2024年01月12日
アンモニア発電とは?環境への影響と取り組みについてわかりやすく解説!
地球温暖化の影響を受けて、世界各国はカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを強化しています。石油や石炭などの従来のエネルギー源に代わる新しいエネルギーを模索する中、アンモニアが特に注目されています。
目次
アンモニアの特性と種類について解説
アンモニアとは?基本的な特性もご紹介
アンモニアは、無色で強い刺激臭を持つ気体で、主に窒素原子と水素原子から成り立っています。アンモニアには幅広い用途がありますが、中でも肥料や化学原料として、現在世界中で広く利用されています。
アンモニアは比較的低温で液体になる特性があり、この特性は運搬や貯蔵における大きなメリットとされています。世界中で船舶による大量輸送も行われており、使い勝手の良さが注目されています。
実は、私たちの身の回りにある化学製品の原料として頻繁に用いられています。 例えば、衣料品に用いられるナイロンでは、中間原料としてアンモニアが用いられています。また、アクリロニトリルと呼ばれる合成ゴムの主原料となる物質も、アンモニアを原料としています。他にも、アンモニアは植物を育てる肥料としても広く活用されています。
- 身近で使われているアンモニアは何があるの?
- 肥料になる硝酸アンモニウム、寒い時期に欠かせない暖かい素材やひんやりしてくれるクール素材の洋服に使われる合成繊維、お菓子作りに使うベーキングパウダーなど、アンモニアから作られる物質はあらゆる場面で活躍しています。他にも、パーマ液やヘアカラー剤や、昔から使われている虫刺され薬など、身近なものに含まれています。 参考:一般社団法人 グリーン燃料アンモニア協会
アンモニアの3つの種類とそれぞれの特徴
アンモニアの種類は、製造プロセスで使われるエネルギー源と環境への影響の度合いに基づいてグリーンアンモニア、ブルーアンモニア、グレーアンモニアに区別されます。 また、グリーンアンモニアが最も環境に優しい選択肢であり、脱炭素社会の実現に向けて重要な位置を占めています。アンモニアの種類とそれぞれの特徴についてご説明します。
アンモニア発電がもたらす環境への影響とメリット
なぜアンモニア発電が注目を集めているのか理由をご紹介します。
燃やしても二酸化炭素が発生しない
アンモニアは、燃焼時に二酸化炭素を排出しないという特性があることから、次世代エネルギーの中心的な役割を果たす可能性が高まっています。
という目標に向け、日本は電力の10%を水素とアンモニアから賄う計画を進行中です。さらに、燃焼時に二酸化炭素を排出しない特性から、石炭や天然ガスといった従来の発電燃料との置き換えが進められており、アンモニアの使用による大幅な二酸化炭素の排出量削減が期待されています。特にアンモニアの中でも、再生可能エネルギーを利用して製造される「グリーンアンモニア」が注目を浴びています。
基本的な運搬方法が確立されている
肥料等に使うためのアンモニアは、工業原料として大量に作られ、実際に使われてきました。アンモニアを燃料として利用する場合においても、従来利用されてきた設備を活用できます。特に運搬には既存のケミカルタンカーが使えることから、特殊な容器開発などに追加コストがかからないという利点もあります。
アンモニアは水素の製造にも活用できる
次世代エネルギーの選択肢として、他に有力な候補があがってるのが水素です。 アンモニアは、水素を効率的に保管し、輸送する手段として利用されています。水素は高いエネルギー密度を持っているものの、気体としての体積が大きく、液化や圧縮にはエネルギーがかかります。一方で、アンモニアは液体として安定しており、液化や圧縮が比較的容易であるため、水素を効果的に運搬・保存する有効な手段として検討されています。
アンモニアは既存のインフラストラクチャーを利用して、国際的な水素供給チェーンを構築することに適しています。既存のアンモニアの生産・輸送・取り扱いのノウハウを活用することで、水素の国際的な取引や供給がさらに拡大する可能性があります。
アンモニアの発電の基本的なしくみ
プロセス①|アンモニア供給
アンモニア供給は、まずアンモニアを生成する段階から始まります。アンモニアは窒素と水素の反応によって製造され、生成されたアンモニアは供給装置を介して燃焼器に供給されます。
プロセス②|燃焼器内での燃焼
燃焼器にアンモニアが供給された後、「スワールバーナー」と呼ばれる特殊なバーナー技術を使用して、アンモニアと空気を精密に混合させます。アンモニアは他の燃料よりも燃えにくい性質があるため、スワールバーナーを使用して空気を旋回させてガスの流れに渦をつくり、持続的に空気と触れさせることで効果的に混合させます。
アンモニアと空気の混合が完了すると、燃焼器内で着火と燃焼が行われます。この燃焼プロセスによって高温・高圧のガスが生成され、次のステージであるガスタービンの駆動へと進みます。
プロセス③|ガスタービンの駆動
ガスがガスタービンに導かれ、タービンを高速で回転させます。この回転運動によって発電機が駆動し、機械エネルギーが電気エネルギーに効率的に変換され、電力が発生します。
アンモニア発電の現状と今後の展望
アンモニア発電は現在、火力発電との混焼形態が主流です。火力発電プロセスの中で、アンモニアは通常の燃料と混ざり、その混合物が発電用のタービンを回して電力を生成します。アンモニアの直接燃焼は、技術的な課題や効率の向上が求められており、まだ単独でのエネルギー源として一般的ではありません。
世界でのアンモニアの利用範囲
アンモニアは、農業用の肥料として広く知られており、世界の約80%がアンモニアを肥料として利用しています。増加が続く農産物の需要に対応するために、アンモニアは不可欠です。
また、その多岐にわたる活用方法から、アンモニアは多くの産業においても重要な位置を占めています。工業分野では、メラミン樹脂や合成繊維の原料として使われていますが、それだけでなく、冷媒や洗浄剤、製薬業界での原料としても利用されています。 さらに、最近ではエネルギー分野においても注目を集めており、脱炭素社会の実現に向けた可能性が探られています
アンモニア発電の普及に向けた企業の取り組み
アンモニア発電の普及に向けては、さまざまな研究開発の取り組みが進められています。
発電会社JERAと総合重工業メーカーIHI
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて、アンモニアの混焼技術の確立に向けて実証事業を進めています。 両社は取り組みは順調であるとし、2022年5月には大規模混焼開始時期を計画より前倒しにする方針を発表しました。
参照:JERA プレスリリース「碧南火力発電所のアンモニア混焼実証事業における大規模混焼開始時期の前倒しについて」
IHI
2022年6月には世界で初めてアンモニア専焼によるCO2フリーの発電も実現させており、今後さらに運用性の向上や耐久性の評価などを進めていく方針です。
参照:IHI ニュース「世界初,液体アンモニア100%燃焼によるガスタービンで,CO₂フリー発電を達成~燃焼時に発生する温室効果ガスを99%以上削減~」
将来の展望と課題
アンモニア発電の展望
アンモニア発電は、これからのエネルギー分野で重要な役割を果たすと期待されています。将来的には、火力発電との混焼形態ではなく、アンモニア単独で直接燃焼を実現する技術開発も進むでしょう。
未来のエネルギー源としてのアンモニアの可能性
アンモニアはその多岐にわたる利用可能性から、将来のエネルギー源として幅広く展開される可能性があります。発電だけでなく、輸送機関のエネルギーキャリアや工業プロセスにおける熱利用など、多岐にわたる分野での利用が検討されています。アンモニアは従来のエネルギー源に代わる、新たな未来のエネルギーの礎となるかもしれません。
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