2025年08月22日

非化石証書とは?価格とFIT非化石証書、取引市場までわかりやすく
脱炭素経営で注目なのが、FIT非化石証書、非FIT非化石証書などの「非化石証書」です。これらは再生可能エネルギーを利用していることを証書化したもので、2018年に創設されました。この記事では非化石証書の種類や活用法、取引市場まで解説します。
目次
非化石証書について
非化石証書とは、再生可能エネルギーや原子力発電など、CO2を排出しない非化石電源から生み出される環境価値を証書化した制度です。日本のエネルギー政策において、2030年の温室効果ガス削減目標達成に向けて重要な役割を果たしています。環境価値を証書化した仕組みとは
この制度は2018年に創設され、電力の環境価値を電気と分離して取引可能にすることで、企業の脱炭素の取り組みを効率的に支援する仕組みとなっています。証書を購入することで、実質的に再生可能エネルギーを利用したとみなされ、CO2排出量の削減効果を得ることができます。 企業にとって非化石証書は、自社の脱炭素対策を推進する上で欠かせない手段の一つです。特に、RE100などの国際的なイニシアチブへの参加や、ESG投資家からの評価向上を目指す企業にとって、非化石証書の活用は戦略的に重要な意義を持ちます。
非化石証書の種類と特徴を詳しく解説
非化石証書は主に3つの種類に分類されます。①FIT非化石証書、非FIT非化石証書(②再エネ指定あり・③なし)です。それぞれの特徴を理解し、目的に応じた選択をしましょう。
①FIT非化石証書の特徴と活用方法
FIT非化石証書は、固定価格買取制度(FIT制度)の対象となる再生可能エネルギー発電設備から生まれる環境価値を証書化したものです。この種別の証書は、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、水力発電、地熱発電などのFIT認定設備が発電源となっています。 FIT非化石証書の価格は比較的安定しており、企業が導入しやすい特長があります。ただし、FIT制度による買取費用の一部が国民負担となっているため、追加性の観点で議論されることもあります。それでも、CO2削減効果は確実に得られるため、多くの企業が活用している証書です。 企業がFIT非化石証書を購入する場合、電力会社との相対契約や市場での入札により取得できます。2024年からは非化石証書に発電設備の詳細情報を紐づける、トラッキング情報の付与により、発電設備の詳細情報も把握できるようになっています。
②非FIT非化石証書(再エネ指定あり)のメリット
非FIT非化石証書(再エネ指定あり)は、FIT制度の対象外となる再生可能エネルギー発電設備から生まれる環境価値を証書化したものです。この種類の証書は、追加性の観点で高く評価されており、RE100などの国際的な取り組みでも認められています。 この証書の大きなメリットは、発電事業者の新たな収益源となることで、再生可能エネルギーの導入拡大を後押しする効果があることです。企業側にとっても、より価値の高い環境価値を取得できるため、ステークホルダーへのアピール効果が期待できます。 価格はFIT非化石証書よりも高めに設定されることが多いですが、その分、企業の本格的な脱炭素への取り組みを示すことができます。投資家や顧客からの信頼向上につながる重要な証書といえるでしょう。
③非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の位置づけ
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)は、原子力発電などの非化石電源から生まれる環境価値を証書化したものです。この種別の証書は、CO2削減効果は得られますが、再生可能エネルギー由来ではないという特徴があります。 価格面では最も安価な選択肢となることが多く、コスト効率を重視する企業にとって有効な手段です。ただし、RE100などの国際的なイニシアチブでは再生可能エネルギー由来の証書が求められるため、企業の目的に応じて適切に選択する必要があります。 この証書も温室効果ガス削減には確実に貢献するため、段階的に脱炭素を進める企業の最初のステップとして活用されることも多くなっています。
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エネルギー取引市場における非化石証書取引の仕組み
市場取引と価格変動のメカニズム
非化石証書の取引は、主にJEPX(日本卸電力取引所)が運営する非化石価値取引市場で行われています。この市場では、シングルプライスオークションという方式による入札が実施され、証書の価格が決定されます。 市場での取引価格は、需要と供給のバランスによって変動します。企業の脱炭素への取り組みが加速する中で、証書への需要は年々拡大しており、価格の上昇傾向が見られています。特に、非FIT非化石証書(再エネ指定あり)については、高い価値が認められ、価格も高めに推移しています。 企業が証書を購入する際は、この価格変動を考慮した計画的な調達が重要です。年間を通じて安定的に証書を確保するため、複数回の入札に参加することが推奨されています。
相対契約による証書調達方法
