2024年08月20日
バイオマス発電の将来性を徹底解説:発電の仕組みから海外事例までご紹介
バイオマス発電は、太陽光発電や水力発電などと同じ再生可能エネルギーとして注目を集めています。自然由来の有機資源を利用するバイオマス発電は、環境負荷の軽減や地域資源の有効活用に貢献します。この記事では、バイオマス発電の基本的な仕組みから現在の状況、海外での事例、そして未来の展望まで詳しく紹介します。
目次
バイオマスとは
バイオマスとは、植物や動物、微生物などが作り出す有機性の資源のことを指します。 資源には、木材、農業廃棄物、家畜の排泄物などが含まれ、再生可能なエネルギー源として注目されています。
バイオマス発電の基本的な仕組み
バイオマス発電は、バイオマス資源を燃焼させて発電する方法です。バイオマスを燃やした時に発生する熱エネルギーを利用し、その熱で水を蒸気に変えます。 この蒸気でタービンを回し、タービンが発電機を動かすことで電力を生み出します。 また、バイオマスを燃やす以外にも、バイオマスをガスに変えたり、微生物を使って化学反応を起こして電力をつくる方法も存在します。
バイオマス発電の歴史と背景
バイオマス発電は、昔から地域で自給自足のエネルギーを作るために使われてきましたが、最近では環境負荷を軽減するための手段として再び注目されています。 特に日本では東日本大震災の後、再生可能エネルギーの重要性が高まりバイオマス発電の普及が進んでいます。
バイオマスによる発電方法の種類
直接燃焼方式
直接燃焼方式は、バイオマス資源をそのまま燃やして発電する最も一般的な方法です。木材チップやペレットなどのバイオマスを燃やし、発生する熱で蒸気を生成してタービンを回します。この方式は技術が確立しており、既存の石炭火力発電所を転用することも可能です。
熱分解ガス化方式
熱分解ガス化方式は、バイオマス資源を高温で加熱しながら酸素を少量だけ供給し、ガスに変える方法です。このプロセスで生成された「合成ガス」(主に一酸化炭素や水素などのガス)を燃焼させて発電します。 この方法は、バイオマスのエネルギーをより効率的に変換できるため、発電効率が高いとされています。
生物化学的ガス化方式
生物化学的ガス化方式は、微生物を使ってバイオマスを分解し、メタンガスなどの燃料ガスを作る方法です。 微生物がバイオマス(例えば、食品廃棄物や畜産業の廃棄物)を分解してガスを生成し、そのガスを燃やして電気を作ります。この方式の特徴は、有機廃棄物を効率よく利用できる点です。
バイオマス発電のメリット
カーボンニュートラルの実現
バイオマス発電のメリットの一つは「カーボンニュートラル」の実現です。バイオマスは、成長する過程で大気中の二酸化炭素を吸収します。燃やしても、その二酸化炭素はすでに吸収されたものなので、排出される二酸化炭素が実質的には新たに増加するわけではありません。 つまり、バイオマス発電は、燃焼による二酸化炭素排出を相殺し、地球温暖化を抑制する助けになります。温室効果ガスの削減に貢献できるため、地球温暖化対策として有効な手段とされています。
廃棄物の有効利用
バイオマス発電のもう一つのメリットは「廃棄物の有効利用」です。農業廃棄物や木材廃棄物などの有機廃棄物をエネルギー源として利用できます。
廃棄物を処理する手間やコストが減るだけでなく、廃棄物を再利用してエネルギーを作ることができるため、資源の有効活用が実現します。 結果的に、廃棄物処理の問題が軽減され、エネルギー資源としても活用できるのです。
地域産業の活性化
バイオマス発電は、地域産業の活性化にも貢献します。バイオマス資源は多くの場合、地域で生産されるため、発電所を設置することで地元の資源を有効活用できます。 地元での雇用が生まれたり、地域の産業が発展したりする効果が期待されており、地域社会全体の発展につながります。
バイオマス発電のデメリット
発電効率の低さ
