間1万kWhの電力を使用している企業が、同量のトラッキング付非化石証書を購入した場合、電力使用に伴うCO2排出量を実質ゼロにできます。この効果は、企業の温暖化対策目標達成や、カーボンニュートラル宣言の実現に直接貢献します。 また、証書の活用により削減されたCO2排出量は、企業の環境報告書やサステナビリティレポートに記載でき、対外的な環境取り組みのアピールポイントとなります。投資家や取引先からの評価向上にもつながり、企業価値の向上が期待できます。
RE100に活用できる
RE100(Renewable Energy 100%)は、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブです。トラッキング付非化石証書は、このRE100の要件を満たすツールとして認められており、参加企業の目標達成を支援しています。 RE100への参加により、企業は国際的な脱炭素化の流れに積極的に関与していることを示すことができ、グローバル市場での競争力向上につながります。 特に、海外展開を行う日本企業にとって、RE100への参加は取引先や投資家からの信頼獲得に欠かせない要素となっています。 トラッキング付非化石証書を活用することで、企業は自社で再生可能エネルギー発電設備を設置することなく、RE100の要件を満たすことができます。これにより、初期投資負荷を抑えながら、迅速にRE100の目標達成が可能になります。
環境へ配慮していることをアピールできる
トラッキング付非化石証書の活用は、企業の環境への配慮を対外的にアピールする強力な手段となります。証書に含まれるトラッキング情報により、「どの発電所で、どの種類の再生可能エネルギーを使用しているか」を具体的に説明でき、説得力のある環境取り組み情報を提供できます。 このアピール効果は、企業のブランドイメージ向上に直結し、環境意識の高い消費者や取引先からの支持獲得につながります。また、ESG投資の観点からも、透明性の高い環境取り組みを行っている企業として評価され、資金調達面でのメリットも期待できます。 さらに、従業員の環境意識向上やモチベーション向上にも寄与し、企業の組織力強化にもつながります。社会全体の脱炭素化に貢献しているという実感を従業員が得ることで、企業への愛着や誇りが増し、人材の定着率向上や採用力の強化も期待できます。
トラッキング付非化石証書の見直しポイント
トラッキング付非化石証書制度は、運用開始以降の実証実験や市場の動向を踏まえて、継続的に見直しが行われています。主な見直しポイントとして、トラッキング対象の拡大、市場を介さない取引の活用促進、価格変動への対応などが挙げられます。 2026年に向けて予定されている制度改善では、より多様な電源種別への対象拡大や、企業ニーズに応じた柔軟な取引方法の導入が検討されています。これらの見直しにより、企業がより使いやすく、効果的に活用できる仕組みへの発展が期待されています。 企業は、これらの制度変更に適切に対応するため、最新の情報を定期的に確認し、自社の環境戦略との整合性を保つことが重要です。
トラッキングの対象について
現在のトラッキング対象は主要な再生可能エネルギー電源に限定されていますが、今後の見直しにより対象範囲の拡大が検討されています。具体的には、小規模な分散電源や新技術による発電設備も対象に含める方向で議論が進められています。 また、トラッキング情報の精度向上も重要な課題として認識されており、発電量の時間帯別データや気象条件との関連性など、より詳細な情報の提供が検討されています。これにより、企業はさらに具体的で説得力のある環境価値情報を活用できるようになります。 対象拡大に伴い、証書の種別も増加する予定で、企業の多様なニーズに応じた選択肢が提供されることになります。この変更により、より多くの企業がトラッキング付非化石証書を活用しやすくなり、社会全体の脱炭素化加速が期待されています。
市場を介さない取引って?