市場取引以外にも、電力会社や証書仲介事業者との相対契約により非化石証書を調達する方法があります。この方法では、長期的な価格の安定性や、特定の発電設備からの証書を指定できるなどのメリットがあります。 相対契約では、企業のニーズに応じてカスタマイズされたサービスを受けることができます。例えば、特定の地域の風力発電設備からの証書や、自社の電力使用パターンに合わせた証書の供給スケジュールなどを調整できます。 また、電気と証書をセットで提供するメニューも多くの電力会社が用意しており、企業の負担を軽減しつつ、確実に環境価値を取得できる仕組みが整備されています。
トラッキング付非化石証書の重要性と活用効果
トラッキングとは、非化石証書に発電設備の詳細情報を紐づける仕組みで、証書の透明性と信頼性を大幅に向上させるための機能です。トラッキング情報が提供する価値
2024年からの制度変更により、非化石証書にトラッキング情報が付与されるようになりました。このトラッキング情報により、証書の発電設備、発電時期、発電量などの詳細な情報を把握できるようになっています。 トラッキング情報の提供により、企業は自社が調達した環境価値の由来を明確に説明できるようになりました。これは、ステークホルダーへの報告や、国際的な環境イニシアチブへの対応において非常に重要な要素です。 また、産地指定やエネルギー源の指定など、より詳細な条件での証書調達が可能となり、企業の環境戦略に合わせたきめ細かな活用ができるようになっています。
情報の透明性向上が企業にもたらす効果
トラッキング情報の導入により、非化石証書の透明性が大幅に向上しました。これにより、企業の環境報告書やサステナビリティレポートにおいて、より具体的で信頼性の高い情報を開示できるようになっています。 投資家やESG評価機関からの信頼獲得においても、トラッキング情報は重要な役割を果たします。環境価値の調達状況を明確に示すことで、企業の本格的な脱炭素への取り組み姿勢をアピールできます。 さらに、顧客や取引先からの環境配慮への要求に対しても、具体的なデータに基づいて対応できるため、ビジネス機会の拡大にもつながる可能性があります。
企業が非化石証書を購入する具体的な方法
電力会社からの一体型メニューによる調達
最も簡単で確実な非化石証書の調達方法は、電力会社が提供する電気と証書がセットになったメニューの利用です。この方法では、電力契約と同時に必要な環境価値も自動的に取得できるため、企業の負担が最小限に抑えられます。 多くの電力会社では、企業のニーズに応じて様々なメニューを用意しています。100%再生可能エネルギー由来のプランから、段階的に環境価値の比率を高めていくプランまで、企業の現状と目標に合わせて選択できます。 このメニューを利用する企業は年々増えており、特に中小企業にとっては管理の簡便性が大きなメリットとなっています。電力料金と一体化された請求により、コスト管理も効率化できます。
市場での直接入札による購入方法
より戦略的に証書を調達したい企業は、JEPX の非化石価値取引市場での直接入札に参加することができます。この方法では、企業が希望する条件や価格で証書を調達できる可能性があります。 市場での入札参加には、事前の申し込みと条件確認が必要です。入札は定期的に実施されており、企業は年間の調達計画に基づいて参加するオークションを選択できます。 入札による購入では価格の透明性が高く、市場価格での調達が可能です。また、必要な分だけの購入ができるため、無駄のない効率的な調達が実現できます。
仲介事業者を通じた柔軟な調達
証書の仲介事業者を利用することで、より柔軟で専門的なサービスを受けることができます。仲介事業者は、企業の具体的なニーズに応じて最適な証書の組み合わせを提案し、調達から管理まで一貫してサポートします。 仲介事業者のサービスでは、複数の証書種別を組み合わせた最適化提案や、長期契約による価格安定化、トラッキング情報の詳細分析なども提供されています。 特に、複雑な環境目標を設定している企業や、国際的な展開を行っている企業にとって、専門的な知見を持つ仲介事業者のサポートは非常に有効です。
非化石証書活用のメリットと企業価値向上効果

脱炭素経営による企業イメージの向上
非化石証書の活用により、企業は確実にCO2排出量を削減でき、脱炭素経営への取り組みを具体的に示すことができます。これは、企業のブランドイメージ向上に直結し、顧客や取引先からの信頼獲得につながります。 近年、消費者の環境意識の高まりにより、環境配慮企業への支持が拡大しています。非化石証書を活用した脱炭素の取り組みをアピールすることで、商品やサービスの差別化を図ることも可能です。 また、採用活動においても、環境意識の高い優秀な人材の獲得に有利に働くことが期待されています。企業の社会的責任を果たす姿勢は、従業員のモチベーション向上にも寄与します。
ESG投資家からの評価獲得
ESG投資の拡大により、投資家は企業の環境への取り組みをより重視するようになっています。非化石証書の活用は、環境面での具体的な成果を示す重要な指標となり、投資家からの高い評価を得ることができます。 機関投資家の多くは、投資先企業に対してSBTやRE100などの国際的なイニシアチブへの参加を求めています。非化石証書は、これらの目標達成において不可欠な手段であり、投資家の期待に応える重要なツールです。 ESG評価の向上は、資金調達コストの低減や、株価の安定的な成長にもつながる可能性があります。長期的な企業価値の向上において、非化石証書の戦略的活用は重要な投資といえるでしょう。
