2023年12月25日
グリーン水素とは?今、注目されている理由や取り組み、今後の課題まで徹底解説!
持続可能なエネルギー社会の実現に向けて、発電の種類や方法は日々進化しています。今、大注目の新エネルギー戦略のひとつグリーン水素はご存じでしょうか?この記事では、二酸化炭素を排出しない優れたエネルギーとして注目されている、グリーン水素の重要性や、今後の課題点などについて徹底解説いたします!
目次
グリーン水素とは?
水素そのものは無色透明ですが、製造過程の違いにより色(グリーン、ブルー、グレー)で表現されることがあります。この記事でご紹介する、グリーン水素は再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解し生成される水素です。製造過程で二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出されないため、環境に悪影響を与えず生産できます。
グリーン水素が注目されている理由
日頃から私たちがエネルギーとして利用している、天然ガス、石油、石炭には限界年数があることをご存知でしょうか。2010年時点で、採掘可能量は石油で46年、石炭で118年、ウランで106年、天然ガスで59年と言われています。
製造方法いかんではCO2の排出量を抑制できるだけでなく、水力、風力、太陽光といった再生可能エネルギーを原料に製造できるため、枯渇の心配がありません。そのため、各国がこぞって水素エネルギーの活用を国家戦略に取り入れていけるため次世代エネルギーとして注目されています。
グリーン水素の役割や活用方法について
電気エネルギーをつくる際の水素の役割
水素は燃焼させると酸素と結びつき水になりますが、その際の化学反応によって、電気エネルギーが生じます。水素は燃焼時に二酸化炭素が排出されないことから、クリーンなエネルギーとして注目され、世界的に研究が進められています。
グリーン水素による化石燃料からの転換
グリーン水素は、再生可能エネルギー源(太陽光や風力)を用いて水を電気分解し、生成された水素です。グリーン水素は製造される過程で再エネを利用するため、環境への負荷が少なく、化石燃料からの脱却を促進します。
グリーン水素の活用方法
グリーン水素の活用方法は多岐にわたり、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて重要な役割を果たしています。主に以下の分野で利用されています。
輸送手段への活用
車両や航空機において、クリーンなエネルギー源として利用され、環境への負荷を軽減します。
- 鉄道による水素輸送で輸送時のCO2排出量を8割以上削減
- 株式会社大林組は、グリーン水素の輸送手段として鉄道を利用し、従来のトラックによる輸送に比べ、輸送時のCO2排出量を82%削減。1回の輸送(大分県九重町―神戸市の現場の片道)におけるCO2排出量が0.347tから0.062tに8割以上の削減を達成しました。 引用:株式会社大林組
産業用エネルギー源
産業プロセスや製造業において、エネルギー源として導入され、化石燃料の使用を抑制し、環境への配慮を促進します。
電力貯蔵
太陽光や風力の発電不安定性への対策として、余剰電力を使用してグリーン水素を製造し、必要な時に電力として利用します。
建築分野への応用
燃料電池を用いた電力供給や暖房にも活用され、建築分野において持続可能なエネルギーソリューションを提供しています。
太陽光発電で水素を製造する仕組み
どのような仕組みで太陽光発電から水素を製造していくのでしょうか。太陽光発電と水素の関係性について解説します。
太陽光発電システムと水素製造装置の連携
まず、太陽光発電システムが太陽光を受けて発電し、得られた電力は「水素製造装置」に供給されます。水素製造装置では、さきほどの電力を利用して水を電気分解し、クリーンな水素を生成します。この方法によって、再生可能エネルギーである太陽光が効果的に水素へと変換され、持続可能なエネルギー源としての役割を果たします。
エネルギーマネジメントシステムの効果
エネルギーマネジメントシステムは、太陽光からの電力供給と水素製造を一元管理し、スムーズな運用を実現します。発電量や消費量、水素の蓄積状況などをリアルタイムで監視し、これらの情報に基づいて供給と製造を調整します。 エネルギーマネジメントシステムの導入により、太陽光で得られる電力を最適な形で水素に変換できることから、エネルギーの有効活用が進んでいます。
太陽光発電によるグリーン水素製造の効率性
水素製造で使用する集光型太陽電池とは?