バイオマス発電のデメリットの一つは「発電効率の低さ」です。バイオマス発電の発電効率は20〜25%と言われており、風力発電(約30%)や水力発電(80%)と比較して、発電効率は低いとされています。 一方、太陽光発電は約20%とバイオマス発電と同程度の発電効率ではあるものの、光エネルギーのみで発電できることから発電材料を調達する必要がなく、総合的な効率では軍配が上がります。 また、バイオマス発電は特に直接燃焼方式において、バイオマスを燃やして発電する際のエネルギー変換効率があまり高くないため、大規模な発電には不向きです。つまり、同じ量のエネルギーを生み出すために、多くのバイオマス資源が必要になる場合があります。
コストの問題
バイオマス発電は、燃料として使うバイオマス資源の収集や加工、運搬には多くのコストがかかり、発電にかかる全体のコストが高くなりがちです。その結果、他のエネルギー源と比べて発電コストが高くなり、経済的な競争力が低くなることがあります。
燃料の安定供給
バイオマス発電の課題の一つは「燃料の安定供給」です。バイオマス燃料はその品質や供給量が一定でないことがあり、これが問題となることがあります。例えば、燃料にばらつきがあると、燃焼炉内の温度が安定せず、結果的に発電効率が低下することがあります。 また、日本ではバイオマス燃料の多くを輸入に頼っているため、供給の安定性がさらに問題となります。輸入に依存することで、供給の変動や価格の変動が発電計画に影響を及ぼす可能性があります。
日本におけるバイオマス発電の現状
日本の再生可能エネルギー導入量と目標
日本の再生可能エネルギー導入量は年々増加しています。2021年度には、再生可能エネルギーの発電量が全体の約20.3%を占め、特に太陽光発電が大きな割合を占めています。 2030年の目標として、日本政府は再生可能エネルギーの比率を36〜38%に引き上げることを掲げています。
政府の取り組み
日本政府は再生可能エネルギーの普及を推進するために、バイオマス発電を含む様々な再生可能エネルギーの導入をサポートしています。その一環として、固定価格買取制度(FIT)が導入されています。この制度では、再生可能エネルギーで発電した電力が一定の価格で一定期間買い取られるため、バイオマス発電の事業者にとって安定した収益が見込めるようになり、導入が促進されています。
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普及に向けた課題
先ほど述べたとおり、バイオマス発電の普及には、資源の安定供給が大きな問題となります。バイオマス燃料の供給は地域によってばらつきがあり、その安定確保が難しいため、広範囲からの収集や物流の整備が必要です。 また、発電コストの低減も重要な課題です。バイオマス燃料の収集や加工、運搬にはコストがかかるため、経済的に競争力のある発電を実現するためのコスト削減が求められています。 さらに、発電効率の向上も重要です。バイオマス発電は他の再生可能エネルギーと比べて効率が低いことがあり、これを改善するための技術開発が必要です。 そして、地域ごとの資源分布や発電需要に応じて適切な技術を選定することも重要です。地域ごとに異なる資源やニーズに合わせた技術の選択と導入が、効果的なバイオマス発電の実現に繋がります。
具体的なバイオマス発電プロジェクトの紹介
大分県の九州バイオマス発電所
大分県に位置する九州バイオマス発電所は、年間6万世帯分の電力を発電できる国内最大級のバイオマス発電所の一つで、木質ペレットを燃料として発電しています。 この発電所は、パーム椰子殻や国産木質チップを使用しており、地域の雇用創出や林業の振興にも寄与しています。
参照:https://oita-bio.com//articles/10001803
北海道の苫小牧バイオマス発電所
北海道苫小牧市にある苫小牧バイオマス発電所は、国内で初めて大規模なバイオマス専焼発電所として稼働しました。この出力規模50,000kWの発電所は、輸入木材チップを主に使用しており、輸入燃料を活用した事例として注目されています。また、発電所の排熱を地域の温水供給システムに利用することで、エネルギーの有効利用を図っています。
参照:https://www.hepco.co.jp/energy/recyclable_energy/biomass_power/tomatoh_biomass.html
鹿児島県の南九州バイオマス発電プロジェクト
