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2024年09月18日

営農型の太陽光発電とは?農業と再エネの融合で収入を多角化

営農型の太陽光発電とは?農業と再エネの融合で収入を多角化

農業とエネルギー生産を同時に行う「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」が、近年注目を集めています。農地の有効活用を図りながら、農家に新たな収入源を提供するというメリットがあり、持続可能な農業とエネルギー供給を実現できる可能性があります。本記事では、営農型太陽光発電の特徴とその利点について詳しく解説します。

営農型太陽光発電のしくみとは

営農型太陽光

営農型太陽光発電は、農地の一時転用許可を得て、農地の上空に太陽光パネルを設置し、発電を行う仕組みです。従来の太陽光発電と異なる点は、農地を活用しながら発電を行うことです。


農地の上に簡易な支柱を立て、その上に太陽光パネルを設置するため、パネルの下では通常の農作物の栽培を続けることができます。

営農型太陽光発電が注目される背景

近年注目されている背景には、大きく二つの要因があります。


一つは、再生可能エネルギーへの関心の高まりです。地球温暖化やエネルギー問題が深刻化する中、太陽光発電のようなクリーンなエネルギーへの需要がますます高まっています。


二つ目は、農業を取り巻く環境の変化です。少子高齢化による農業従事者の減少や、耕作放棄地の増加など、農業は様々な課題を抱えています。


営農型太陽光発電は、収入源の多角化によって農家の経営基盤を強化し、経営を安定化させる効果があります。また、地域経済の活性化にも貢献することで、地域社会の持続可能な発展にも貢献します。


メリット①農地の有効活用

耕作放棄地を再生できる

耕作放棄地

農地は、農作物を育てるための貴重な資源です。しかし、少子高齢化や都市部への人口流出に伴い、日本では多くの農地が耕作放棄地となってしまっています。営農型太陽光発電は、このような農地を再び活用するための有効な手段となります。

農業生産性の向上

営農型太陽光発電は、単に農地を有効活用するだけでなく、農業生産性の向上にも貢献する可能性があります。太陽光パネルが作る日陰は、高温多湿な日本の夏場において、一部の作物の生育を助ける効果があることが知られています。例えば、レタスやイチゴなど、日陰を好む作物の栽培に適しており、品質向上や収穫量の増加が期待できます。


また、太陽光パネルの下は、土壌の温度上昇が抑えられるため、土壌の乾燥を防ぎ、作物の生育を安定させる効果も期待できるほか、鳥害や虫害を防ぐ効果も見込まれています。

メリット②収入の多様化

安定した収入源を確保できる

農業は天候や市場価格の変動に大きく影響されるため、安定した収入を確保するのが難しい職業です。しかし、営農型太陽光発電を導入することで、農業と発電という二つの収入源を持つことが可能になります。


太陽光発電による売電収入は、農家にとっての新たな経済的支柱となります。太陽光パネルで発電した電力を電力会社に売電することで、毎月安定した収入を得ることができ、農業収入と合わせることで、経営の安定化が図れます。

経営のリスク分散になる

営農型太陽光発電は、農業経営のリスク分散にも有効です。農業は、病害虫、自然災害、市場価格の変動など、様々なリスクに常にさらされています。これらのリスクによって農業収入が減少した場合でも、売電収入があることで、収益の安定化を図ることができます。


また、太陽光発電は、農業とは異なる事業であるため、両者のリスクは相関性が低いと考えられます。このように性質の異なる収入源を持つことで、全体的な経営リスクを分散させる効果が期待できます。 特に、農業に依存している地域では、収入源の多様化が地域経済の活性化にも寄与するでしょう。

メリット③資産価値の向上

土地の価値向上

太陽光発電システムを設置した農地は、単なる農地ではなく、エネルギーを生み出す資産としての価値を持つようになります。再生可能エネルギーへの関心の高まりや、政府の支援策など、社会的な状況の変化に伴い、太陽光発電システムを持つ土地の価値はますます高まることが期待されます。将来的な土地の売却や相続を考えた場合、太陽光発電システムの存在は、土地の価格交渉において有利に働く可能性があります。

自家消費で電気代を節約

太陽光発電による供給は、将来的なエネルギーコストの削減にも寄与します。自家消費型の太陽光発電システムを導入すれば、農業経営に必要な電力を自ら賄うことができるため、エネルギーコストの削減が可能です。また、余剰電力を売電することで、さらなる収益を得ることもできます。