国際的な環境イニシアチブへの対応支援
RE100、SBT、CDPなどの国際的な環境イニシアチブへの参加企業数は年々増加しています。これらのイニシアチブでは、再生可能エネルギーの利用や温室効果ガス削減目標の設定が求められており、非化石証書はその達成に重要な役割を果たします。 特にRE100では、100%再生可能エネルギー利用の目標達成に向けて、非化石証書(再エネ指定あり)の活用が認められています。国際基準に適合した証書の利用により、グローバル企業としての責任を果たすことができます。 これらのイニシアチブへの参加により、国際的なサプライチェーンにおける競争優位性を確保し、海外展開の機会拡大も期待できます。
非化石証書導入時の注意点と対策
価格変動リスクへの対応策
非化石証書の市場価格は需給バランスにより変動するため、企業は価格変動リスクを適切に管理する必要があります。特に、脱炭素への取り組みが加速する中で、証書需要の急増により価格が上昇する可能性があります。 価格変動への対策として、複数回の入札への分散参加や、長期契約の活用が有効です。また、予算管理においては、価格変動を見込んだ余裕のある計画を策定することが重要です。 さらに、複数の調達方法を組み合わせることで、価格リスクを分散させることも可能です。市場調達と相対契約を適切に組み合わせ、安定的な証書確保を図ることが推奨されます。
証書の種別選択における注意点
企業の目的や参加する環境イニシアチブに応じて、適切な証書種別を選択することが重要です。例えば、RE100参加企業は再エネ指定ありの証書が必要ですが、単純なCO2削減が目的であれば指定なしの証書でも効果を得られます。 証書選択の際は、コストと効果のバランスを慎重に検討する必要があります。最も安価な証書を選択することでコストを抑えられますが、ステークホルダーへのアピール効果は限定的になる可能性があります。 また、将来的な環境目標の変更や、新たなイニシアチブへの参加可能性も考慮して、柔軟性のある証書ポートフォリオを構築することが重要です。
使用期限と管理体制の整備
非化石証書には使用期限が設定されており、期限内に適切に消費する必要があります。証書の管理体制を整備し、使用状況を定期的に確認することで、期限切れによる無駄を防ぐことができます。 証書管理では、購入量と実際の電力使用量のバランスを適切に保つことが重要です。過剰な購入は無駄なコスト増加につながり、不足は環境目標の未達成リスクを生みます。 効果的な管理のためには、専門的な知識を持つ担当者の配置や、外部専門家との連携も検討する価値があります。複雑化する制度に対応するためには、継続的な情報収集と学習が不可欠です。
2024年制度変更の詳細と企業への影響
トラッキング情報割当ルールの変更点
2024年8月から実施された制度変更により、トラッキング情報の割当ルールが大幅に見直されました。これにより、証書購入企業はより詳細な発電設備情報を取得できるようになり、環境価値の透明性が向上しています。 新しいルールでは、発電設備の所在地、発電技術、運転開始年などの情報が証書に紐づけられます。企業はこの情報を活用して、自社の環境戦略により適合した証書を選択できるようになりました。 また、情報の精度向上により、国際的な環境報告基準への対応も容易になり、グローバル企業の報告負担軽減にも寄与しています。 ト
費用体系と証明書名称の変更
制度変更に伴い、証書の費用体系も見直されました。トラッキング情報の付与に伴う追加コストが発生する一方で、情報の価値向上により、企業にとってのメリットも拡大しています。 証明書の名称も変更され、より分かりやすい表示となりました。これにより、企業の証書管理や報告業務の効率化が期待されています。 費用の変化については、長期的には証書の品質向上によるメリットが上回ると考えられており、企業の戦略的な活用により投資効果を最大化することが重要です。
証書発行の必須化と利用方法の拡大
新制度では、すべての非化石証書について電子証書の発行が必須となりました。これにより、証書の管理や取引の透明性が大幅に向上し、不正利用の防止にも効果を発揮しています。 利用方法についても選択肢が拡大され、企業の多様なニーズに対応できるようになりました。部分的な利用や、複数の用途での活用など、より柔軟な運用が可能となっています。 これらの変更により、企業は自社の事業特性や環境戦略に応じて、より効果的に非化石証書を活用できるようになり、脱炭素経営の実現に向けた選択肢が大幅に拡大しました。
まとめ
非化石証書は、企業の脱炭素経営を実現する上で極めて重要な手段ということをお伝えしました。近年では、制度の継続的な改善により、透明性と利便性が向上し、企業にとってより活用しやすい仕組みとなってきています。 企業が非化石証書を効果的に活用するためには、自社の環境目標と事業戦略を明確にし、適切な証書種別の選択と調達方法の検討が不可欠です。また、価格変動や制度変更にも柔軟に対応できる管理体制の構築が重要となります。 今後、脱炭素への社会的要請はさらに強まることが予想されます。非化石証書の戦略的活用により、企業は環境責任を果たしながら、持続的な成長と競争優位性の確保を実現できるでしょう。早期の取り組み開始により、将来の脱炭素社会において優位なポジションを築くことができるでしょう。
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