集光型太陽電池は、太陽からの光をより集中的に受け取り、効率的に電気エネルギーに変換する太陽光発電の一形態です。通常の太陽電池は広範囲にわたる光を受け取りますが、集光型太陽電池はレンズやミラーなどの光学デバイスを使用して太陽光を焦点に集め、高い光エネルギーを発電素子に集中させます。この方式により、同じ面積あたりの光エネルギーを通常の太陽電池よりも多く集めることができ、その結果、より高い発電効率を実現します。
宮崎大学の研究成果と効率向上
宮崎大学を中心とした最新の研究では、集光型太陽電池を使用して屋外に設置した太陽光発電システムで、エネルギー変換効率24.4%を達成しています。これにより、従来の製造方法よりも優れた性能を発揮し、太陽光発電による水素製造の効率が大幅に向上しました。宮崎大学の研究は、クリーンエネルギーの未来における画期的な一歩として注目を浴びています。
参照:宮崎大学「超高効率太陽電池の開発と太陽電池由来の電力を用いた水電解による水素生成」
太陽光発電の優位性と将来性
太陽光発電は安定して利用できる再生可能エネルギーであり、その将来性が着実に広がっています。集光型太陽電池は、コンパクトで高効率なエネルギー収集が可能であるため、設置スペースを大幅に縮小できます。将来的なエネルギーインフラの構築において太陽光発電が中心的な位置を占め、持続可能なエネルギーの主役としての役割が確立されつつあります。
グリーン水素と取り組み
グリーン水素の製造や活用に関して、日本での取り組みと、具体的な取り組みが行われている代表例を3つ紹介します。
日本での取り組み
日本では、2017年に水素基本戦略が策定されました。これはCO2排出量の削減を目指し、水素社会を実現するための取り組みを示した国家戦略です。 2050年カーボンニュートラル達成に向け、2020年にはグリーン成長戦略も策定されました。こちらは、脱炭素に向けてイノベーションを起こす企業を支援する産業政策です。
2050年の達成に向けた企業の取り組みや、課題はこちらで解説しています。
世界でも、カーボンニュートラルの実現に向けて水素の需要量が増えるとの国際機関の予測もあり、2050年には2022年の約5倍になると推測されています。
成長が期待される14の重要分野を定めて分野ごとの実行計画を策定しており、水素は水素・燃料アンモニア分野として重要分野に該当します。水素に関する実行計画として挙げられているのは、上述した数値目標の他、世界市場の獲得を見据えた国際競争力の強化、輸送・貯蔵技術の早期商用化などです。
なお、2021年以降も、水素関連分野への政府支援(予算)を含む施策が発表されています。GX推進法やGX脱炭素電源法の成立、GX推進戦略の策定などが代表例です。また、2024年5月には水素社会推進法が成立し、日本でも本格的な水素導入に向けた法・制度の仕組みが整備されました。
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水素社会推進法とは
水素社会推進法案とは、化石燃料由来のものも含めて水素やアンモニア等を「低炭素水素等」と定義し、その活用促進を掲げるものです。 低炭素水素等を国内で製造・輸入して供給する事業者や利用する事業者が計画を作成し、認定を受ければ、化石燃料よりも高額となる費用について国が支援、また拠点整備に関わる支援も行うことを定めています。
山梨県
山梨県では、「やまなし・ハイドロジェン・エネルギー・ソサエティ(H2-YES)」を展開しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から採択を受けた、カーボンニュートラル実現に向けて山梨県と民間企業が共同で取り組むプロジェクトです。具体的な取り組みとして、2022年に「電力の需給バランス調整に関する実証実験」の開始を発表し、2024年には国内最大の運転出力を持つ実証施設「やまなしモデルP2Gシステム」の建設開始も発表しました。やまなし・ハイドロジェン・エネルギー・ソサエティ(H2-YES)では、今後のグリーン水素の利活用の推進、サプライチェーン構築が期待されます。
トヨタ
トヨタ自動車株式会社の北米事業体(Toyota Motor North America, Inc.)の取り組みとして、グリーン水素の製造施設「Tri-Gen」を竣工した事例があります。当施設の運営を担うのは、燃料電池の発電事業を手掛けるFuelCell Energy社です。 カリフォルニア州の物流拠点で建設されたTri-Genには、燃料電池の発電所・水素ステーションが併設されており、オンサイトでグリーン水素の生成を行います。Tri-Genでは燃料電池を用いて、廃棄物系バイオマスから水素・電気・水の3つの資源の生成が可能です。Toyota Motor North America,Inc.はFuelCell Energy社より、この資源を20年間購入する契約を結びました。Tri-Genの稼働により、CO2排出量の削減(9,000トン以上/年)、ディーゼル燃料の消費量削減、余剰電力の供給により地域の電力安定に繋がることなどが期待されます。
東芝エネルギーシステムズ株式会社
東芝エネルギーシステムズ株式会社は、2023年よりベカルト社との協業契約の検討を進めてきました。2024年には、PEM電解装置の製造技術などに関するグローバルパートナーシップを締結しています。 PEM電解装置とは、電気で水を分解する装置です。再生可能エネルギー由来の電気を用いた場合、水を酸素・水素へ分解する際に温室効果ガスが排出されません。装置の触媒には高価なイリジウムが使われますが、両社の協力によりイリジウム使用量が削減できれば、グリーン水素製造の拡大・普及に繋がります。
グリーン水素、今後の課題
集光型太陽電池の価格とコスト面の問題
集光型太陽電池は高いエネルギー変換効率を誇りますが、その価格は一般的な太陽電池に比べてかなり高いとされています。普及への大きなハードルとなっていることから、水素製造のコスト削減が課題となっています。
海外での水素コスト低減目標と競争の激化
2021年、米国エネルギー省は、グリーン水素のコストを10年以内に8割削減する目標を掲げたことで、開発競争が激化しています。グリーン水素のさらなる普及に向けて、太陽光発電システム、水素製造装置から貯蔵・運搬まで、あらゆる費用の削減が必要です。海外での技術革新と競争が、水素製造コストの課題に対する解決を促進しています。
まとめ
発電の過程で二酸化炭素が発生しないグリーン水素は、化石燃料脱却への一歩です。グリーン水素製造をはじめ、再生可能エネルギーはコスト面が普及を広げる課題となっていますが、これからの技術革新により気軽に導入できるようになることを期待しながら、個人でも環境に貢献できることを考えていきましょう!
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