2025年09月22日
災害時に強い蓄電池とは?在宅避難の備えと選び方【2025】
【保存版】災害時に強い蓄電池ガイド。停電対策の基本から、太陽光との併用、必要容量と出力の決め方、200V家電対応、切替時の瞬断、安全運用や72時間モデルまで網羅。集合住宅の工夫や発電機の注意、補助金の確認ポイントも。2025年版、実践解説。
目次
蓄電池は災害時に本当に役立つ?【先に結論】
「蓄電池 災害時」で検索される方の多くは、
「そもそも本当に役立つのか」「どれくらいの時間もつのか」「どのタイプを選べばいいか」を知りたい段階です。
結論から言うと、太陽光発電+家庭用蓄電池の組み合わせは、停電が数日続くような大規模災害でも在宅避難を現実的にする、とても有効な備えです。
- ① 停電時も生活インフラを最低限キープ
冷蔵庫・照明・通信機器など「命と健康に直結する家電」を優先して動かせます。 - ② 太陽光と組み合わせれば“燃料切れ”になりにくい
昼は発電しながら余剰分を蓄電、夜は蓄電池から放電するサイクルで、長期停電にも対応しやすくなります。 - ③ 発電機より安全・静音で、屋内でも使いやすい
排気ガスが出ず騒音も少ないため、発電機と比べてご家庭・近隣ともに安心して使いやすいのが特徴です。
以下では、災害時にどれくらい使えるのか、どんなタイプを選べばよいのかを、できるだけ具体的に解説していきます。
災害時に蓄電池は何時間もつ?容量別のざっくり目安
実際にどれくらいの時間もつのかは「使う家電」と「季節」で大きく変わりますが、
標準的な4人家族・電気の使い方を前提にしたざっくり目安は以下の通りです。
| 蓄電容量の目安 | 主な使い方 | 停電時のイメージ |
|---|---|---|
| 約4〜5kWh | 冷蔵庫+照明数カ所+スマホ/Wi-Fi | ほぼ1日(24時間前後)を「最低限の生活レベル」で過ごせる |
| 約7〜9kWh | 上記+テレビ or 扇風機/小型エアコンなど | 優先順位をつければ、2日程度を在宅避難でしのげる |
| 約10〜12kWh | 冷蔵庫+照明+通信+エアコン1台など | 太陽光発電と組み合わせれば、3日程度の長期停電にも現実的に対応可能 |
※実際の持ち時間は、季節・天候・太陽光の有無・使う家電の数によって大きく変化します。
本記事後半では、太陽光5kW+蓄電池10kWhを想定した「72時間モデル」の詳細なシミュレーションも掲載しています。
定置型とポータブル、災害時はどちらを選ぶべき?
蓄電池といっても、大きく分けると次の2タイプがあります。
- 家庭用の「定置型蓄電池」…太陽光発電と連携し、分電盤経由で家全体/一部の回路に給電するタイプ。
- 持ち運べる「ポータブル蓄電池」…コンセントやUSBから直接家電をつなぐタイプ。キャンプや車中泊にも使える。
本記事では、在宅避難を前提とした「定置型+太陽光」を中心に解説します。
一方で、賃貸住宅やマンションで「まずは防災用に1台持っておきたい」という方には、ポータブル蓄電池の選び方もあわせてご覧いただくとイメージしやすくなります。
前提条件と試算の透明性について
本記事では、蓄電池の災害時運用について実用的な情報提供を行うため、以下の前提条件を設定しています。
- 周囲温度:25℃想定(性能に影響するため明記)
- DoD(放電深度):80-90%(リチウムイオン電池標準値)
- PCS効率:95%前提
- 家電消費電力:一般的な製品仕様値を参照
- 季節変動:夏季・冬季の負荷差を考慮した試算
これらの条件下での試算結果であることを予めご了承ください。
太陽光+蓄電池が最適解
災害時における電力確保の課題に対して、太陽光発電システムと定置型蓄電池の組み合わせが最も実用的な解決策となります。この結論に至る理由は、昼間の発電能力と夜間の蓄電活用により、長期停電にも対応できる持続可能性にあります。
昼発電・夜蓄電(自立運転)
太陽光発電と蓄電池のシステムは、停電時に自立運転モードに自動切替することで、家庭への電力供給を継続します。ただし重要なポイントとして、この切替時には瞬間的な停電(瞬断)が発生します。これは無停電電源装置(UPS)とは異なる特性であり、精密機器を使用する際は注意が必要です*¹。
停電検知後約5秒前後で自立運転へ移行し、復電時は数分~最大5分で自動復帰します(機種差あり)。昼間は太陽光パネルが発電した電力を直接使用し、余剰分を蓄電池に貯めます。夜間や悪天候時は、蓄電池から放電して家電製品を稼働させる仕組みです。この昼夜のサイクルにより、燃料補給の心配なく長期間の電力確保が可能となります。
自動切替機能により、在宅避難中の手動操作は基本的に不要ですが、切替時の瞬断は避けられないため、重要なデータは事前にバックアップしておくことが推奨されます*²。
選定ポイント(容量・出力・200V・負荷方式)
蓄電池選定時に確認すべき最重要項目は以下の5つです。
| 項目 | 確認ポイント | 災害時への影響 |
|---|---|---|
| 容量(kWh) | 何時間電気を貯められるか | 長期停電への耐久性 |