鹿児島県の南九州バイオマス発電プロジェクトは、地域の廃棄物や農業残渣を利用して発電を行う取り組みです。このプロジェクトでは、地域の廃遺物や農業残渣を活用し、地域循環型の発電所として地域内でエネルギー自給を目指しています。
参照:https://www.shizenenergy.net/2021/06/28/biomass_satsuma_completion/
バイオマス発電の将来性
技術革新の可能性
今後のバイオマス発電の発展には、大きな役割を果たすと考えられています。たとえば、ガス化技術の進歩により、バイオマス資源から効率的にガスを生成し、より高い発電効率を実現する可能性があります。また、燃焼プロセスの改良により、エネルギー変換の効率を向上させることが期待されています。 さらに、現在は利用されていないバイオマス資源の有効活用に向けた技術開発も進められています。これにより、廃棄物や副産物として見過ごされていた資源を効果的にエネルギーに変換し、資源の有効活用が進むでしょう。これらの技術革新により、バイオマス発電はより効率的で経済的なエネルギー源としての地位を確立し、持続可能なエネルギー供給に貢献することが期待されます。
バイオマス発電の国際的な動向
世界各国では、再生可能エネルギーの一環としてバイオマス発電が注目されており、特にヨーロッパやアジアで導入が進んでいます。
デンマーク
デンマークのエネルギー政策は、2030年までにCO2排出量を1990年比で70%削減し、2050年までにゼロエミッションを達成することを目指しています。 バイオマス発電の先進国の一つであり、麦ワラや農業廃棄物のほか、特に木質ペレットを利用した発電が盛んです。デンマークのエネルギー政策では、再生可能エネルギーの割合を高めるために、バイオマス発電が重要な役割を果たしています。
参照:https://energy-shift.com/news/780342b4-e30a-42c6-b570-acb69f3bcff9
ドイツ
ドイツでは、バイオマス発電が再生可能エネルギーの一環として広く利用されており、約9,500のバイオガスプラントが稼働し、総発電容量は5,000MW以上にのぼります。 トウモロコシの茎や葉、家畜の糞尿などの農業廃棄物や、林業廃棄物を利用したバイオマス発電所が多く、地域のエネルギー自給率向上に貢献しています。
参照:https://www.3leaves.co.jp/bio/germany.html
中国
中国は、急速な経済成長とエネルギー需要の増加に伴い、バイオマス発電の導入を積極的に進めています。 農業廃棄物(例えば、稲わら、トウモロコシの芯など)が豊富に存在するため、これらを活用して農村地域の家庭にクリーンなエネルギーが供給され、石炭の使用量が削減されています。 また、家畜・家禽の糞尿を資源として利用する「メタン発酵プール」を使う家庭もあります
参照:https://spc.jst.go.jp/hottopics/1612/r1612_gao02.html
インド
インドでも、バイオマス発電が再生可能エネルギーの一環として注目されています。カルナータカ州で行われている実証実験では、家畜のふん尿を利用してバイオガスを生成し、小型発電機で電力を供給しています。また、生成されたバイオガスは調理用ガスとしても利用され、残りは肥料として再利用されています。 このように、国際的なエネルギー政策の影響も受け、日本国内でもバイオマス発電の導入がさらに進展することが予想されます。
参照:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/6fe004fdb7a9cddc.html
まとめ
バイオマス発電は、植物や動物から得られる有機資源を利用して電気を生成する方法です。日本では、政府のサポートを受けて地域資源を活用した発電所が増加しています。この取り組みにより、地域経済の活性化やエネルギー自給の進展が期待されていますが、発電効率の低さやコストの高さ、燃料の安定供給といった課題も残っています。環境にやさしいエネルギー社会を実現するための重要なステップとして、今後も普及していくでしょう。
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