2023年12月15日
VPP(バーチャルパワープラント)って何?わかりやすく解説
VPPとは何かご存知でしょうか。従来の大規模発電所の課題を克服し、災害時の停電リスクも軽減する、新しい概念であるVPPについて、基本から導入事例までご紹介します!
目次
VPP(バーチャルパワープラント)の基本概念
電力の需要と供給の新しいアプローチ
VPPは、太陽光発電や風力発電、蓄電池、電気自動車など小規模で分散した再生可能エネルギーリソースを統合・制御し、ひとつの仮想的な発電所として、需要と供給の調整を行う新しい概念です。ICT技術を駆使し、大規模な発電所だけでなく小規模なリソースも効率的に利用できることから、地域内での電力バランスを効果的に調整し、電力システムの柔軟性が向上します。
なぜVPPが注目されるのか?
VPPが注目される背景には、従来の大規模な発電所に依存する発電方法における課題があります。東日本大震災をきっかけに、災害時におけるエネルギー供給の脆弱性が露呈したことを受けて、VPPは柔軟かつ効率的な電力管理手法として浮上しました。小規模なエネルギーリソースの有効活用と電力供給の安定化を助ける新たなアプローチとして期待されています。
大規模・集中電源の問題点とは
集中電源の課題
集中電源の問題点として、再生可能エネルギー以外の資源依存度の高さが挙げられます。一部の発電資源に過度に依存することで、資源の調達や価格変動に対する脆弱性が生じます。また、従来の発電方法は環境に対する悪影響があり、地球温暖化や生態系への悪影響が懸念されています。
再生可能エネルギーの普及と影響
大規模な発電所への依存が問題視され、再生可能エネルギーの普及が進む中、気象条件による発電量の変動が大きな課題となりました。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは気象に左右され、需給バランスの調整が困難です。このことから、分散型エネルギーリソースを統合することで需給調整を行い、再生可能エネルギーの変動に柔軟に対応する仕組みが求められています。
VPPがどのように機能するか
分散型エネルギーリソース(DER)の種類と役割
分散型エネルギーリソース(DER)は、地域内に分散配置された小規模なエネルギーリソースの総称です。太陽光発電、風力発電、蓄電池、電気自動車などがこれに該当し、それぞれがエネルギーを「つくり」「ためる」「使う」役割を果たします。これらDERは、集約・制御することで、大規模で効率的な発電所と同等の機能を発揮でき、持続可能なエネルギーシステムの構築に貢献します。
VPPの仕組み
VPPは、異なるエネルギーリソースをまとめて効果的に調整し、システム全体を協調させる役割を果たす「アグリゲーションコーディネーター」や、具体的なエネルギーリソースをまとめ上げ、一元的に管理する「リソースアグリゲーター」を中心に構成されます。
アグリゲーションコーディネーターとリソースアグリゲーターが、分散したエネルギーリソースを統合・制御し、電力の需給バランスを調整します。例えば、太陽光発電が余剰な電力を発生させた場合、VPPは余剰電力を蓄電池や電気自動車への充電にまわし、逆に自家用発電機を停止させるなど、効果的に電力を活用することができます。逆に、需要が増える際にはこれらのリソースを制御して電力を安定的に供給します。
デマンドレスポンスとは
デマンドレスポンス(DR)は、VPPの実現手段で、需要家のエネルギーリソースを制御して電力需要のパターンを変化させる方法です。デマンドレスポンスは、使用量が多いときに節電を呼びかけたり、余った電力を効果的に利用するなど、細かい調整を行いながら、VPPが地域全体で無駄なく電力を分配し、効率的に活動できるようにサポートします。
VPPを推進するメリット
低コストで運用できる
VPPは、大規模な発電施設に比べて低コストで運用できることが大きなメリットです。一つの企業が大規模な発電所から電力を供給する場合、その発電所を運営するためには膨大な費用がかかります。これに対して、VPPでは各発電システムが小規模かつ分散しているため、それぞれの運営コストが低く抑えられます。さらに、電力を集約して供給する仕組みにより、余剰分を集めて不足している地域に供給するなど、低コストで効果的な運用が可能です。
災害時の停電リスク軽減
VPPのもう一つの利点は、災害時の停電リスクが軽減されることです。大規模発電施設が一手に電力供給する場合、被害を受けると大規模な停電が発生するリスクがありますが、VPPでは多数の小規模な発電設備が分散しているため、被害が小規模に留まり、復旧が早く、災害時でも電力供給が安定しやすいというメリットがあります。
VPP・DR普及に関する政府の施策や導入事例
次世代技術構築実証事業費補助金
政府は蓄電池等の分散型エネルギーリソース(DER)を活用した次世代技術構築実証事業に補助金を提供しています。DERは電力需給ひっ迫対応や需給調整市場において役立っており、再エネの導入拡大と電力供給の安定に寄与すると期待されています。補助金はDERを活用した新しいビジネスモデルの構築を促進し、アグリゲーション技術、制御技術、電動車などの電力需要シフトに関する技術の実証と開発を支援することを目的としています。
参照:資源エネルギー庁「蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/measure.html
VPPの導入事例
VPPの導入事例として、横浜市では2010年に始まった「YSCP(Yokohama Smart City Project)」が挙げられます。このプロジェクトでは、エネルギー関連企業や電気メーカー、建設業者など34社が横浜市と連携し、HEMS4,000件以上、太陽光パネル37MW、電気自動車2,300台の導入を実現しました。防災性、環境性、経済性に優れたエネルギー循環都市づくり*を進めています。
*エネルギー循環都市:市域から生み出すエネルギーを増やし、そのエネルギーを無駄なく効率的に利用するまち
参照:横浜市「横浜スマートビジネス協議会(YSBA)」https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/ondanka/etc/yscp/yscp05.html
まとめ
VPPについてご紹介いたしました。聞きなれない用語がたくさん出てきますが、一つのエネルギーに頼らず、需要と供給に合わせて電力を調整する画期的なVPPは、将来的により浸透すれば省エネだけでなく、非常事態が起きた際の電力安定化にも繋がります。今後の動向を要チェックです。
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