営農型太陽光発電のデメリット

初期投資の負担

営農型太陽光発電の導入には、太陽光パネルや架台などの設備費用だけでなく、設置工事費も必要となり、高額な初期投資が求められます。中小規模の農家にとっては、この初期費用が大きな負担となる可能性があります。また、補助金制度を活用しても、自己資金が必要となるケースが多く、資金調達に苦労する農家も少なくありません。

制度の整備不足

現時点では、農地転用に関する規制や、売電制度との連携など、具体的な運用基準が明確になっていない部分が多く、事業者にとっては不透明な部分が多いのが現状です。


例えば、農地を太陽光パネル設置のために一時的に転用する場合、その手続きには平均1〜2ヶ月を要し、地域によっては最大6ヶ月かかるケースもあります。 また、売電制度に関しても、太陽光発電による収入と農業収入との関係性や、税制上の優遇措置など、明確なガイドラインが不足しているため、事業者は年間の売電収入を正確に見積もることが困難です。

自然災害リスク

台風や豪雨などの自然災害によって、太陽光パネルが破損したり、倒壊したりするリスクがあります。特に、台風シーズンには、強風や飛来物による被害が懸念されます。また、大規模な自然災害が発生した場合、復旧に時間がかかる可能性があり、その間、売電収入が途絶えてしまうリスクも考えられます。

営農型太陽光発電の導入事例とは

ハウステンボスのブルーベリー観光農園

ハウステンボスのブルーベリー観光農園

引用:ハウステンボス株式会社プレスリリース


ハウステンボスのブルーベリー観光農園は、国内初の自家消費型の大型営農型太陽光発電を導入し、19品種300本のブルーベリーを栽培しています。ブルーベリーは強い日光に弱い特徴がありますが、発電設備が適度に日光を防ぐため、問題なく発育するのです。

株式会社流通サービスの茶葉栽培

環境への配慮と持続可能な茶葉栽培の重要性に着目し、茶農家として全国で初めて営農型太陽光発電を導入しました。太陽光パネルによる日陰効果が茶葉の品質向上に繋がり、より高品質な茶葉の生産が可能になったそうです。 また、オーガニック栽培と太陽光発電を組み合わせた取り組みは、海外のバイヤーから高い評価を得ています。

海外における営農型太陽光発電の導入事例

日本では営農型太陽光発電が注目されていますが、海外でも「Agrivoltaics(アグリボルタイクス)」とよばれ、多様な取り組みが進められています。各国や地域によって気候条件や農業のスタイル、政策が異なるため、それぞれの特性に応じた独自のアプローチが展開されています。


韓国では、2030年までに10GW規模の営農型太陽光発電の導入を目指すことを政府が決めています。また、中国には世界最大規模の営農型太陽光発電所「バオフェンPVパーク」があり、中国でよく食されているクコの実を栽培しています。


参照:日経クロステック

参照:ソーラーシェアリング推進連盟

今後の展望

制度の整備と普及の加速

今後、農地転用や売電などに関する規制が緩和され、手続きが簡素化されることで、より多くの事業者が参入しやすくなると見込まれています。また、国や地方自治体による補助金制度の拡充も期待されており、導入コストの削減につながるでしょう。 さらに、地域ごとの制度の統一が進めば、事業者は地域を選ばずに展開できるようになり、普及が加速すると考えられます。

技術革新と多様な活用方法

太陽光パネルの変換効率向上や蓄電池との連携など、技術革新が進むことで、営農型太陽光発電の効率や適用範囲が向上します。蓄電池と連携できれば、発電した電力を貯蔵し、需要に合わせて利用することが可能となるため、地域の電力の安定化に貢献します。

社会的な課題解決への貢献

営農型太陽光発電は、再生可能エネルギーの導入拡大による脱炭素化、地域経済の活性化、食料自給率の向上など、様々な社会的な課題解決に貢献する可能性を秘めています。耕作放棄地の有効活用や、多品目栽培の促進など、食料自給率向上にも貢献することが期待されます。


一方で、さらなる普及には、環境への影響や地域住民との共存など解決すべき課題も残されています。これらの課題を克服することで、全国各地で営農型太陽光発電は発展を遂げるでしょう。

まとめ

営農型太陽光発電は、農業とエネルギー生産を融合させた新しい形態の農業です。この取り組みにより、農地の有効活用、収入の多様化、耕作放棄地の解消、資産価値の向上が実現し、農家の経営を安定させることが可能です。日本では、営農型太陽光発電が注目されるようになり、持続可能な農業の推進やエネルギー問題の解決に向けた一助となっています。農業+発電のダブル収入で経営の安定化が実現する営農型太陽光発電は、付加価値の高い農業として国も注目しているのです。

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