市場を介さない取引とは、発電事業者と需要家(企業)が直接契約を結び、証書を取引する方法です。従来の市場取引では、証書は一度市場に出された後、小売電気事業者を通じて企業に販売されていましたが、直接取引では中間マージンを削減し、より安価な価格での調達が可能になります。 この取引方法の利点は、価格の透明性向上と取引コストの削減です。企業は発電事業者と直接交渉することで、自社の予算や調達量に応じた柔軟な契約条件を設定できます。また、長期契約により価格の安定化も図ることができ、予算計画の精度向上にも寄与します。 ただし、直接取引には一定の専門知識と交渉力が必要であり、すべての企業に適した方法ではありません。企業規模や取引量、専門人材の有無などを総合的に考慮して、最適な取引方法を選択することが重要です。
トラッキング付非化石証書の活用法
トラッキング付非化石証書を効果的に活用するためには、企業の環境目標と証書の特性を適切に組み合わせることが重要です。活用法は企業の規模や業種、環境戦略によって異なりますが、段階的なアプローチを取ることで、無理なく導入を進めることができます。 具体的な活用ステップとして、まず現在の電力使用量とCO2排出量を把握し、削減目標を明確化します。次に、目標達成に必要な証書量を算出し、予算との調整を行います。その上で、適切な電源種別や調達方法を選択し、実際の購入に進むという流れが一般的です。 また、証書の活用効果を最大化するため、社内外への情報発信や、他の環境取り組みとの連携も重要な要素となります。
トラッキング情報割当優先順位とは
トラッキング情報割当優先順位とは、複数の企業が同じ発電所の証書を希望した場合に、どの企業に優先的に割り当てるかを決める仕組みです。この優先順位は、企業の環境取り組みの積極性や、長期的なコミットメント、取引量などを総合的に評価して決定されます。 優先順位の高い企業は、希望する発電所の証書を確実に調達できるメリットがある一方、優先順位の低い企業は別の発電所の証書で代替する必要が生じる場合があります。このため、企業は早期に調達計画を立て、適切な手続きを行うことが重要です。 また、優先順位制度により、環境取り組みに積極的な企業がより良い条件で証書を調達できる仕組みが構築されており、企業の脱炭素化への動機付けにも寄与しています。この制度を理解し、戦略的に活用することで、企業はより効果的な環境価値の調達が可能になります。
エネブリッジの非化石証書について
小売電気事業者であるエネブリッジは、企業のトラッキング付非化石証書調達を代行支援するサービスを提供しています。同社のサービスでは、企業のニーズに応じた最適な証書の選定から、複雑な手続きの代行、調達後のフォローまで、包括的なサポートが受けられます。 特に、中小企業や証書調達の経験が少ない企業にとって、専門知識を持つ仲介業者のサポートは非常に有効です。エネブリッジでは、企業の予算や環境目標に応じた最適な調達プランの提案を行い、効率的な証書活用を実現しています。 また、同社では市場動向の情報提供や、制度変更への対応支援も行っており、企業が安心して継続的に証書を活用できる環境を整備しています。このような専門サービスの活用により、企業は本業に集中しながら、確実に環境価値を調達することが可能になります。
まとめ
トラッキング付非化石証書は、企業の脱炭素化を実現する有効なツールとして、その重要性が高まっています。従来の非化石証書と比較して透明性が向上し、RE100などの国際的なイニシアティブにも対応できることから、多くの企業にとって魅力的な選択肢となっています。 企業がこの証書を活用する際は、自社の環境目標と予算を明確化し、適切な種類と調達方法を選択することが重要です。また、制度の継続的な見直しや改善に対応するため、最新の情報収集と戦略の見直しを定期的に行うことが求められます。 今後、脱炭素化への社会的な要請はさらに強まることが予想され、トラッキング付非化石証書の活用は企業の競争力維持に不可欠な要素となるでしょう。早期の導入検討と戦略的な活用により、企業は環境価値と経済価値の両立を実現し、持続可能な成長を達成することができるでしょう。
【業界最短4年の契約期間】工事費のみで始める太陽光発電 ソーラーメイトみらい
ソーラーメイトみらいは、太陽光発電を工事費のみで導入できるサービスです。
契約期間中、昼間の電気代は大手電力会社より安く、システムを購入するより手軽でお得に太陽光をスタートできます!