| 出力(kW・kVA) | 同時使用できる家電の総電力 | 使える家電の種類・数 |
| 200V家電対応 | IH・エアコン・エコキュート等 | 冷暖房・調理の継続性 |
| 特定負荷or全負荷 | 停電時に使える回路の範囲 | 生活の利便性 |
| 自動切替 | 手動操作なしで自立運転 | 夜間停電時の安全性 |
容量は「何時間使えるか」、出力は「どれだけの家電を同時使用できるか」を決定します。例えば、10kWhの容量があっても出力が2kWの場合、エアコン(1.5kW)と電子レンジ(1.0kW)の同時使用時は出力不足となる可能性があります。
200V家電への対応では、自立出力は1.5-2kVA~5.9kVAと幅があり、200V機器を使うなら4kVA以上が目安となります。対応機種では停電時自立出力4kVA以上の仕様が代表例です*³。
ポータブル・発電機の適不適
ポータブル電源単体や発電機単体には、それぞれ災害時運用における制約があります。
ポータブル電源の制約
- 容量が小さく、長期停電への対応力が限定的
- ソーラー充電機能なしの機種は燃料切れ同様の問題
- 出力不足により大型家電(エアコン等)が使用不可
- 室内での安全な使用は可能だが、容量の制約が大きい
発電機の制約
- 屋内・半屋内は絶対禁止(一酸化炭素中毒のリスク)*⁴
- 窓・ドア・換気口から十分離れた屋外(例:3m以上)での使用が必要
- 燃料(ガソリン・ガス)の調達と保管の問題
- 運転時の騒音が近隣トラブルの原因となる可能性
- 排気ガスによる環境への影響
消費者庁の注意喚起によると、発電機による一酸化炭素中毒事故は毎年発生しており、「屋外の開口部から離れた場所での使用」が厳格に求められています⁴。また、長期停電時の燃料調達は困難を極めるため、持続可能性の観点でも課題があります。
これらの制約を総合的に検討すると、太陽光発電との併用による定置型蓄電池が、安全性・持続性・利便性のバランスに最も優れた選択となります。ただし、達成可否は晴天率・負荷・機器構成により異なることを考慮した設計が重要です。
- 出典・参考資料
-
*¹ オムロン ソーシアルソリューションズ「マルチ蓄電プラットフォーム カタログ」
*² 京セラ「蓄電池の災害時の活用方法と選び方」(2023/10/13)
*³ オムロン ソーシアルソリューションズ「停電時自立出力と200V家電対応」技術資料
*⁴ 消費者庁「携帯発電機やポータブル電源の事故に注意!」(2021/08/25)
災害と停電の現実
災害による大規模停電は決して珍しい出来事ではありません。過去の事例を検証することで、蓄電池による在宅避難の必要性がより明確になります。
過去の主な停電例
2019年台風15号(房総半島台風)の停電被害:
経済産業省の検証報告書によると、千葉県を中心に最大約93.5万戸が停電し、一部地域では復旧まで2週間以上を要しました*⁵。特に山間部や沿岸部では、送電線の復旧工事が難航し、長期停電を余儀なくされた世帯が多数発生しました。
復旧日数の地域差:
- 市街地:3-5日程度
- 郊外・山間部:7-14日
- 一部離島・沿岸部:14日超
2016年熊本地震の停電被害:
内閣府の災害記録によると、最大約47.7万戸が停電し、震度7を記録した益城町周辺では復旧まで1週間以上かかった地域もありました*⁶。地震による設備損壊は台風とは異なる復旧の困難さがあり、余震の継続により復旧作業が度々中断されました。
これらの事例から、復旧までの期間が予測困難であることが分かります。「明日には復旧するだろう」という楽観的な見通しが通用しない現実があり、最低でも72時間、場合によっては1-2週間の電力確保を想定した準備が必要です。
在宅避難の重要性
災害時の避難所生活と比較して、在宅避難には以下の明確なメリットがあります。
| 通信手段の確保 | 携帯電話・Wi-Fiルーターの充電継続により、安否確認や情報収集が可能です。災害時は通信インフラも不安定になるため、複数の通信手段を維持できることは生命線となります。 |
|---|---|
| 食品保存の継続 | 冷蔵庫の運転継続により、食料の腐敗を防げます。特に乳幼児や高齢者がいる家庭では、適切な食品保存は健康維持に直結します。停電による食中毒のリスクを回避できることは重要な安全対策です。 |
| 冷暖房による健康管理 | 夏季の熱中症、冬季の低体温症リスクを軽減できます。避難所では空調管理が困難な場合が多く、特に体温調節機能が低下している高齢者には生命に関わる問題となります。 |
| 医療機器の継続運転 | 在宅酸素療法器、CPAP(睡眠時無呼吸症候群治療器)、電動ベッドなど、生命維持や生活の質に欠かせない医療機器を継続運転できます*⁷。 |
- 出典・参考資料
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*⁵ 経済産業省「台風15号に伴う停電復旧プロセス等に係る検証」(2019/10/03)
*⁶ 内閣府「熊本地震 ライフライン被害」防災ポータルサイト
*⁷ 東京ガス みらいほ「蓄電池が災害時に果たす役割や選び方」(2024/08/26)
*⁸ 同上